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完全無欠の悪役令嬢はポンコツヒロインをほうっておけない  作者: Kei
第八章 運命の時! グランドナイトガラ

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【リナ】約束

 足元がふわふわしている。まるで雲の上を歩いているみたい。


 私はルーセントホールへと続く道を歩いていた。

 けれど、目指しているのは会場じゃない。

 その先にある──声のする方角。


 私の中の“何か”は、その声を求めて歓喜していた。

 けれど、別の私が必死に引き留めようとしている。


 ……なのに、足は止まらない。


 ルーセントホールを通り過ぎ、裏手へと進んでいく。

 私はこの道を知らない。だから、この先に何があるのかもわからない。


 それでも、自分を止めることはできなかった。


 周りに人影はない。

 みんなガラに参加するため、ホールの中へ吸い込まれていったのだから当然だ。


 小道を抜けた瞬間、視界が開ける。

 そこには、大きな噴水があった。


 ──そして、その噴水の前。


 その人は、いた。


 知らない人だった。

 でも、どこかで見たことがあるような気がした。


 肩まで届く少し長めの髪は、夜の闇に溶けてしまいそうなくらい真っ黒だった。

 クラリス様と同じ色……でも、クラリス様の髪みたいに光を映す黒じゃない。これは、闇そのものに同化しているみたいで、似ているようで全然違う。


 それと対照的に、肌はびっくりするくらい白くて。

 こちらを見つめる冷たい銀色の瞳は、宝石のように美しいのに、底の見えない恐怖を映していた。

 顔立ちは整いすぎていて、男の子なのか女の子なのかも判断がつかないくらい。


 ぱっと見では、十歳くらいの子どもにしか見えない。

 ……でも。そこから伝わってくる気配は、子どものものじゃなかった。

 柔らかさなんて少しもなくて──むしろ底知れない威圧感に包まれているようで、思わず息をのんでしまう。


「待っていたよ」


 ──その言葉を、聞いた瞬間。


 頬を伝って熱いものが落ちていた。

 涙──それが、自分の意思とは無関係に零れていた。


 そう、ずっと待っていた。

 このときを。


 ──違う。

 行ってはだめだ。


 私の中で、相反する声が鳴り響く。


 待っていた。

 だから、早く、一緒に──


 ──違う、違う違う。

 行っちゃだめ。


 ──リナ──


 遠くで、クラリス様の声が聞こえる。

 そう──クラリス様……


 クラリス様と、約束したんだ。

 会場で会おうって。

 きっと、クラリス様は待っていてくれる。


 早く。早く、行かなきゃ──!


 ──リナ──


 再び響いたクラリス様の声が、私の背を押してくれる。

 私はぐっと拳に力を込めた。


 私でない“何か”に、抗うために。


運命に逆らおうと必死にもがくリナ。

果たして彼女はその力に抗えるのか──


次回ep.137はクラリス視点。

本日10月10日(金) 19:10更新!(10分後です!)


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 完全無欠の悪役令嬢はポンコツヒロインをほうっておけない
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