44話 大賢者の塔 その5
10層でレッサードラゴンを倒した俺達は1日休息を取り、11層へと入った。そしてそこには草原が広がっていた。
「おー、見渡す限りの平野だな。よし、スノー、イズミここで一旦帰還してくれ。ここからはイクスとゴブリンズを召喚しようと思う。」
(了解だよ、また呼んでねぇ。)
スノーとイズミを帰還させイクスとゴブリンズを呼び出す。この広い草原であればイクスの機動力と雷魔法が生かせるし、ゴブリンズも三位一体の攻撃が出来るので地形的な不利が無くなる。
どうしてもスノーが最初の召喚獣でかわいいし、種族的なメリットが多いため、ゴブリンズの出番が少なくなっている。出来る限り平等になるように召喚するのはなかなか難しいのでこういう機会はゴブリンズを呼んで上げたい。
(主様、お久しぶりでございやす。召喚ありがとうございます。)
ゴブリンズの一郎が代表して発言し、3人は膝をつく。
「あまり呼び出せなくて不便を掛けるな、ここでは思い切り暴れて強くなってくれ。」
「ジンにぃ、その子達は?」
マリーがローズの後ろに隠れてゴブリンズを見ている。見た目は強そうなゴブリンだからちょっと怖いのかもしれない。あ、最近マリーは俺の事を「ジンにぃ」と呼ぶようになった。地球で弟は居たけど妹は居なかったのでなんだがくすぐったく感じる。だけどそれがいい。
「マリーはこいつら初めてだっけ?ゴブリンの一郎と二郎、それと花子だよ。こいつらは3人で1人の扱いでちょっと特殊な召喚獣なんだ。怖くないから仲良くしてね。ゴブリンズもマリーに優しくしてあげてね。」
(((マリーの姉御、よろしくお願いしますします。)))
「よ、よろしくです。」
マリーはローズの後ろに隠れたまま頭を下げた。これが計り知れない妹力、俺はもうメロメロである。
「さて、マリーはイクスに乗ってもらう。騎士として騎乗での戦闘訓練も必要だからな。イクスはいつもより優しくゆっくり動いてやってくれ。」
(了解した、主よ。マリーよ共に行こうぞ。)
恐々とイクスに乗るマリーを見て萌えた後、草原を進み始めた。どういった作りになっているか分からないのでまずは扉からまっすぐ北に進む事になった。
草原を進んで最初に出会ったのはホワイトライオンの群れだった。こいつらは高い攻撃力と連携、そして土魔法が得意な種族だ。オスとメス合わせて10匹が息のあった攻撃を仕掛けてくる。
「ローズ、挑発を頼む。クロはローズと連携。ゴブリンズは全員で1匹に当たれ。マリーはイクスに雷撃を使わせて怯んだ所へ切り込むんだ。落ち着いて1匹づつ確実にやるんだぞ!戦闘開始だ!」
「来い、大きいだけの猫共、『挑発』!『不撓不屈』!」
ローズの挑発に対し全体の意識がそちらへ向く。そしてまず2匹が先行して突っ込んでくる。ローズはそれを盾で受け止める、そこへ一郎が1匹だけに挑発を使い脇へ引っ張って行く。
「グギャギャ!(挑発!)」
「よ、よし。イクスちゃん、雷撃を後ろの集団にお願い!」
バリバリバリ!っとイクスの雷撃がホワイトライオンの集団へと落ちる。そこへ駆け出し、マリーはイクスの背中の上で両手剣を真横に構え、すれ違いざまに振りぬく。ザシュ!っと音をたてホワイトライオンが1匹消滅した。
「いいぞ、みんなその調子だ。確実に倒して行くんだ!」
俺は全体の様子を見ながら指示を出し、敵に弱体効果のある魔法を掛けたりと全体を支援する。このメンバーで広い場所で戦うのは初めてと言ってもいい。出来るだけ全体の動きを把握して上手く連携して戦えるように指示を出す必要があるのだ。
ーグルルゥァ!
ホワイトライオンのアースボールが俺目掛けて飛んでくるが落ち着いて回避し、アースボールを打ち返す。ギャン!っと鳴き転がるホワイトライオンへイクスが駆け寄り、マリーが止めを刺す。マリーも段々と戦闘中に周囲の状況を見る事が出来るようになってきたようだ。
「いい動きだマリー!よく見ていたな!」
マリーはそのまま別のホワイトライオンへと駆け出し、次々と切り伏せて行く。ゴブリン達も2匹目を倒し終え、残るはローズとクロが戦っている1匹のみ。
「みんな倒したようだな。では、こちらも止めと行こう!ハッ!」
周囲を確認したローズは押さえていた最後の1匹を切り伏せた。これで戦闘は終了したかと思ったのだが、その時ゴブリンズから悲鳴が上がる。
「ワームだ!地中にいるぞ!警戒しろ!」
ワームは地中に潜っているミミズのようなモンスターで音を頼りに地中からこちらを狙ってくる非常に厄介な奴だ、強さ自体は大したことがないのだが不意を疲れて怪我に繋がりやすい。
「確認しました、地中に3体居ます!ゴブリンズを狙っているようです!」
体長1m、胴回り30cm程のワームが勢いよく地中からゴブリンズに向かって飛び出てくる。ゴブリンズは攻撃を喰らってしまったが、その瞬間を狙って俺とローズ、クロがワームを攻撃する。ワーム達は一撃で消滅していった。
「大丈夫か?一郎、二郎、花子。」
(大丈夫です。このくらいなら花子の回復で問題ありやせん。油断しやした。)
実際始めての場所でワームの出現を完璧に読む事は難しい。地中に居る間は見えないので人間には意識しづらいのだ。だが、出ると分かっていれば対策も出来る。ここから先は簡単にワームの攻撃を喰らう事はないだろう。
「クロ、この先は地中も警戒を頼む。俺達も補佐するからな。」
「任せて~最近敵を見つけるの上達した気がするんだ~。」
頼もしい限りだが、実際上達したと思う。今ではかなり正確に敵の位置と数を把握出来ているみたいだ。Lvが上がってステータスが上昇しているのも一つの理由かもしれない。
「よし、じゃあみんな気をつけて進もう。」
その後、周囲を索敵しながら進んだ為次の階へ向かう階段を見つけたのは21時を過ぎてからだった。どうやら塔の中は太陽の位置が変わらない擬似空間になっているようで、最初にそれに気が付いたのはマリーのお腹が鳴った時に時計を確認すると15時だった時だ。
疲れ果てた俺達は軽い食事を済ませてすぐに就寝した。そしてその日から3日程をマリーの騎乗訓練にあてて11層で過ごす事になった。
お読み頂き、ありがとうございます。
初投稿から約2週間、総PVが1万を超えていました。これからも頑張ります。




