表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/60

42話 大賢者の塔 その4

 俺達は6層目に入って来た。そして入ってすぐに10匹を超えるホーネットが現れた。こいつら蜂族は単体ではそれほど強くないが鋭い尻の針に毒を持っている、その上集団で襲う事が多く空を飛ぶので冒険者には嫌われている。


「針に気をつけろ!まずは魔法で数を減らす。スノーは羽根吹雪だ。『魔眼』!」


 俺は雷の雨を降らせる。魔眼によって作られた小さな雷の矢をホーネットの集団に向けて放った。そこへスノーの羽根吹雪、クロのファイアストーム、イズミの風魔法が炸裂する。様子を見ていたマリーは辛うじて生き残った1匹へ向けて走り出し剣で切り捨てた。


「風魔法はあんまり効いてなかったけど、クロのファイアストームはいつもより効果があったみたいだな。弱点だったのかもしれないな。」


「そうだね、やっぱり虫って火が苦手なのかなぁ?」


「まぁ、よく効くなら使っていこう。俺も今回ばかりは雷撃より炎にするよ。」


 通路を進んで行くと今度はシープとホーネットが同時に現れた。シープの羊族はそのふわふわの毛で打撃に強い耐性を持っているが反面火魔法に弱い。特色は羊の歌という睡眠誘導のスキルだ、外ならば睡魔に襲われている間に逃げる事が多いのだが、この場面だと睡魔に襲われるとホーネットの毒針が飛んでくる危険がある。非常に厄介な組み合わせだが救いはどちらも火魔法が弱点という事だろう。


「イズミとスノーはシープを優先して狙え。俺とクロは火魔法で纏めて焼くぞ!」


「了解!いくよ、ファイアストーム!」


 バッっと敵の中央に炎の嵐が吹き上がる。俺とクロが同時にファイアストームを撃つ。その嵐が消える頃にはすでにマリーが残ったシープを沈めていた。ホーネット達はファイアストームで消し炭になったようだ。


「これでは私の出る幕がないな。」


 ローズは自虐気味に笑っていた。ここでは殆ど敵の攻撃を受ける事なく進んでいるので戦い足りないようだ。


「まぁ、そう言うなよ。攻撃を受けずに倒せるならそれが一番じゃないか。ローズの守りの力は本当に頼りにしているんだから。」


「そうだよ!ローズの盾がないとわたし不安になっちゃうよ!」


「すまんな、そういうつもりで言ったんじゃないんだが。」


 ぽりぽりと頬を掻くローズはちょっと困ったように言った。


 その日は順調に進んで早く階段に着いたが、先には進まず休息に充てた。


 次の日は7層に入る、そこはコウモリの巣のように大量のコウモリが相手だった。こいつらも数が多いだけの雑魚であり、全く苦戦する事無くその日の攻略を終える事が出来た。


 8層目。俺達はボスが来るかもしれないといつもより気合を入れて入ったがそこは普通の階層だった。敵はクローラーとバタフライの2種類。クローラーは麻痺効果のある糸を吐き、バタフライは混乱効果のある燐粉を使ってくる。


「てっきりボスが来ると思ったが、普通の階層だったな。」


「そうだね。どうやらボスのくる階層もパターンがある訳じゃないみたいだね、進んでみるまで分からないっていうのはちょっと厄介かもね。」


 クローラーの攻撃を受けつつローズが呟いた。それに答えながら敵を倒していく。昆虫系の敵はどうやら火魔法に弱いらしいのでここでも火魔法をメインに戦闘を行う。まだまだ苦戦という訳ではないが特殊な効果を持つ敵が出始めているので最初の戦闘は慎重にならざるを得ない。


「とりあえず、喋るなら倒してからにしよ。『ファイアボール』!」


 クロが普通の倍くらいあるファイアボールをクローラーにぶつけて行く、同時に2匹倒していた。ちょっと気が緩んでいたかもしれない、クロにお小言を言われてしまった。反省反省。


「ごめんごめん。はっ!っと。これで終了だね。」


 最後のバタフライを切り伏せて戦闘は終了した。その後は気持ちを切り替えて敵を焼き払い、切捨てながら進んで行く。


「う~ん、次は10層が怪しいよね。もしかしたら4層もボスじゃなくて単純に敵が少なくてちょっと強かっただけなのかなぁ?」


「その可能性はあるな。他の迷宮やダンジョンでもボスにお供はいても、同型が3体同時に出るなど聞いた事もないしな。」


 俺の問いかけにローズが答える。確かに学園の授業でも街の冒険者の話でも聞いたことがない。殆どの場合が10階層毎にボスが現れるのだ。稀に手下を従えたボスが現れるがどれも格下ばかりで全く同一のボスが複数同時に現れるなど学園の教科書にも出てこない。いろいろと思う所があるが、まずは10層に到達して実際にボスがいるか確認しないと分からない事ばかりだ。


「兎に角俺達はこの塔を攻略する事に変わりはないんだ、どこでボスが現れてもいいように気持ちの準備だけはしておこう。」


「そうだね。わたしももっと探索に気合入れるよ!」


「そうだな。私もしっかりと気持ちを高めておかねばな。先ほどはちょっとだけ油断して気が緩んでいたようだ。すまん。」


「大丈夫だよ、ローズおねぇちゃん。気にしてないよ!」


 ローズは申し訳無さそうに頭を下げるが、それは俺も同じだ。ボスに向けて構えていた分、どこかで気が緩んでしまっていたと思う。もう何度目か分からないけど気持ちを切り替えて進んで行く。


お読み頂き、ありがとうございます。

「転生先はトイレの妖精でダンジョンマスター」も本日更新しております。

宜しければご覧下さい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ