48話 大賢者の塔 20層後編
ローズの方を見ると何発か攻撃を喰らったらしく、鎧に傷が付いていた。
「大丈夫かローズ、『ヒール』!」
「問題ない、直撃は殆どない。」
キングの攻撃を防ぎながらも話す余裕があるようだ、この分なら心配ないだろう。イクスと強力していくらかはキングの体力も奪ったようだ。その時、クイーンが倒された事を理解したキングが叫ぶ。
「グゥォォォオオオオオオ!」
すると先ほどよりも大きなゴブリン、ホブゴブリンが20体。そして立派な鎧を着たゴブリンナイトが6体、キングの後ろに出現した。そしてキングが更にもう1度叫ぶとゴブリン達の目の色が赤く光り、雄叫びを上げながら猛然と向かってくる。
「くそ、まだ沸いて出るのか。イクスとスノーはホブゴブリン達を頼む。ローズはそのままキングを、クロとマリーはゴブリンナイトを倒してくれ!俺は全体の援護に集中する!『魔眼』!」
魔力にはまだ余裕があるが、キングのような強敵を抑えながら全体の支援をするには精神的にかなりきつい。
まずは全体に雷の雨を降らせ敵を麻痺させる。そして闇魔法で行動を阻害していく、これで敵の動きはかなり鈍くなった。
敵を倒すスピードは召喚獣もクロ達も殆ど変わらない。この分なら任せても大丈夫だろう。ローズと一緒にキングに当たった方がいいかもしれない。
「俺はローズの援護に回る、みんなは今の調子で頼む!『リジェネ』『オールヒール』回復はこれで当分大丈夫なはずだ!」
継続的に体力が回復する魔法とパーティー全体を回復する魔法でみんなを癒してキングへと向かう。
「すまん、ジン助かる。奴はなかなかいい剣と盾を持っているようで私の攻撃力ではダメージが通らなかったのだ。」
ローズは話しながらもキングの激しい剣を盾で受けきる。
「分かった、どうやらミスリルみたいだし、魔法も効き難そうだね。」
俺は自分のミスリルの剣に雷を纏いキングを切る。しかし手ごたえが悪い、どうやら鎧も全てミスリルのようだ。全く効果がない訳ではないが簡単には倒されてくれないだろう。
「こういう時はクロの例の必殺技が良さそうだな・・・。もうすこしこのまま耐えよう。」
クロとマリーの戦いを横目で確認する。
「マリーちゃん、しっかり敵の動きを見て。落ち着いて対応すれば、そんなに強くないよ!ハッ!トッ!」
クロがマリーに指示を出しながらゴブリンナイトの剣を蹴り上げ、顔面に突きを放つ。その勢いのまま首を折る。
マリーは両手剣でゴブリンの剣を弾き、力任せに振りぬいて胴体を上下に切り分けた。
「大丈夫そうです!えぃやぁー!」
残り1匹なら何も問題ないだろう。
スノーとイクスの方も問題なく片付いたようだ。
「よし、みんなキングに集中しよう。クロ、例の必殺技いけるか?」
「うん。さっき回復してもらったから体力も十分あるし、いけるよ!」
「じゃあ、全員クロの援護だ。クロの必殺技が決まったら全力で止めを刺すぞ!」
俺の指示に全員が頷き、クロが準備を始める。
「行くよ!『獣化』『疾風迅雷』!『爆炎獣撃』!」
クロは残りの魔力を全てと引き換えに獣化を使う、そして疾風迅雷で更に身体能力を引き上げて必殺技の構えに入る。
ードゴォォオオオン!
キングの盾をマリーが、剣をローズが押さえ、俺は足元を凍らせて固定する。そしてがら空きになった胴体へクロの必殺技が炸裂する。
激しい爆発音と共に衝撃は身体を貫き、キングの鎧がボロボロと崩れ落ちる。胴体に穴を開けることは出来なかったが、それでもミスリルの鎧を砕き、その身体を血に染めるなど普通の威力ではない。
「よし、がら空きの胴体へ集中して攻撃しろ!ここで決めるぞ!」
「はい!」
全員の激しい攻撃がキングを襲う。しかしキングは最後の力を振り絞り雄叫びを上げる。
「オォオオオォオオオォォォォォォ!」
その叫びは衝撃波となって俺達を吹き飛ばした、しかしキングは膝を着き、殆ど動くことが出来ない。
「まだだ!『疾風迅雷』『魔眼』『紫電一閃』!!」
俺はいつもより多くの魔力を使い全身に雷を纏う、そして渾身の力で剣を振り抜いた。
「グォォォォォオオオ!」
ゴブリンキングは断末魔の叫び声と共に消滅した。
「よし、勝ったぞ!倒したぞ!」
「やった~!」
「やったな!」
クロもローズもマリーもみんな手を叩いて喜ぶ。敵を倒してこんなに嬉しかったのは久しぶりかもしれない。
だが喜んでばかりもいられない、今回の戦いで激しい攻撃を受けたローズの装備は痛みんでいる。それにまだ20層なのだ、ここから100層までどれだけの戦いが待っているか予想も出来ない。
「まずは休息を取ろう。今日と明日はゆっくりと身体を休めて、ローズの装備も魔力で出来るだけ修復しよう。」
「そうしよう。わたしお風呂入りたいよ~。」
「クロおねぇちゃん、私も入りたい!」
「よし、じゃあみんなで手分けして準備しよう!」
俺達はテントや食事、お風呂の準備をしてゆっくり身体を休める事にした。今後の攻略に若干の不安はあるが、今は束の間の休息を楽しむ事にしよう。
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