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43話 大賢者の塔 10層

 9層はブラックパンサーが1匹から5匹と複数で襲って来た。こいつらは素早い上に攻撃力が高い、魔法等は使ってこないが純粋に前衛としての能力は高い。マリーの両手剣では対応するのがすこし辛そうだった。


「ダメです。早すぎて捕らえ切れません・・・!」


「落ち着けマリー。敵が早いのなら遅くすればいい、お前は闇魔法のスロウを覚えてるだろう?それを使って相手の行動を阻害するんだ。そうすればちゃんと倒せる!」


 マリーは素早い詠唱からブラックパンサーに向けてスロウを唱える。その途端にブラックパンサーの動きは鈍り、マリーの両手剣が当たり始める。


「あ、あたりました!」


 当たってしまえばマリーの力で深い傷を負わせる事が出来る、当たり所が良ければ一撃で倒す事だって可能だ。

 俺達は進みながらマリーにすこしづつ経験を積ませている。何事も初めてから上手く行く訳がないし、戦闘に置いての経験と慣れは必要だからだ。


「上出来だ。よし、残りをさっさと倒して進むぞ。」


 クロは疾風迅雷を発動し、凄いスピードでブラックパンサーの懐に入る。そしてそのまま殴る、蹴る、そして叩きつける。あっと言う間にブラックパンサーを倒していく。

 俺達の中で一番のスピードを誇るクロに掛かればどんな敵でもノロマに見えてしまう。そしてその光景を口を開けてマリーが眺めている。


「マリー、誰にだって出来る事と出来ない事がある。俺達はパーティーなんだからみんなで足りない部分を補って行けばいいんだよ。わかるね?」


「はい。私もっと頑張って強くなります!」


 とても健気なマリーの頭をみんなが撫で回し、奥へと進んで行く。



 9層ではマリーの修行という事でブラックパンサー達と2日程連戦し、今日はいよいよ10層に挑戦する。俺達の予想ではここでボス戦となるはずなので、昼頃までゆっくりと休息を取り、進むことになった。


「さて、みんな行こうか。もしボスじゃなくても油断せずに、もしボス戦だった場合はしっかり気を引き締めて戦おう。」


「「「はい!」」」


 10層に入るといつもと雰囲気が違った。それまでは一般的な石造りの迷宮の通路という感じだったものが、普通よりも黒い石で出来た通路になっていた。

 これまでとは明らかに違う事で俺達はゴクリと喉を鳴らし、奥へと進んで行く。そして300m程進むと大きな扉が現れた。


「これは・・・いるな。みんな準備はいいか?」


「大丈夫だ、行こう。」


 ローズが返事をし、他の2人と2匹も頷く。マリーはすこし震えている、だけど止まる訳には行かない。


「マリー大丈夫だ、君は強くなった。そして俺達はみんな強い。」


 マリーに声を掛けて扉を開けると、そこにはレッサードラゴンが居た。そう、原始の迷宮50層のボスでもあったドラゴンの下位種だ。


「こいつは・・・。予定変更だ、ここは俺とクロとローズの3人でやろう。あの時からどれだけ強くなったのか試すいい機会だ。すまないがマリーは見ていてくれ、スノーとイズミはしっかりマリーを守ってやってくれよ。」


「うむ。私達の修行の成果を見せてやろうじゃないか。」


「あれからわたし達強くなったもん、瞬殺だよ。」


 そう、俺達は強くなった。自信だってある、あの時よりも楽に倒す事が出来るはずだ。ここは大賢者の塔10層、ここでドラゴンが出てくるという事はこの先のボスは更に強いという事、こんな所で苦戦する訳にはいかないのだ。


「よし、行くぞ!ローズ頼む。クロ、俺達は最初から全力で攻撃するぞ!」


「任せろ!いくぞトカゲモドキ!『挑発』!『不撓不屈』そして『ホーリー』!」


「GUGYAAAAAAAA!!」


 ローズはレッサードラゴンに挑発し、光魔法唯一の攻撃魔法であるホーリーを全力で撃ち込む。竜種の弱点という訳ではないがそれなりの効果はある。

 クロはいきなり獣化と疾風迅雷を使い炎拳乱舞で攻めている。どうやら本当に瞬殺する気のようだ、今の状態は通常の5~6倍の戦闘能力になっているはずだ。さすがのレッサードラゴンも今のクロに必殺技を使われたら大ダメージは間違いないだろう。


「俺も負けていられないな!『疾風迅雷』『魔眼』、そして『紫電一閃』!」


 俺は身体能力を強化し、魔眼で剣と自分自身へ雷を纏う。そして風の魔法の応用で速度を上げて必殺の一撃を叩き込む。


 レッサードラゴンは大きく咆哮するがローズとクロ、そして俺の攻撃で既に瀕死になっている。むしろ俺達の現時点での必殺技を万全の状態から使って倒しきれなかったと言ってもいいかもしれない。


「これで決める!『爆炎獣撃』!」

 

 クロが新しい必殺技である炎を纏った本気の右ストレートをレッサードラゴンへと撃ち込む。その瞬間激しい爆発がレッサードラゴンの身体を突き抜けた。そして身体に大きな穴が開いたレッサードラゴンは崩れ落ち、消滅した。


「よし、瞬殺完了だニャ!」


「いやいや、クロ。今の有り得ないよ。レッサードラゴンのお腹に大きな穴が開いてたよ?あんな危険な技いつの間に覚えたの?」


「ひそかに構想を練ってたんだよ!今初めて使ったの、わたしもビックリしちゃった。」


 クロは興奮してるのか猫族特有の語尾が出ていた。兎に角、俺達は強くなったと実感した。クロの宣言通りレッサードラゴンを瞬殺する事が出来た。

 マリーはあまりの光景に口を開け、ローズは頭を抱えてため息を吐いている。俺だってあれを見たらため息の一つだって吐きたくなるよ。


「だけどアレは獣化と疾風迅雷を使った状態で体力がないと使えないかも、反動も大きい見たい。」


 そう言いながら右手をプラプラさせていた。見た目はどうもなっていないが、すこしだけ傷めたようでローズから回復魔法を掛けてもらっていた。


「よし、兎に角お疲れ様だ!今日はここで休んで、明日から11層へ向かおう!」


 こうして俺達の大賢者の塔での始めてのボス戦は幕を閉じた。だけどこれから先の事を考えるとすこし不安は残っていた。

お読み頂きありがとうございました。

感想にご指摘を頂き、全話に段落と改行を取り入れて編集いたしました。


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