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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第伍縁:加速しない想いは恋じゃない・・・・・・?
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第Ⅶ十Ⅰ話:なんにでも魔力と補正はつきもので。

「・・・ふぅ。」


 部屋に荷物を置き、征樹は室内風呂の脱衣所と兼用の洗面所で顔を洗って一息ついていた。


(何時もとそう変わらない・・・。)


 洗面所に映る自分の顔を見ながら言い聞かせる。

静流が一緒にいて生活するという事は、ここ数ヶ月の日々と変わらない。

ずっと同じ室内にいるとか、隣のベッドで寝るという事を除けばだ。


(本当・・・人間関係に免疫ないよな、僕。)


 この場合、人間関係に対する免疫ではなく、女性に免疫があるかなのだが、征樹がそんな事に気づくわけもない。

結局、もう一つ溜め息をついて洗面所を出る。

征樹にしてみれば、旅行をしているという事実がそれ以上に嬉しいのだ。


「ねぇ、征樹くんも着替えてみる?」


 洗面所を出るなり、待ってましたと静流が声をかけてくる。

きちんと冷静さを取り戻してはいるが、これだけでも何故か楽しい。

それは征樹だけでなく静流もだったが。


「そうで・・・すね。」


 "も"と言うからには、静流"も"着替えは済ませている。

着替えた静流は浴衣姿。


「この旅館、温泉もあるんですって。」


 るんるんと上機嫌で自分にも浴衣を手渡してくる静流の勢いに負けて、思わず受け取ってしまってから、ばっと視線を逸らす。


「?」


 首を傾げる静流に対して、みるみる間に顔が熱くなる征樹。

折角、顔を洗って冷やす事で、気持ちを切り替えたというのに・・・。

静流のボリュームある胸は、彼女が普段着ている服より薄い浴衣一枚で隠しきれず、こぼれた分は谷間ごと浴衣の合わせの間から覗いていた。


(マトモに見てしまった・・・。)


 久々というか、最近でもよくあるハプニングの一つなのだが、今回は旅行における浴衣補正つき。


「じゃ、とりあえず着替えます。」


 着替えて温泉にでも入れば、リフレッシュできるだろう。

決心して着替える為に、上に着ている服を勢いよく全部脱ぐ。


「ッ?!」


 今度は静流が思わず目線を逸らす。

着替えてはどうかと提案したが、いきなり目の前で征樹が上着を全部脱ぎ出したのだ。


(・・・前にも見たけど・・・征樹くん、細身の割には意外と・・・。)


 肌が白めな事を除けば・・・と、しかり見てるじゃねぇかと何処からか突っ込みが入りそうな事を思う。

どのみち泳ぐ事になれば、嫌でも征樹の上半身を見る事にはなるのだが、それとこれとは何かが違うと思ってしまうのだから、人間の認識とは不思議なものである。


「温泉か・・・健康ランド以外では初めてだ。」


 ぽつりと呟く。

彼の若さで健康ランド通いとは、いい趣味と言えるかは別として。


「征樹ちゃーん、いる?ここね、温泉があるんですって、一緒に行かない?あら?」


 突然乱入して来た琴音は、征樹の着替えた姿を見て微笑む。


「似合ってるわ、征樹ちゃん。」


 ちなみにきっちと来て帯を留めてから、静流に背を向けてズボンは脱いだ。


「どうも・・・。」


 琴音さんこそ。と、言葉を続けたかった征樹だったが、それは彼の視界一杯に飛び込んできた彼女の胸のと、真っ白い谷間によって完全に遮れられた。

というより、完全に吹き飛んでしまった。


「そ、そうね。征樹くん、一緒に入りましょう?」


 スタイル。

特に胸の大きさで負けるという、杏・奏相手には無かった久方振りの敗北感にうろたえながらも、静流は声を上げる。


「一緒って、別に混浴じゃないんだから。」


 冷静に突っ込んだが、もしそんな事になったら、征樹的には色々と無理だ。

どう耐えたとしても、耐えようとしても、上半身と下半身は連動せず別々に動いてしまうだろう。


「え、あ、まぁ、そうね。」


「もしかしたら、入れるかも知れないわよ?楽しみ♪」


 唖然と赤面する二人に琴音は、あっさりそう言い放ったのだった。

正直、胸が大きすぎると浴衣とか、どうしても不恰好になっちゃうんですよね・・・。


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