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51話 大賢者の塔 その10

 気持ちも新たに24層へと入った俺達の目の前に樹人族が現れた。こいつらは木そのままのようなタイプと、女性の上半身を持った下半身が花のようなタイプがいる。攻撃方法は種族限定の木魔法や土魔法、胞子や花粉を使った精神攻撃や毒攻撃を持っている。見た目通り弱点は火魔法だ。


「ここはクロには相性が良さそうだが、ローズの新しいスキルは試しにくいな。取り合えずやれるだけやってみよう。敵を抑えるのは俺達に任せておけ。」


「じゃあ、わたしから行って見るね。」


ードゴン


 クロの一撃は昨日よりも明らかに威力が上がっていた。一撃で樹人を粉々にしてしまった。


「なんか、威力が上がってるみたいだね・・・。」


 クロ本人も驚いたようだ。


「で、では次は私がやってみよう。」


 ローズの背中から光が出てきた、すこしだけ浮いたような気もするが飛ぶという感じではない。


「これは練習が必要だな、思ったよりも難しかったぞ。」


 そう言いながら普通に樹人を倒して行く。


「よ、よし。じゃあマリー俺達も攻撃して倒してしまおうか。」


 樹人族を片付けてクロとローズに感想を聞いてみた。


「う~ん、わたしは今までと変わらないかなぁ。強くなった実感はあるよ。」


「私は光翼を使いこなすにはまだまだ練習が必要だろうな。基礎能力は大幅に上がっているようだし、騎士としては文句は無い。」


「わかった。まずは今まで通り階段までを素直に進んで、階段に着いて進むか、休息にするか、そのまま修行にするか話し合おうようにしよう。」


「「「了解。」」」


 みんな異論はないようなのでまずは階段を目指す事にした。道中で気付いた事はクロの攻撃力が明らかに上がった事、そしてローズの安定度が上がっている事だろう。元々攻撃に特化していたクロは更に強く、防御に特化していたローズは更に固くなったようだ。

 新しいスキルについては殆ど試す場面がない。クロは兎に角、ローズはもっと練習しなければ逆に戦力を落としかねない。


「すまない、私はここで光翼の練習をしたいのだが、いいだろうか。」


「わかった。じゃあ他のみんなもこの辺りで休息か鍛錬にしよう。」


「ありがとう。早くこのスキルを使いこなして見せる。」


 ローズの練習風景を見ていると、やはり使いこなすのは難しいようだ。背中から光は出るが翼には見えないし、殆ど浮いていない。その後も練習を続けていたがその日はしっかりと浮かぶ事も出来なかった。



「よし、じゃあ今日は25層に入ろう。」


 25層は鳥人族が相手だった、21層からの流れだとこの後も人型のモンスターが続くのかもしれない。鳥人族はハーピーと呼ばれるような女性型、女性の姿で手の代わり翼が生え、足にも鋭い爪を持つタイプ。鳥の頭に翼、そして人の手足を持ち武器を操る男性型がいる。空と陸どちらでも戦闘可能で風魔法を得意とする。弱点となる属性を持たず、空を飛ぶと非常に戦いにくい敵でもある。


「鳥人族は面倒だな、スノーに頼んで地上に叩き落してもらうか。」


(まかせて~あんな鳥もどきなんて楽勝だよ~。)


 スノーの羽根吹雪と氷魔法で地上に落とし、それぞれを撃破していく。女性型は武器を持たない為比較的楽に倒せるが、男性型は地上戦を得意とする為、翼を使えないようにしたとはいえど風魔法と槍の攻撃はなかなかに厄介だった。


「実はな、先程鳥人族の飛び方を見てヒントを得たのだ、もしかしたら飛べるかもしれん。」


 確かに、人が飛ぶイメージというのは掴みにくい。そこにモンスターとはいえ、翼を持って飛ぶ敵が現れたのだ、その姿は参考になったのだろう。


「よし、ちょっとやってみる。『光翼』!」


 ローズの背中からは昨日よりも翼っぽい光が出ている。そして昨日よりも若干高く浮いているみたいだ。翼を動かそうとしているのか、すこしだけ動いているような気はするが、羽ばたくというよりはピクピクしているだけに見える。


「まだ、ダメだな・・・。分かって来たような気はするんだが。」


「まぁ、そんなに気にしないでローズ。人が跳ぶって言うのは難しいと思うよ。俺は風魔法の応用で飛んでるけど、翼を使って飛べって言われたら出来るか分からないし、まだ練習を始めたばかりじゃないか。もう少し頑張ってみようよ。」


「そうだな、諦めるのはまだ早かったな。すまない。」


 その後、まずは男性型を倒し、ローズの参考の為に女性型はなるべく地上に落とさずに倒すようにした。階段までそれを繰り返し、階段に着くと昨日と同じようにローズは練習を申し出た。


「今日も練習させてもらえないだろうか。」


「勿論大丈夫さ。俺達に気を使う必要はないぞ。」


 ローズの申し出には全員反対する訳がなく、応援している。一生懸命に練習している姿はとても美しい。光の翼を持ったエルフの女騎士というのは俺から見ると女神のように見える。


「ジン、そのなんだ、あまり見つめられると困るのだが・・・。いや、嫌という訳ではなくてだな、そのなんだ・・・。」


「あぁ、すまない。ローズがあまりにも美しくて見とれてしまったよ。気にしないでくれ。」


「うっ・・・!分かった、気にしない・・・。」


 どう見ても気にしているが俺は気付かないという振りをした。まだいい雰囲気になる訳にはいかない。大賢者の塔を攻略するまでは賢者モードで我慢しなければいけないのだ、頑張れ俺。

 色々あったがその日もローズは飛ぶ事が出来なかった。

お読み頂きありがとうございます。

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