53話 大賢者の塔 30層
29層で修行し始めて10日程が経過した。それぞれが課題を持って獅子人族と戦っている、ローズは光翼の習熟の為、クロは格闘技術の更なる向上の為、マリーは戦闘感覚を養うために。
その中でマリーが上位職業へと到った。
マリー
冥騎士Lv52
HP865/865
MP402/402
STR106
DEX65
VIT50
AGI52
INT48
CHR30
LUK15
<スキル>
New『闇纏』『疾風迅雷』『明鏡止水』『不屈』『五感強化』『挑発』『隠蔽』LvMAX『身体強化』LvMAX『精神強化』LvMAX『状態異常耐性』LvMAX『回避』LvMAX『隠密』LvMAX『察知』LvMAX『剣術』LvMAX『盾術』Lost『騎乗』LvMAX
<魔法>
『暗黒魔法』『生活魔法』『光魔法』Lv6『闇魔法』LvMAX
<称号>
『逆境の騎士』New『剣鬼』New『冥騎士』
『冥騎士』・・・騎士から派生する希少職に成った者。※『闇纏』を習得する。
『剣鬼』・・・暗黒の剣を司る鬼。※HP+100 STR+40
『闇纏』・・・光魔法以外の魔法攻撃を無効化し自身の攻撃力へと変換する。
冥騎士という攻撃に特化した騎士になった。その際に盾スキルを失ったが、それを補うように強力なスキルと称号を得ている。闇纏はオートで発動するスキルで自身へと向けられた光魔法以外の属性を全て吸収して攻撃力へと変換する、これによって盾が無くともある程度の防御能力を発揮し、強力な攻撃を繰り出せる。
そして今、俺達は30層のボス部屋の扉に手を掛けていた。
「よし、みんな準備はいいね?気合入れていこう!」
「「「「はい!」」」
全員が気合を入れ頷くのを確認して30層の扉を開けた。扉の先に待っていたのはオークキングと側に控えるオークジェネラルの姿だった。
オークキングは全てのオークの王であり、最上位種だ。そしてオークジェネラルは多くの兵を率いてキングを守る軍団の長である、つまり確実にオークの集団との戦闘になるという事だ。
「多分、まずはオークジェネラルだけがオークを召喚して向かってくると思う。だから全員で向かってくるオークを殲滅しつつ、ジェネラルから倒そう。」
「分かった、私がなるべく多くのオークを引き付ける。その間にみんなで倒していってくれ。」
「頼んだローズ。スノーは上空から全体の援護、他のみんなは各個撃破でいこう、多分だけどジェネラルとキング以外に俺達が個人で負ける事はないと思う。それで粗方片付いたら全員でジェネラルに集中攻撃を仕掛けよう。いいね?」
「「はい!」
((了解です。))
全員に方針を指示してローズの挑発によって戦闘が開始される。予想通りジェネラルの前に無数のオークが召喚された。
「グォォオオオオオ!」
「お前らの相手は私だ!『疾風迅雷』『不撓不屈』『挑発』!」
「よし、まずは数を減らすぞ、全員で範囲魔法だ!『魔眼』!」
オークの群れへ俺達の魔法が降り注ぐ、俺は魔眼によって雷を、スノーは羽根吹雪と氷の雨を、イズミは風魔法で竜巻を作り出し、クロは炎の柱を作り出す。オークの魔法はマリーが闇纏で吸収し、自身の攻撃力へと変えていく。
「お返しです!『暗黒剣』!」
マリーの強化された攻撃は横薙ぎに凄まじい衝撃波を放ち、範囲魔法から生き残った敵を襲う。全員の攻撃が終わる頃には1/4程にその数を減らしていた。
「よし、残りはそれぞれで倒すぞ!」
言うよりも早くクロとマリーが左右へ展開し一撃で葬って行く。スノーは上空から氷の槍で貫き、イズミは直接喉笛を噛み切っている。獅子人族との戦闘でも多数の敵と戦う事が多かった為、うまく連携が取れるようになった。
クロが上位職になった時にも衝撃があったが、マリーもまた凄まじい。敵の魔法使いの魔法を吸収し、そのままの勢いで剣を振って返す。身体の周りを靄のような、オーラのような黒い闇が覆い、剣自体もスキルの影響で暗黒に染まっている。一撃で命を刈り取るその姿はまるで死神のように見える。
この世界の御伽噺に漆黒の巨大な馬に乗った冥騎士の物語がある。闇を纏い、戦場を駆け抜け多くの人を葬った騎士、たった一騎で敵国を滅ぼしたその姿は正に死神だったと綴られている。
その物語の絵とは似ても似つかないかわいらしい外見のマリーが敵を次々と葬っていく様は何の冗談かと思う。
「雑魚は全て片付きました。おねぇちゃん!」
「よし、全員オークジェネラルを攻撃だ!」
ローズがオークジェネラルを抑えているが与えたダメージは少ない。勿論、ローズは殆どダメージを負っていない。ダメージを与えるのはクロやマリーの仕事なのだ。
「クロ、爆炎獣撃はキングに残しておけよ!」
「了解だよ、このくらいなら普通の技でもなんとか!『炎拳乱舞』!」
俺はオークジェネラルの足元を魔眼の氷で凍らせる。一瞬動きが止まったジェネラルにクロの必殺技が命中する、更に追撃でマリーの上段からの一撃が決まった。
オークジェネラルのHPは3割程減っただろうか、キングを守る騎士の防御は固く、思ったよりもダメージが通らなかった。
「か、かたいですぅ~。」
「大丈夫だマリーちゃんとダメージは通ってるぞ!イズミとスノーは手足を優先して狙っていけ!」
2m50cm程のオークジェネラルの足をイズミが狙い、自由に行動をさせない。ローズの盾とイズミ、スノーがジェネラルの動きを抑える。そしてクロとマリーは次々に攻撃を当てる、一撃で倒せなくても確実にダメージを与えていく。
「グアァァァァァァ!!」
するとオークキングが鼓舞するように雄叫びを上げた。オークジェネラルは瀕死の状態だが残った力を振り絞りマリーの身長の倍はあろうかという大剣を振り回す、その時イズミがその大剣の一撃を食らって吹き飛ばされてしまった。
だが、抵抗もそこまでだった。俺達の攻撃は確実にオークジェネラルの息の根を止めた。イズミは未だ起き上がれないが死んではいない。
「グルゥアアアァァァァァ!!!」
オークキングが裂帛の叫びと共に全身からオーラを立ち昇らせ一歩踏み出す。
「来るぞ!ローズ頼む!ローズに意識が向いたらクロは爆炎獣撃の準備だ!全員で足止めしてオークキングの意識をクロに向けさせるな!」
「任せろ!こっちへこい豚の親玉!『挑発』!!」
3mは優に超えるであろうオークキングはローズと同じくらいの長さの剣を手にローズに切りかかる。
ーガィィン!
受け止めたローズの盾は凄まじい音を上げる。オークキングの攻撃力の高さが窺える。しかし、守りに特化したローズの防御を破る事は出来ない、ほんのすこし押されただけで綺麗に受け止めた。
「よし、大丈夫だ。攻撃力は高いが止められる!後は頼むぞ!」
「さすが、ローズだ。後は俺達に任せろ!マリー行くぞ!スノーは援護、クロ準備が出来たら合図を頼む!」
俺は雷を纏いキングの右手側から攻撃を仕掛ける。マリーは闇を纏い左手側に回る、イズミはダウンしている為、スノーが上空から氷魔法で援護してくれる。
俺の攻撃を剣で弾き、マリーの攻撃を盾で受け止める、そして振り回す剣はローズが受け止めてくれる。三位一体の連携で徐々にキングにダメージを与えて行く。さすがに今までで一番強く、攻撃力も防御力も高い。未だに一割程度しかダメージを与えていないだろう。
「よし!いけるよ!『爆炎獣撃』!!」
ーボガァァァン!!
しかし、クロの渾身の一撃はオークキングの盾によって防がれてしまう。ただ、凄まじい一撃はオークキングの盾を粉々にし、左腕を使い物にならないくらいズタズタにした。
「ごめん、きっちり当てられなかった!」
「上出来だ!後は俺達に任せろ!」
クロの爆炎獣撃は全ての魔力を使った上で反動も少なくない為、その後の戦闘に影響を与える諸刃の剣だ。しかし、その凄まじい威力はボスすら一撃で葬る可能性を秘めている。なので多少のリスクを負ってでも撃ったのだ、戦闘の後半になればそれだけクロの負担が大きくなってしまう、下手をすると撃つことすら出来ないかもしれない。そうなる前に戦闘の序盤で撃ってもらった。
「マリー右腕を落とすぞ!」
「はい!いきます!」
マリーは全力でスキルを使用し、己の攻撃力を高めていく。そしてその一撃は弱ったキングの右腕を切り落とす。
「行くぞオークキング、これで終わりだ!『紫電一閃』!!」
ーザシュ!
受け止める術を失ったオークキングの首を狙い俺の全力の必殺技をお見舞いする。俺の一撃はオークキングの首に吸い込まれるように決まり、その首を跳ね飛ばす。オークキングはキラキラと光の残滓を残して消滅した。そしてその場には丸い玉のようなものが残されていた。
「これは・・・。」
俺は何も言わずに玉を拾い、無限収納へとしまった。多分これが創造神様の言っていた塔の外に出るアイテムだろう。
「今回もなんとか倒せて良かった。イズミはかなりのダメージを受けているが無事のようだ、先に帰還してもらっているよ。」
「良かったぁ~イズミちゃんが吹き飛ばされた時は心臓がバクバクしてたよ。」
「まぁ、召喚契約してるから俺が死なない限り消滅する事はないんだけどな。」
「それでも不安なのは不安になるよ。もぅ。」
イズミの事が大好きなクロは本当にイズミが心配だったようだ。
「兎に角、今日はもう休もう。明日起きてから今後の事を話し合おう。」
「そうだな、それがいいかもしれない。私もさすがに疲れた。」
こうして無事に30層のボスであるオークキング達を倒した俺達は休息を取ることにした。
お読み頂きありがとうございます。
いつもより長めですがキリが良かったので一気にいきました。




