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完全無欠の悪役令嬢はポンコツヒロインをほうっておけない  作者: Kei
第一章 完璧にサポートしてみせます

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氷の公爵令嬢

 部屋に戻り、私は鏡の前で立ち止まった。大きな鏡に映る自分の顔をじっと見つめる。


 長く美しい黒髪、整った顔立ち、鋭い眼差し──これは間違いなく、クラリス・エヴァレットの姿。

 一部のファンから”完全無欠の悪役令嬢”として崇拝されているだけあって、彼女のステータスは非常に高い。文武両道であることはもちろんのこと、冷静さと判断力がずば抜けており、どんな状況でも動じないその姿勢から、周囲からは「氷の公爵令嬢」と称されている。

 その名に違わず、彼女の表情は常に冷たく、感情の起伏を感じさせない。


 試しに、表情筋を動かそうといくつかの感情を試してみる。


 喜怒哀楽。


 ……だめだ、ほとんど変わらない。表情筋が死んでいる。まさに「氷の公爵令嬢」。ゲームの中のクラリス・エヴァレットそのものだ。


 どうやら本当に、私はこの公爵令嬢として転生してしまったようだ。


「私がクラリス……」


 その声は、信じられないと感じる自分自身に向けたものだった。


 思い出されるのは、ゲームの中で何度も見たストーリー。今日の出来事は、まさにヒロインとアレクシス、そして私との出会いのシーンだった。ここでヒロインに最悪の印象を与えることは、物語の序章としては正しい。


 リナは平民出身ながらも、この貴族の子女が通う学園に特待生として通っている。その理由は、彼女が貴族のみが使うことを許されている魔術の力を持っているからだ。貴族社会に疎いリナは学園で多くの困難に直面するが、攻略キャラたちとの絆を深めることで成長し、最終的にはラスボスを制し、世界を救うことになる。


 しかし、どのルートでも私は彼女に厳しく当たる悪役令嬢だ。それは、ゲームの役割として百歩譲って受け入れることができる。


 ただ、一番恐ろしいのは。


 ゲーム内でヒロインがどの攻略キャラとも結ばれなかった場合、ラスボスである「古代の神」を封じることができず、その結果、クラリスである私が死んでしまうルートだ。


「そんなルートに進ませるわけにはいかないわ」


 私は静かに心に誓った。リナと攻略キャラたちとの仲を取り持ち、必ず彼女が正しい道を歩むように導くのだ。


 「Destiny Key ~約束の絆~」の攻略キャラは四人。


 エルデンローゼ王国の王太子アレクシス。


 王立騎士団の騎士ライオネル。


 学園で魔術を教える教師ゼノ。


 そして、ヒロインの同級生ルーク。


 次の日から、私は彼女と攻略キャラたちの動向を観察し始めることにした。

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 『わたくしの推しは筆頭公爵令嬢──あなたを王妃の座にお連れします』
(クラリスとレティシアの“はじまり”を描いた物語です)

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 完全無欠の悪役令嬢はポンコツヒロインをほうっておけない
― 新着の感想 ―
表情筋が死んでる状態で進んでいくの大変そうですな…… ラスボスがどんな感じかきになりますね
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