59話 新しい力
次の日目が覚めると、みんなはまだ寝ていた。昨夜は竜の里の美味しい物を一杯食べてはしゃいでいたし、長旅の疲れもあったのかもしれない。
「そういえば新しい力がなんとかって言ってたな。」
そこで自分のステータスを確認するとなぜか召喚魔法がEXと表示されていた。叡智の力も借りて詳しく見てみると、どうやら召喚獣達との信頼関係が最大になると召喚獣が人化するというモノらしい。
召喚獣の人化なんてまるで夢のようなスキルに俺は激しく興奮した。まずはスノーを呼び出してみる。
「スノー、今から君に人化を使いたいんだけど、いいかな?」
(お願いします!!わたしもみんなと一緒になれるんだね!)
俺は覚悟を決めてスノーに人化を使う。スノーとは長い間一緒にいるし、信頼度だって絶対に最大になっているという自信があった。
そして俺の目の前には青い髪のマリーと同じくらいの背丈の女の子が立っていた。
「わぁ。どうですかご主人様?スノーはちゃんとみんなと同じになれてますか?」
「あぁ、かわいいよスノー。それに喋れるようになったんだね!」
「本当だ!?これでみんなとお話し出来ます!!」
嬉しそうに飛び回るスノー、ちゃんと喋れるみたいだし今までは俺と念話するしかコミュニケーションを取る方法がなかったからみんなと話すのが楽しみでしょうがないんだろう。
「スノー、鳥に戻れるか試してみてくれるか?」
スノーにお願いするとすぐ鳥に戻る、そして自分の意思ですぐに人化出来るようになったようだ。
スノー
嵐鳥Lv48
HP520/520
MP450/450
<スキル>
『人化』『つつく』『飛行』『嵐魔法』『羽根吹雪』『雷魔法』『氷魔法』
状態:契約・人化
ブルーバードから特殊進化した個体。嵐を操る。
スノーのステータスを確認すると人化状態ではつつくと飛行、羽根吹雪がグレーアウトしていた。どうやら人状態では使えないスキルのようだ、試しに氷魔法を使って貰ったら魔法は発動した。
戦闘は一応出来るが、本格的な戦闘になる場合は鳥状態に戻って貰わないと厳しいかも知れない。
「よし、じゃあ順番にみんなを人化していくか。」
「うん、そうしてあげて!きっとみんなも喜ぶよ!」
早速イズミとシルクを呼び出して人化した。イズミは狼の耳と尻尾が残って見た目は獣人そのものだったし、シルクは妖精がそのまま人のサイズになって喋れるようになった。特にシルクは戦闘で召喚する事がないのでみんなと話せるようになって凄く喜んでいた。
ゴブリンズは人化しても見た目が変わらなかった。ただ、全員がちゃんと人の言葉を話せるようになって喜んでいた。こいつらは人化状態でも戦闘力が変わらず、言葉を話せるようになって連携力が上がった。
イクスは人化しなかった。馬としての矜持の問題だそうだ。
(オレは馬の姿に誇りを持っている。折角の主の薦めだが、これは譲れない。)
みんなが目を覚ました所で、朝の出来事を話し順番に紹介していった。パーティーメンバーの上限がある為に俺、クロ、ローズ、マリー、コウ、召喚獣は1体しか呼び出す事が出来なくなったのだ。
この世界のパーティーシステムは最大で6人迄。召喚獣も1人としてカウントされる仕組みになっている。俺が1人の時は良かったが今はメンバーも増えて5人になっている。なので召喚獣は1体しか呼び出すことが出来ないのだ。
これは今までの戦闘スタイルも大きく変わる事になる、まだコウの実力は分からないが今までと同じという訳には行かないだろう。
「だけど、みんなとこうやって話しが出来るようになるなんて思わなかったよ。」
クロがイズミの頭を撫でながら言う。犬課と猫課だけど、本人達は凄く仲が良い。イズミも大好きなクロと話せるようになって本当に嬉しそうだ。
「わたしもクロと話せるようになって嬉しいよ。」
「ジン、母上が呼んでおるようじゃ。」
ゆっくりと朝食を摂りながら話しているとコウがやって来た。どうやら竜王様が呼んでいるようだ。
「みな昨日はゆっくり休めたかの?今日はコウについて話しておこうかと思って集まって貰ったのじゃ。」
竜王様はコウを母親としての目で優しく見つめる。
「コウは幼い頃にジンと出会い、それからジンと一緒になる為に勉強してきた。普通は覚えないであろう人の学問や言葉、それに戦闘術もな。こやつは人として戦う術も持っておる。そして竜としても幼いながらも強大な力を得た。ジン、お主なら見えるのじゃろう?」
竜王様に促されてコウのステータスを確認して驚いた。
コウ
紅竜姫Lv67
HP1802/1802
MP865/865
<スキル>
『人化』『槍術』『竜闘法』『竜魔法』『飛行』
状態:親愛・人化
半端じゃなく強かった。HPやMPもそうだが、竜闘法と竜魔法は初めて見るモノだった。竜王様が言うには、竜闘法は人化状態でも使える竜専用の身体強化スキルらしい。魔力と気を同時に纏うようで、魔法に対しても物理攻撃に対しても高い防御力を発揮する。更に攻撃にも応用出来ると言う強力なスキルだ。
竜魔法はそれぞれの個体によって特性が違うらしいのだが、コウの場合は炎が中心となっているらしい。威力は凄まじいと竜王様が言っている。
「コウは凄く強いんだな。」
「うむ。ジンと一緒に冒険をしたくて頑張ったのじゃ。」
素晴らしい笑顔でそんなセリフを言われて俺はもうコウにメロメロだった。ロリコン万歳。
「では、改めて聞こう。みな、この子を連れて行ってくれるかの?」
改めて聞かれるまでもなく俺達の答えは決まっていた。
「勿論です。」
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