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45話 大賢者の塔 その6

 11層でのマリーの騎乗訓練がひと段落して、今は12層に来ている。この12層では大羊族が待ち構えて居た。こいつらは全長5mを超える大きな羊で常にオスとメスがセットで行動している。動きは鈍いが頑丈で攻撃力がある、更にどちらか片方を倒すと残った方が怒り攻撃力が大幅に上がる特性を持っている。


「いいか、こいつらは片方だけ倒すとパワーアップする厄介な奴らだ。俺とローズがそれぞれ抑えておくからクロはローズの方に、マリーとイクス、ゴブリンズは俺の方に攻撃して出来るだけ同時に倒すようにするんだ。」


「「「了解!」」」


 それぞれが動き出し、大羊と戦闘を開始する。クロの攻撃はさすがに大きなダメージを与えているが、ゴブリンズの攻撃では殆ど効果がない。こっちはマリーの剣が主なダメージ源になる。

 こういった耐久力がある敵の場合はマリーの両手剣の能力が非常に役に立つ、あの剣には切りつける度に相手の視力を奪う特殊能力が付加されている。


ーブモォォォ!


 大羊が暴れだした、どうやらマリーの攻撃で殆ど視力をなくし闇雲に暴れているようだ。こうなればいつでも止めを刺す事が出来る。ローズとクロの方を確認するとあちらもいつでも倒せる状態になっていた。


「よし、そろそろ止めだ。1,2,3で行くぞ!1,2,3・・・!」


 ドゴッ!ザシュ!という音と同時に大羊は消滅していく。どうにか攻撃力が上がらない様に同時に倒す事が出来たみたいだ。


「よし、今の感じで行こう。次からも同じパターンで倒すぞ。」


「了解だ、それにしてもマリーは強くなったな。安心して見ていられるぞ。」


「ありがとう。ローズおねぇちゃん。えへへ・・・。」


 マリーは嬉しそうに微笑む。確かにマリーは強くなった。今の大羊も外の世界ならそれなりの強さを持っている。そいつを簡単に切り倒すのだから、すこし前まで全く戦った事が無かったなどとても信じられない。元々才能があって、それがしっかりと開花したのだろう。これからもどんどん強くなれるはずだ。


 12層は問題なさそうだったので普通に進み、そのまま1泊して13層へと入った。13層はカラースライムと呼ばれる各属性を持ったスライムの上位種とLvの高いホブゴブリンが大量に居た。

 こいつらは強さこそ問題ないが、兎に角数が多かった。そして武器や魔法が多種多様な為にそれぞれに対応する手間を取られた。通常のフィールドであればその場所の特性を持ったモンスターが現れるので対応は楽に出来る、だがここでは全ての属性と武器を持った敵と同時に戦わなければならない。

 それぞれの力が弱くてもあらゆる方向から来る全く違う攻撃に対応するのはなかなかに骨が折れる。俺達は兎に角最短の距離を走って階段へと向かうことになってしまった。


「ここは、予想以上に面倒だったな・・・。」


「全くだ、いくら威力が低いとは言え、上下左右から全く違う属性の魔法が飛んできたのにはまいったぞ。」


「まぁ、いい訓練と勉強になったな。弱いからといってスライムをバカにしては駄目だった。」


 俺とローズは敵の攻撃を受け止める盾役でもあるので、13層での戦闘を思い返しうんざりした表情で話し合っていた。


 14層ではジャイアントバイパーとダークコンドルと戦う事になった。全長3mを超える蛇と空を自由に飛ぶ鳥の連携は非常に厄介だった、いくら見晴らしがいいとは言え地上を這う敵と空中から襲ってくる敵を同時に相手をするのは難しい。


「くそ、ここはゴブリンズでは相性が悪いか。すまん、一旦帰還だ!ここはスノーに頼む!」


(空の敵は私に任せてぇ!あんな汚い鳥には負けないよ!)


 スノーはいつもの小鳥の姿ではなく、嵐鳥の姿でダークコンドルと対峙する。スノーはダークコンドルよりも早く飛び、羽根吹雪とアイスアローで次々とダークコンドルを打ち落としていく。

 

(蛇ならオレに任せておけ!)


 地上ではイクスがジャイアントバイパーに向けて雷の雨を降らせる。どうやら蛇族は雷魔法に弱いようで大きなダメージを受けた上に麻痺して殆ど動けないでいる。


「イクスちゃん、ありがとう。止めは私に任せて!」


 殆ど動けなくなったジャイアントバイパーに対して、イクスに乗ったマリーが迫りその首をどんどん刎ねて行く。今ではしっかりと息のあった連携を見せている。実際イクスの高速移動と雷魔法を使った麻痺、そこにマリーの両手剣による長いリーチと高い攻撃力はかなり相性が良く、無類の強さを発揮しているように見える。

 イクスは俺やローズが騎乗してもかなりの戦闘力を発揮する。最初に会った頃から人を乗せての戦闘は上手かったが、伝説種に進化してからは更に強力になったと思う。強力な雷と短時間なら空を駆けるその力はこういったフィールドでは圧倒的な力を発揮する。


「こうなると全員の馬が欲しくなって来るね。マリーには是非伝説の馬ユニコーンに乗って欲しいな、見つかればだけど・・・。」


(厳しいであろう、ユニコーン我々ホース種では伝説の存在だ。)


「そうだよね。う~ん。それでもやっぱりみんな用に馬は欲しいなぁ、塔の攻略が終わったら探しに行こうか。」


「確かに騎士たる者、自分の馬は必要だな。」


 ローズはかなり乗り気のようだ。マリーも騎士だし、これは本格的に馬を探した方が良さそうだな。ローズはペガサス、マリーはユニコーンが理想だなぁ。クロは・・・イズミでいいかな。想像してもイズミにしがみ付くクロしか浮かんでこないや。


「よし、とりあえず馬の話しは置いといて。先へ進もう。どっちにしても塔から出ないと召喚獣として契約出来ないしね。」


「「「了解。」」」


 俺達はサクサクと出てくる敵を倒し先へと進んで行く。13層が面倒だっただけに、こうやって対応が楽な敵はやりやすくていい。

 ほとんど苦労すること無く階段まで辿り着いた。その日は寝るまで馬の話しで盛り上がったと付け加えておこう。

お読み頂きありがとうございました。

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