母親の年賀状
すみませんが、先に「母の年賀状(N5028LK)」をお読みください。
「じゃあ、お買い物に行ってきます」
「いってらっしゃーい」
母親と姉の掛け声をスマホを見ながらリビングで聞いていた。
いつもは自分の部屋でダラダラしているけど、今日は何となくリビングに降りていた。
この年になっても年末って少しソワソワする。
といっても来年大学受験だからその影響もあるかもしれない。
姉は既に大学生でのほほんと年末年始を過ごすみたいだ。なんかムカつく。
特に会話もないけど、居心地が悪い訳でもないのでそのままリビングで過ごしていると親父がダイニングテーブルに集合するように言ってきた。珍しいなと思いつつ面倒だなとも思った。
こういう面倒なことはのほほん大学生の姉に任せてやると思い、わざと親父の前ではなく斜め前に座り必然的に姉が親父の前に座る様に誘導する。策士な俺だ。
父親が小さく咳ばらいをすると一枚の年賀状をスッと机の上に差し出す
「年賀状は毎年父さんが担当しているのは知ってるよな。今年もそうなのだが母さんの年賀状の一枚をこのチャコちゃんがおやつで汚してしまったんだ。宛先をよく見ると会社名も記入している。もしかすると母さんの取引先かもしれん」
俺は親父の話をSNSを見ながら聞き流していた。声が少し落ち込んでいるのは分かった。
まぁ~話の内容的にそんなにたいした事はないなと思った。
すると、隣で姉が小さく「あっ」と声を出しているのが聞こえた。
姉が動揺してるってことは親父が予想していた通りに仕事関係なのか?
「親父、そんなに落ち込まなくても母さんにもう一度書いてもらえばいいじゃん。ちなみに俺は年賀状の予備とか持ってないからね。新年のあいさつはスマホで済ませてるし」
軽く親父を慰めながら、俺は何もできないと予防線を張った。俺はやっぱり策士だな。
でも、まあ少し気になったので親父が指でイジイジしている年賀状の宛名を確認してみると…。
SNSでもたまにバズっているえっと、なんか訳の分からんとにかく年上の女性が好きな今夜なんとかって言うアイドルだったような気がする。
マジかよ、母さん何考えてんだよ。アイドルに年賀状なんて今時出せるのか?
俺は姉を睨んでから
「…。これファンレターっていうの?今ちょっとバズってるアイドル宛てに書いてるやつだから。あんま気にしなくてもいいんじゃない?じゃあそろそろ俺勉強しに塾に行ってくるわ」
面倒な事はのほほん大学生に全振りをして俺は塾に逃げるように行った。最後まで策士だな。
最後までお読みいただきありがとうございました。




