46話 大賢者の塔 その7
今回はネタ成分が通常より多目かもしれません。
「くっ、殺せ。」
15層はオークとハイオークが出現した。冒頭のセリフはつい、ローズに言わせたセリフだ。後悔はしていない。
「で、このセリフに何の意味があるのだ?全く理解出来んのだが。」
「ごめん、ちょっとした悪ふざけです。許してください。」
俺は謝った。ローズとそして”みんな”に。だってファンタジーモノでオークにエルフの騎士って言ったらこのセリフになるんだもん。俺の中の称号が暴れたんだ。許して欲しい。
「よし、じゃあ戦闘開始と行こう。人型のモンスターだからまずはゴブリン達と同じような形で対応してみようか。」
オーク達は剣や棍棒、槍を持って襲い掛かってくる。それぞれが盾で受け止め、回避し、反撃する。オーク達は約2m程、すこし大きな人間という感じで急所も似ている。その分かなり戦いやすいモンスターだ。
「マリー、いいかいこいつらは悪い豚さんだ。だから手加減なんてせずに思い切りぶった切るんだ。」
「わ、わかりました!やれます!」
マリーは悪い豚さんは死んでください。とか言いながら剣を振っている。本当は彼女のような幼女エルフにオークと戦って欲しくはないのだが、こればかりはしょうがない。
クロは急所を蹴り上げ下がってきた顔面を殴って粉砕している。思わず俺のがキュっとなったのは言うまでもないだろう。だからと言って同情は出来ないので俺は確実に首を落としていく。
「意外と楽に倒せたな。」
ローズが言う通り、思ったよりも楽に倒す事が出来た。さすがに15層ともなれば下位のオークでもLvがそれなりに高い、その中でこれだけ圧勝出来た事には意味があるだろう。
その後もオークとハイオーク達をバッタバッタと殴り、切り殺して行く。
「ここはなんだが妙に気分が悪い、さっさと次の層へ行こう。」
ローズの発言により、すこし休憩してそのまま16層へ向かう事になった。向かった16層では大きな亀が歩いていた。こいつはジャイアントトータス、トータス種の一番基本になるモンスターで大きな甲羅は高い防御力と魔法耐性を持ち、体力が高い為に見つけたら回避するのが常套手段となっている。
ただし、外の世界であれば苦労して倒す者もいる。その性質上甲羅は防具や盾として高い性能を持つのだ。しかしここは塔の中、倒しても素材を入手する事は出来ない。だとすれば取るべき手段は1つだろう。
「よし、ここは戦わずに次の層へ向かおう!」
「う、うむ。それも有りだとは思うのだがな・・・。」
「そうだね、実際戦わないっていうのはちょっと思う所はあるかな。」
ローズとクロは複雑な表情をしている。確かに戦わないという選択を取るべきか迷うところではある。
「どうして?戦わないで済むならそっちの方がいいんじゃないの?」
しかし、マリーの純粋な一言によって俺達の方針は決まった。
「マリーの言う通りだ。戦わないで済むんだから、今回はまっすぐに階段を目指そう!」
こうして俺達は敵に見つかったら走って逃げるを繰り返して階段まで辿り着いた。予想通り亀達の動きは遅く簡単に振り切る事が出来た。
「よし、じゃあ今日はもう休んで明日17層に向かおう。」
異変が起きたのは夜が明けようかという朝4時だった。テントの外から大きな音と振動が伝わって来たのだ、外に出るとなんと昨日振り切ったはずのジャイアントトータスが大量に向かって来ているのが見える。
「まじかよ・・・。やばい、みんな起きろ!」
「一体何だと言うのだこんな・・・。冗談であろう?」
外に出たローズは遠くを見て呆然としている。クロとマリーはまだ眠いようで目を擦っている、2人は寝ぼけているのか現状を把握出来てないようだ。
「兎に角、荷物を持って階段を駆け上がるぞ。さすがに階層を越えてまでは向かってこないはずだ!ローズ急げ!俺はクロとマリーを抱えて走る!」
「わ、わかった。任せた!」
俺とローズは慌てて無限収納へ荷物をしまい、2人を両脇に抱えて階段へと走り出す。かなり焦ったが何とか攻撃を受ける前に階段を上りきって17層へ到達する事が出来た。
「今のはかなり焦ったな。まさか追いかけてくるとは・・・。これは今度出会った敵は全て倒さないと危険だな。」
「そうだな。あのような事があるとはな。本当に何が起こるか分からない場所だなここは。取り合えず今は休もう。いきなりでまだ頭が混乱しているよ。」
「そうしよう。ここはスノーとイズミに警戒をお願いしてもう少し休んだ方が良さそうだ、クロは起きたけどマリーなんてまた寝てるし・・・。」
(ここは私達が見てるから、ご主人様達は休んで下さい~。)
「すまん、スノー、イズミすこしの間警戒を頼む。俺達はちょっとだけ休ませて貰うよ。」
こうして俺達はなんとか17層へ辿り着く事が出来たが疲れ果ててもう1度休む事にした。すっかり慣れたつもりだったが、まだまだ塔は俺達の理解を越える場所だった。
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