47話 大賢者の塔 20層前編
俺達はなんとか17層まで逃げ込んだ後、順調に進んでいる。17層では5種類程のバード種が襲って来た。普通の人間ならば空中の敵に対応するのは難しいが、こちらにはスノーがいる。それにイクスも空を駆ける事が出来るので簡単に対応出来る。
スノーは羽根吹雪や氷魔法でバード達を撃墜し、イクスは雷で落とす。俺達はそれをスパスパとちょん切っていく。飛んでない鳥なんて全く敵じゃない。
18層はダルメルとアーマラビットだった。ダルメル種は大きなキリンのモンスターで、その長い首を鎌のように振り回す範囲攻撃を得意とする。アーマラビットはラビット種の進化系で鎧のように硬い外皮を持ち、強力な脚力を武器に弾丸のように体当たりをしてくる奴らだ。
この層ではゴブリンズとイクスを召喚して対応した、一郎の盾ならばアーマラビットの体当たりを防ぐ事が出来る。ダルメルを攻撃範囲に入れないように魔法で牽制しながらラビット達を1匹づつ仕留めていき、全員でダルメルに集中攻撃して倒す。それを繰り返しながら無事に階段へと辿り着いた。
19層はマッドゴーレムが出現した。こいつらはストーンゴーレムのように固くはないのだが泥の中から急に現れる、そして核を壊さない限り周囲の泥を使って復元してくるので非常に厄介だ。土魔法と水魔法に耐性を持ち、物理攻撃も効果が減少する、その代わり攻撃力自体は大したことがないという感じだ。
「スノー、俺があいつらの足元を凍らせて足止めする。そこに嵐魔法で核を覆う泥を吹き飛ばしてくれ!」
スノーの嵐魔法は人間には使えない魔法でかなり強力だ、激しい風でマッドゴーレムの泥をガリガリ削っていく。
「見えた!クロ、マリー、核を壊せ!」
半分程露出した核にクロとマリーの攻撃が当たり、核が破壊される。その瞬間に身体が崩れるようにボロボロと消滅していく。
「うえぇぇ、ドロドロだよぉ。お風呂入りたい・・・。」
クロの言葉はみんなの気持ちを代弁していた。吹き飛んだマッドゴーレムの泥が身体にくっ付きもの凄く気持ち悪いのだ。その日は襲い来る沢山のマッドゴーレムを倒し、ドロドロになりながら階段まで辿り着き、いつもより長く風呂に入ってゆっくりと休んだ。
「さて、今日は20層に挑戦だ。かなりの確率でボスが出ると思う、みんな気合を入れて行こう!」
20層へ入るとそこは草原だったがまるで通路のように松明が等間隔に並んでいる、それを進むと草原の真ん中に2匹の大きなゴブリンが立っていた。あれはゴブリンキングとゴブリンクイーン、全てのゴブリン種の王と言われる存在だ。
「20層でゴブリンキングか、しかもクイーンと一緒にいるとはな。これは楽な戦いじゃないぞ。作戦だが、まずはキングにローズとイクス。2人で抑えて欲しい、その間に残りの全員で出来るだけ早くクイーンを倒す。」
「「「了解!」」」
全員が強化魔法を掛け、スキルで強化し戦闘を開始する。
「こっちだゴブリンキング、『挑発』『不撓不屈』!」
「グゥオォオオオオオ!」
ローズの挑発と同時にゴブリンキングが吼える、すると何も居なかったはずの空間にゴブリンが30匹程現れ、ローズへと群がって行く。
「あれはまずい!くそ、イクス全力で羽根吹雪と嵐魔法に氷魔法でザコ共を殲滅してくれ、クロは撃ち漏らしたザコの掃除を頼む。その間クイーンは俺とマリーで抑える!頼んだぞ!」
「わ、わかった!行こうスノーちゃん!」
「お前はこっちだクイーン!『挑発』『魔眼』!」
クイーンの意識をこっちに向けると同時に魔眼でクイーンに対して弱体魔法を掛けていく、土魔法で足元を固め、闇魔法で視界を奪い、風魔法で周囲の音を消す。その隙を突いてマリーが両手剣でクイーンを切り刻む、剣の特殊効果でクイーンの視界は段々と無くなっていく。
その間にもスノーの激しい範囲攻撃の音が響き、ザコの数が減って行くのが分かる。そう長い時間は掛からないだろう、それまでこっちは大丈夫だ。
ローズとイクスを確認するとザコが数匹絡んでいるが無難にキングの攻撃を受け止めている。ゴブリンキングはAランクのモンスターだ、その攻撃を受け止めるという事はローズはすでにSランク以上の実力があるという事。あの様子ならよほどの事が無い限り致命傷は受けないだろう。
「クキャァァァァ!」
突然クイーンが叫んだ、するとクイーンの傷がみるみる回復していく。どうやら回復魔法を自分に掛けたようだ、くそ詠唱を妨害する魔法をもう1度掛けないと。
「ジン君、ザコ片付いたよ!クイーンを倒しちゃおう!『疾風迅雷』!」
「あぁ、そうしよう!『疾風迅雷』『魔眼』!」
クイーンは手に持った長い杖を振り回し抵抗する。魔眼の魔法で詠唱を妨害しているので得意の魔法を撃てないのだ、ただし先ほどの回復魔法でマリーの剣の効果で奪った視力も回復しており、正確にこちらを狙って攻撃してくる。
「いいぞ、俺はこのまま魔眼で弱体しつつ、クイーンの攻撃を抑える事に専念する。みんなはどんどん攻撃してくれ。」
「分かりました、行きます!『疾風迅雷』『暗黒剣』!」
マリーは更に攻撃力を上げてクイーンを攻める。その重い一撃はクイーンの鎧を切り落とし、肉を絶つ。再び視力が無くなって来たのか段々とクイーンの攻撃が空を切る。
「今よ、マリー!決める!『炎拳乱舞』!」
「はい!『クレセントムーン』!」
クロの必殺技である炎の拳で連続攻撃が決まる、そしてマリーの必殺技のクレセントムーンがクイーンを下から上へ真っ二つに切り上げ、その三日月のような軌道が血で染まる。こうしてクイーンは消滅した。
「よし、後はキングだけだ。今行くぞローズ!」




