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完全無欠の悪役令嬢はポンコツヒロインをほうっておけない  作者: Kei
第二章 定期テストを乗り切れ

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【リナ】特別な光 3

 それに初めて気づいたのは、ライオネル先生との個別指導のときだった。


 一ヶ月かけて、ようやくまともに素振りができるようになった私に、ライオネル先生は拍手を送ってくれた。

 週に二回の個別指導。クラリス様は可能な限り付き添ってくれるのだが、その日は生徒会の仕事でどうしても参加できず、私は一人でライオネル先生の指導を受けていた。


「短期間で随分上達されました。頑張りましたね、リナ殿」


 その言葉に、私は自然と頬が緩んだ。ライオネル先生は、平民の私にも変わらず丁寧に接してくれる。

 先生は平民出身だが、この学園の卒業生であり、騎士団に入団後、騎士爵を与えられた立派な方だ。この学園に特待生として入学した生徒は、卒業後にお城で働き、爵位を与えられることも少なくないらしいが……正直、私にはそんな未来は想像もつかない。


 とにかくライオネル先生は、誰にでも平等に接する素晴らしい先生だった。貴族でも平民でも、礼節を重んじつつ態度を変えることはない。正式にはこの学園の「特別講師」という立場だが、その誠実さから、生徒たちの間での尊敬は厚い。


 そんな先生に褒められて、私は心の底から嬉しかった。そしてその喜びを、誰よりもクラリス様に伝えたかった。


「ありがとうございます! ライオネル先生とクラリス様のおかげです!」


 そう伝えると、ライオネル先生は一瞬動きを止めた。ほんの僅かな間だったが、その表情には驚きが浮かんでいた。

 次の瞬間、彼は柔らかく微笑んだ。その笑顔はいつもの爽やかさとは違い、どこか遠くを見つめるようなものだった。


「……そうですね。クラリス殿は、本当に素晴らしい方です」


 その声色に、私は息を呑んだ。


 ライオネル先生の精悍な顔に浮かぶ微笑みは、優しさと同時に切なさを孕んでいた。その目には、どこか憧れにも似た光が宿り、静かに吐き出された言葉は、なぜか私をその場に縫い止めてしまう。


 ──これはまるで……


 頭の中に浮かんだ考えに、私は慌てて首を振った。


 そんなことがあるはずがない。クラリス様は、王太子殿下の婚約者だ。そんな彼女に、先生が……


 私はそれ以上考えるのをやめ、「ですよね!」と、ライオネル先生の言葉に笑顔で同意した。

 しかし、そのときの笑顔は、もしかしたら少し引きつっていたかもしれない。

もう一本投稿します。

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 完全無欠の悪役令嬢はポンコツヒロインをほうっておけない
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