イケメンがすぎる 2
これで剣術の問題も一応解決だ。あとはゼノとライオネルの個別指導で、リナに彼らの好感度をしっかり稼いでもらおう。
となると、次に動くべきは生徒会。アレクシスとルークだ。今日の様子を見る限り、リナとルークはすでに友達のような雰囲気だ。ほうっておいても問題なさそうだが、油断は禁物。好感度の調整を怠るわけにはいかない。
そして間近に控えているのが学園祭の準備。これには「グランドナイトガラ」という運命の舞踏会が含まれている。
これはゲーム中、最重要ともいえる中盤イベントだ。後半は、ここで踊った攻略キャラのルートに入ることになる。
実際の学園祭まではまだ半年あるが、このイベントの規模を考えると、準備はそろそろ始めなければならない。
リナが攻略キャラたちと良好な関係を築ければ、安心してグランドナイトガラを迎えられるはず。
──よし、油断せず準備を進めよう。
そう考えていた矢先、扉がノックされる音がした。
「姉さん、夕飯だよ」
ルークの声だ。どうやら考え事に夢中になりすぎて、時間を忘れていたらしい。
私は鏡に映る自分を見つめ、先程までだらしなく突っ伏していたのが嘘のような、完璧な公爵令嬢の姿を確認してから扉を開けた。
扉の向こうにはルークが立っていた。そういえば、なんで侍女ではなくルークが呼びに来てくれたんだろう?
不思議に思って、ルークを見つめる。その表情には、何かを言いたげな気配があった。
──何かあったのだろうか。リナに関係することだろうか。
ルークはライオネルの剣術の稽古後、リナと一緒に片付けをしていた。その様子を見て、色んな意味で邪魔をしてはいけないと思い、私は先に公爵邸に戻ることにした。
帰り際、ライオネルが「また明日」とはにかんだ笑顔を見せてくれた。本当にイケメンすぎて困る。
ともあれ、ルークとリナの間に何かあったのなら、色恋沙汰だとしたら大歓迎だ。だが、彼がそんな話をわざわざ私に持ち込むとは思えない。
となると、あまり良くないことがあったのではないかと、少し不安になる。
私たちは無言のまま食堂へと向かった。
「……姉さんは」
ルークがぽつりと口を開いた。
その声に足を止め、私は彼の横顔をじっと見つめる。何かを言いかけた彼は、私の視線を感じ取ったのか、一瞬だけ眉を寄せ、そして口を閉ざしてしまった。
「……なんでもない」
えぇ……何なの? 一体何があったの!? 思春期なの??
もどかしい気持ちを抑えきれず、私は足を止めた。だがルークはそのまま足早に食堂へと向かってしまった。
仕方なく、私はその後ろ姿を追うことにした。




