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56話 迷宮都市ギャザレス

 迷宮都市ギャザレス。ここは約500年前に現れたダンジョンの周りに出来た街である。この迷宮は現在、最下層である50層まで攻略されている。いや、正しくはボス部屋の扉の前までは攻略されていると言った方がいいだろう。

 これまでに数度、ランクSの冒険者が辿り着いたという記述がある、しかし誰もその扉を開く事が出来なかったのだ。どんな条件が必要なのか、沢山の噂が流れているが誰にも正解は分からないのだ。

 そういう理由があってこの迷宮は完全攻略されることなく、誕生から現在まで多くの冒険者が挑戦し続けるダンジョンになっている。この迷宮は浅い位置は初心者でも挑む事が出来、進むに連れて難易度が上昇していく、更に希少な武器や防具、宝物が稀に発見される為に一攫千金を夢見る者も数多く挑んでいる。


「さて、まずは宿の確保だな。それから食事をして街を散策してみようか。」


「賛成~。この街はどんな食べ物があるんだろうね~。」


 クロは最近食いしん坊キャラになってきた気がする、気のせいだといいのだが明らかに途中にある食べ物屋さんや屋台を見ている。

 マリーはまだ大勢の人の目線になれないのか、あまり元気がないように見える。どうにかしてあげたいが精神的な部分は本人次第なので難しいだろう。


 とりあえず宿を取る事が出来たのだが、1部屋しか空いておらず4人で泊まる事になってしまった。みんな見えない所で嬉しそうにしてたのにはちゃんと気が付いた。

 その後は食事を採って街を散策して気に入った食材等を買い込んだ。武器屋にも行ったがあまりいいのはなかった、なんでも強力な武器や防具は半年に一度のオークションに出される事が多いのだとか。

 武器や防具については自分達で調達する予定だったし、買えなくても大きな問題はないだろうと、その場で買うのは諦めた。


「さて、大体準備出来たし、明日は身体をほぐす程度に迷宮に入ろうか。」


「そうだな、さすがに身体が鈍りそうだぞ。」


 その夜はいつものように無心で寝た。


「さて、今日は軽く行って見るか。」


 朝食を食べて早速全員で迷宮へと向かう。入る前に広いエントランスのような場所で街の兵士により中へ入る時に冒険者カードを提示するようになっている、これは中で行方不明になった場合に対応する為らしい。特別な料金や罰金等はなく、入る人間のチェックだけだ。出た時も同じようにチェックを受けるらしい。


 早速入ってみると1層目はスライムが出て来た。


「これはなんというか、懐かしいな。」


「なんだが倒すのが可愛そうに感じてしまうな。」


 迷宮内部では外のモンスターのようにこちらが格上だとしても襲って来る。その為外なら確実に逃げて行くようなスライムが俺達に向かってくるのだ。


 10層目くらいまではなんという事もない、ごく簡単な階層だった。大賢者の塔で言えば5層目くらいの難易度だろうか。

 10層のボスを倒した辺りで夜になっていた。


「今日は肩慣らしだし、一旦外に出ようか。転移出来ないか試しておきたいしな。」


「そうするか。特別疲れているわけではないが、無理する必要もないしな。」


 試しに転移すると、エントランスらしき場所まで飛ぶ事が出来た。周りに不思議な目で見られなかったのは何か脱出用のアイテムがあるのかもしれない。逆に迷宮の内部に転移出来るか試してみたが、中に飛ぶ事は出来なかった。


「さて、じゃあ明日からは本格的に攻略を始めようと思う。今日の晩御飯は豪華に行こうか!」


「大賛成!!」


 クロは両手を上げて喜び、ローズやマリーも嬉しそうだ。一旦攻略を始めてしまえば自分達で作るしかなく、とても店の味に敵う様な料理は作れない。

 その日はみんなで食事を楽しんで昨日と同じように1つの部屋で無心で寝た。


 次の日から本格的に攻略を進めて行ったが、20層、30層あたりまでは殆ど苦労しなかった。多分冒険者ランクCくらいのパーティーで来れるくらいの難易度だろう。

 しかし30層を越えると強いモンスターも増え始め、簡単には進めそうにない。勿論俺達は別だ、全員がランクSに匹敵するような実力を持っている為、何の問題もなく進めてしまう。


「聞いていたよりは歯ごたえがないものだな。」


「はい、おねぇさま。マリーだけでも簡単に進めそうです。」


 2人が言うように1人でもこのあたりまでは進めてしまうだろう。40層を越えるとさすがに強くなってきた、大賢者の塔でいうと40層くらいの難易度だろうか。明らかに難易度が変わった。

 41層からは俺達も気合を入れて進む事になった、1層あたりに掛かる時間も長くなっている。


「お、みんな。なんだか強そうな武器が出たぞ。」


 この迷宮では所々に宝箱が置いてあった、中身は武器や防具、アイテム等がランダムで入っており、中にはトラップが仕掛けられているモノもあった。

 中に入っていたのはミスリル製の短剣、どうやら炎の魔力が込められたマジックアイテムのようだ。しかし、俺達の中で短剣をメイン武器にしているメンバーはいないので無限収納に入る事になった。


「41層でこのレベルの武器が手に入るのなら、運が良ければ私達もいい装備に換えられるかもしれないな。」


「そうだな、何回か通ってもいいだろうし、とりあえずそのままボス部屋の前までは行ってみよう。武器や防具はそれから相談しようか。」


 武器防具の目処が立った所で一旦休憩にし、今後はボス部屋まで一直線に向かうという事となった。

お読み頂きありがとうございます。

総PVが2万を越えておりました、ありがとうございます。

これからも頑張ります。

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