39話 そして大賢者の塔へ
一週間程しっかりと時間を取ってマリーの修行を行った。今ではかなり強くなったと思う、敵に対して怯む事もなくなり、攻撃に迷いもない。もう大丈夫だと判断して俺達は今、大賢者の塔へと向かって賢者の森を進んでいる。
「しかし、イズミはマリーに懐いたなぁ。相性がいいのかな?イクスもローズに心を許してるみたいだし、主としては寂しい所もあるな。」
(大丈夫だよ~マスターが一番大好き!)
(うむ、答えるまでもないと思っていたが、主は心配性なのだな。)
2匹が優しい。ちょっとうるっと来てしまった。
「イズミはもの凄く賢いのです。私の気持ちをよく分かってくれます。」
「と、とにかくみんなが仲良くなってくれて良かったよ。さて、そろそろ近いぞ、周りの空気が変わってきた。」
明らかに纏わり付く空気が違う。マリーは明らかに辛そうだ。多分強力な結界が張ってあるんだろう、ここまで来たら後戻りは出来ない。そして目の前の森が開けて俺達の目の前に現れたのは雲を突き抜けるような高くそびえる塔だった。
「やっとここまで辿りついたな。みんな、今までありがとう。そしてここからがスタートだ、これからも宜しく頼む!」
「あぁ、我等の想いは一つ。ジンと共に!」
全員で頷き、塔の扉に手を掛ける。
その瞬間、俺は見覚えのある金色の大きな門の前に立っていた。
「良くぞ大賢者の塔へ辿り着いた。信頼出来る仲間を得て更に強くなったようじゃな。よく頑張った。」
やはり目の前には創造神様が座っていた。なぜか懐かしい気分になる。
「頑張りました、丁度扉を開ける所だったのですが、このタイミングでの呼び出しは何の用でしょうか?」
「なに、あの塔の仕掛けの一つじゃ、資格があるかないかを判別しておるのじゃ。資格がない者が触れても何も起きんが、資格があればお主のようにこの場所へ来る事が出来る。現実での時間では1秒にも満たない間じゃがな。」
「なるほど、そういう事でしたか。是非期待して待っててください、最高の仲間達と必ず大賢者の塔を攻略しますよ。」
「ふぉっふぉっふぉ、自信があるのはいい事じゃ、期待しておるぞ。では、そろそろ行くがいい。今回はこれだけじゃな。」
「はい、では攻略後にまたお会いしましょう。」
門を潜ると、現実に引き戻され大賢者の塔に手を掛けていた。後ろを振り向いてみんなの顔を見る、そしてそのまま扉を開いた。
塔の中に入ると見た目は普通の迷宮のように見える、その時唐突に声が響いた。
「大賢者の塔へようこそ。諸君の健闘を祈る。全ての願いは最上階にある。見事攻略し、その手に希望を掴むのだ。」
「今のは?」
マリーが呟く。
「確信はないが塔の意思みたいなものじゃないかな。この塔は全てにおいて特別だからね、だから何が起こるかわからない。みんな油断せずに進もう。」
「はい!」と3人が気合の入った返事をする。
最初に出会ったモンスターはスライムだった。マリーが一撃で葬ったが特別な事は起きなかった、他の迷宮と同じように魔石だけを残して消えていった。どうやらこの塔も進むにつれて敵のLvが上がっていくようだ。
「なんだが普通ですね。」
「まぁ、まだ1匹しか会ってないからな、もしかしたらあいつも特殊な能力を持っていたのかもしれないし、油断せず行こう。」
それにしても次の階層への扉か階段が見つからない。敵は弱いけどかなり広く感じる、迷路状になっている分体感距離が長いのか、それとも本当に広いのか判断が難しいが俺の運で道を間違うことはほぼないので単純に広いのだろう。
「ちょっと、休もうか。マリー大丈夫?イズミに乗せてもらってもいいんだよ。」
「じゃあ、ちょっとだけ休ませてください、すいません。」
マリーにとってはじめてのダンジョンだし、ちょっと急ぎすぎたかもしれない。反省だな。ちょっと気持ちが前のめり過ぎたかもしれない。30分程休憩して攻略を再開した。その後1時間程で2層目への階段を発見して、その日はそこでテントを出して攻略を終了した。
「マリー、今日はどうだった?」
「はい、ちょっと疲れてしまって迷惑を掛けてしまいました。ごめんなさい。」
「大丈夫だよ、クロとローズも最初はそうだったからね。な、2人とも?」
「そうだぞ、私だって最初はマリーより早く根を上げたな。マリーはすごく頑張ったよ。お疲れ様。」
「わたしも最初はすっごい辛かった思い出があるなぁ。マリーちゃん、ゆっくり頑張っていこうね。わたし達がちゃんとフォローするから安心してね。」
「うん、俺達の攻略はまだ始まったばかりだからね。だからマリーはそんなに気負わなくて大丈夫だよ。十分助かってるし、俺達にはマリーがいなきゃダメだからさ。」
俺達は塔で向かえる最初の夜をみんなで話して過ごした。
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