第Ⅸ十Ⅰ話:3度あるというコトは・・・?
「何がどうなると、ああなるんだ?」
全く意味が解らない征樹は、貸切風呂に・・・。
「どう考えても、一緒には入らないよね。」
行くわけもなかった。
例の必殺(?)脱兎的逃走を行使。
そのお陰で中途半端に空いた時間をどう消費しようかと考えていた。
(大体、なんで急に・・・。)
「あ。」
一つ思い当たる事が・・・。
「・・・もしかして、奏先輩・・・話した?」
普段はあれだけ鈍感なのに、こういう時に限って察しがいい。
「だからってこうなる意味が解らないな・・・奏先輩とセットで、皆で問い詰めるつもりだったのか?」
結局、鈍感だった。
見当がついた(?)ところで征樹は弱っていた。
当然、奏の事に関してだ。
「なるようにしか・・・ならない・・・か。」
第一、向こうが自分を知っていたとしても、こちらが相手をよく知らないのだから、正直答えの出しようもない。
そう考えると・・・。
「不公平だ。」
という結論に一人、その手にした帽子を見ながら呟く。
何故だか、部屋に戻っても手放す気にはなれず、そのまま持って部屋を出て来た。
しかし、旅に出て思わぬ出会いや出来事があったものだと、手の中の物を一撫でしながら眺める。
「そうだ。瀬戸さん達にお土産を選ぶか。」
無駄に多過ぎるお小遣いを頂いた手前、何も買って帰らないなどという礼儀知らずな事は征樹には出来ない。
例えお小遣いの大半は丁重にお断りして返却したとしてもだ。
ただ、一体、全体、彼女達に何を買って行けばいいのか、皆目見当がつかないのが困りモノだが。
「とりあえず、一通り見れば何か・・・。」
旅館の入口のお土産コーナーに目を移し、向かう征樹の視界にもう見慣れた感の人影。
キョロキョロと挙動不審なのは相変わらずだ。
「今度は・・・なに?」
もう声をかけるのに躊躇いは無かった。
「ァ・・・。」
余りにも目立つ髪色と高身長。
(待ち合わせは楽そうだ。)
何かと失礼な意見だ。
確かに、第一印象ではその姿が目に付くのだが。
「ェト・・・ニンギョウヤキ。」
ポロリと呟く少女。
相も変わらず器用な(?)カタコトだ。
「それなら・・・。」
視線を落とし、目の前にあるじゃないかと言おうとして、征樹ははたと止まる。
「・・・ちなみに人形焼きというのは、君の中でどういった物だったりする?」
流石に学習能力が発動した。
「人形ノ・・・焼キモノ。」
「焼き物って?」
「・・・トウキ。」
(惜しい・・・。)
字面の意味合いは間違ってはいないが、食品と器物というカテゴリーの段階でまず違う。
「人形焼きは、人形の金型で作る焼き菓子の事だ。」
簡潔な説明と共に人形焼きの箱を少女に手渡す。
人間、意外と慣れるものだな、と考えながら、彼女の周りにいる人間は一体、日頃何を彼女に教えているのだろうと、突っ込みを入れたくなる。
(ん?)
征樹は、そこでようやく気づいた・・・こうやって間の前の少女と話、考える事。
このような行動をするという事。
これも"縁"というモノではないだろうか?
「アノォ・・・。」
急に黙り込んでしまった征樹の表情を伺うように、少女が困ったような顔つきで征樹を見ていた。
「ん?」
「アリガトウ・・・。」
そう述べる少女に対して、何故だか笑みがこぼれた征樹が少女を手招きする。
自分の目線に合わせるように身体を軽く屈める動作に、その素直さに更なる笑み。
そして、そんな少女の頭に手に持ったモノを征樹は乗せる。
ちょこんと乗った白い麦わら帽子。
特に理由はない。
ただなんとなく・・・縁と縁が征樹を仲介して繋がっているような気分を感じたかった。
目に見えないモノだからこそ、征樹自身にとって目に見える形にしようとしたかっただけかも知れない。
端から見れば、くだらない事かも知れないが、征樹にとってはそういう確認作業こそが重要なのだ。
「コレ・・・?」
きょとんとして、頭に乗っかった物を手で確認する少女。
「似合ってる。うん、ソレ、あげるよ。」
自分の行いを一人で自画自賛して征樹は、また少女に笑いかけた。
ハーレム入浴?させねぇよ?
そんなのはR-18版でどうぞ(笑)
・・・実は征樹のスマイルも必殺技なんじゃないかと思う(ヲイ)




