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完全無欠の悪役令嬢はポンコツヒロインをほうっておけない  作者: Kei
第八章 運命の時! グランドナイトガラ

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選択 1

 最終日。


 今日の夜──「古代の神」が、現れる。




 ……正直、このままでは「古代の神」が現れる前に、私は睡眠不足で倒れるのではないだろうか。


 まったく眠れなかったわけではないが、頭の中で思考がぐるぐる回り続け、休まった気がまるでしない。この三日間、私はほとんど気力だけで立っているようなものだ。


 朝、私の顔を見たエミリアは、昨日と同じく何も言わずに整えてくれた。おそらく、昨日以上にひどい顔をしていたのだろう。それでも、彼女の手にかかれば──完璧とまではいかないが、公爵令嬢としてなんとか人前に出られる顔に仕上がった。


 学園祭の最終日は午前で催し物が終わり、午後からは舞踏会の準備が始まる。会場設営に関わらない者は一度家に戻り、着替えてから再び学園へ。寮生のリナは、侍女たちが着替えを手伝ってくれるはずだ。


 グランドナイトガラの主役は三年生で、責任者は二年生が務めるのが通例。今年は生徒会役員ではないが、それに匹敵する働きをしているノアが任されている。

 彼はゲーム内でも攻略対象の一人だが、課金キャラのため私は攻略したことがない。ただ、可愛らしい顔立ちに頼れる先輩キャラというギャップに、一部の熱心なお姉さまたちから絶大な支持を受けている。課金さえなければ、私も迷わず攻略に走っていただろう。


 とにかく──今日は運命の日だ。

 なんとしてでも、リナと攻略対象たちの絆を結ばせなければならない。


 大きく息を吐き、勢いよく扉を開けた。


「わっ!」


 開けた瞬間、驚いた声が響く。

 そこにいたルークが、扉にぶつかるのを避けるように身をのけぞらせていた。


「姉さん、そんなに勢いよく扉を開けたら危ないよ!」

「ご、ごめんなさい──」


 また、一昨日のリナのときのように、ルークの顔に扉をぶつけてしまっていないかと焦り、思わず手を伸ばす。


 ──伸ばしかけた手とともに向けた視線が、ルークの唇を捉えた瞬間、私は動きを止めた。


 脳裏に蘇る、頬に触れたあの感触。


 空中で止まった私の手に、ルークが目を瞬かせる。

 次の瞬間、ふっと笑みを浮かべ、そのまま私の手を取った。


「ほら、準備が終わったなら行こう。今日も忙しいんだから」

「……そうね」


 内心で吹き荒れる動揺を押し隠すように、努めて平静な声を返す。


 ルークは、何事もなかったかのようにいつも通りだ。

 ……もしかすると、昨日の出来事は夢だったのかもしれない。


 そうだ、きっとグランドナイトガラを控えた緊張で、白昼夢でも見ていたのだ。

 転生前、ゲームをヒロインとしてプレイしていた頃の自分と、今の悪役令嬢としての自分──その境界が揺らいでいるだけ。……しっかりしなければ。


 気づけば、自然に手を握られていた。

 けれど私は、心の中でさえ、その事実に突っ込む余裕を持てなかった。




「違うのよ、リナ」


 校舎前でリナの顔を見た瞬間、私はそう切り出した。


 両肩を掴まれ、至近距離で詰め寄られたリナは、口をパクパクさせて動揺している。頬も赤い。……まさか風邪でも引いたのではないだろうか。

 そんな不安が頭をよぎったが──その前に、まずは弁明をさせてほしい。


「あ、あの、クラリス様……!?」

「あなたたちから見たら、口づけをしているように見えたかもしれないけれど、あれは演出で、実際には頬に触れただけなの」


 私の説明に、リナは目を丸くする。


「……えっと……」

「だから──あなたが心配するようなことは、何もないのよ」


 リナは視線を宙に漂わせ、私を見て、隣のルークを見て、そしてまた私に戻す。

 やがて、小さく息をついて安堵の笑みを浮かべた。


「それは……安心しました」


 その表情を見て、私は心の中で確信する。


 ──間違いない。リナの本命は、アレクシスだ。


 ちゃんと説明できてよかった。もしかすると一晩中、彼女を悩ませてしまっていたかもしれない。……やはり、寮に押しかけてでも説明すべきだったか。


 ほっと息を吐いた瞬間、背後から肩をつかまれ、リナから引き離される。


「ほら、姉さん。リナが困ってる」


 ──はっ。

 いけない、興奮しすぎた。


 頬を染め、照れくさそうに微笑むリナは、どうやら風邪ではなさそうだ。おそらく今日のグランドナイトガラを前に、ヒロイン力が急上昇しているだけだろう。


 私は小さく咳払いをして、自分の失態を誤魔化した。


「本当に……安心しました」


 ──だから、気づけなかった。

 リナがルークをちらちらと見やりながら、「もう怖いものは見なくて済むんだ」と言わんばかりの、心から安堵した表情を浮かべていたことに。


色々と勘違いしていますが、リナの心配が晴れたので良しとしましょう(笑)。


次回ep.130は、クラス劇後、初めてアレクシスと顔を合わせます。

クラリスはどんな反応を見せるのか──


9月19日(金) 19:00更新予定です。お楽しみに!


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