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37話 新たな出会い

 俺達は中央大陸アースライトの中心にある大賢者の塔に向かっている。大賢者の塔は賢者の森の中心にあると言われているが非常に深く厳しい森の為、実際にあるのかどうかは噂話の範囲だという。王都から馬車で一週間、ようやく賢者の森の外側に辿り着いた。


「結構遠かったな、疲れた~。」


「馬車は肩凝っちゃうね、わたしも疲れたよぉ。」


「まったくだな、ジンの魔法で来れたら楽だったのだがなぁ。」


「まぁ、そう言うなよ。折角なら自分の足で向かって、目で確かめたいじゃないか。」


 すこし休憩してから俺達は森へと入って行く。しかし、俺は違和感に気が付いた。


「どうやらここは魔法が掛かってるみたいだな。スノーを飛ばして周囲を確認させたんだが、正確に判断出来ない、転移も妨害されてるみたいだぞ。さすがに簡単にはいかないな。」


「いいさ、どうせ自分達の足で向かう予定だったのだ。周囲を警戒しながら進もう。」


 この森は一番外側でもDランク、中心に向かうほど危険度が増すと言われている。


 その音に気が付いたのは偶然かもしれない、周囲を警戒していたからこそ俺の耳には微かな声が聞こえた。


「誰かの声が聞こえたかもしれない・・・こっちか?」


「気のせいじゃないのか?私は何も聞こえなかったぞ?」


 声が聞こえた方向に進むと大きな木の穴の中にボロ布を巻いた子供のような人影が見えた。


「おい、大丈夫か!?しっかりしろ!」


 俺はすぐに駆け寄り回復魔法を掛ける。どうやら種族はダークエルフのようだ、真理眼で視るとかなり衰弱している事が分かる、そしてそこには信じられないものが見えた。


「奴隷・・・。」


「なんだと、ジン。今何と言った!?」


「この子はダークエルフで、状態が奴隷になってる・・・。」


「そうか、ダークエルフか。ダークエルフとはかつて魔神が居た時代にエルフと魔人が混ざった種族の末裔と言われていてな。真偽は不確かなのだが今でも根強い差別を受けているのだ。」


 信じられない、だからと言ってこんな小さな子が奴隷になるなんて。


「恐らく隠れ住んでいた場所が見つかり強制的に奴隷契約を結ばれ、どこかへ運ばれる途中だったのだろう。多分、途中で賊かなにかに襲われここまで逃げ込んだのかもしれない。運が良かったとは言え、子供が一人ここに来れる訳がないからな。」


 俺達はその場でテントを張り、その日の移動を諦めた。少女はまだ意識を取り戻していない、今はローズが様子を見ている。


「あの子、どうするんだろうね、こんな所に一人きりで、かわいそうだよ。」


「そうだな、俺達に出来る事なんてあるのかな・・・。」


 翌朝になってやっと目を覚ました少女はゆっくりだが食事も取っている。ローズが身体を拭いて、クロの洋服を着せている。少女はクロと同じくらいの身長だがかなりやせている。殆ど何も食べてないのだろう。すこしだけ警戒する様子を見せているが、それはそうだろう、奴隷にされ一人でここまで逃げて来たのだ。


「私はローズ、君は?」


「・・・私はマリア。」


「マリアか、いい名前だ。年は?」


「・・・12。」


「そうか、一度ゆっくり休める場所まで行こう。着いて来れるかい?」


 少女は頷く。俺達は一旦近くの村まで戻り、宿屋へ入った。少女とローズを同じ部屋にしてもう1日休む事にした。その間マリアは寝て、起きて、食べて、そしてまた寝る。うなされてはいないようだが見ているこちらはつらい。多分マリアは行くところも帰る場所すらもないだろう。そして俺はマリアと話す事を決めた。


「明日、マリアが起きたら俺達に着いて来るかどうか聞こうと思う。」


「そうだね、そうしよう!それがいいよ!」


「私は危険だと思う。我等は今から大賢者の塔へ行くのだぞ?」


「大丈夫、それについては俺に考えがあるんだ。取り合えず明日本人の意思を確かめてからになるけどね。」


 そして次の日、俺達は1つの部屋に集まり話を切り出した。


「俺はジン、よろしくマリア。いきなりだけど君に話したい事があるんだ。」


「・・・なに?」


「俺は君の奴隷契約を解除する事が出来る。だけどそれには条件がある、俺は召喚士であらゆる存在と召喚契約を結ぶ事が出来る。つまり奴隷契約の代わりに俺と契約するって事になる。だけど俺は君を縛るつもりもない、君の意思に任せるつもりだ。だけど、もし可能なら俺達と一緒に来て欲しいと思っている。そして一緒に戦って欲しいんだ。」


「無理だよ、私弱いもん。それに戦った事なんてないよ。出来ないよ。」


 マリアは泣きそうな顔で下を向く。


「大丈夫だ、君には才能がある。自分には見えないかも知れないけど、俺の眼には君の可能性がちゃんと見えてる。信じてついてきて欲しい。」


「マリアちゃん、わたし達と一緒に行きましょう!わたしも最初はすごい弱くて、だけどジン君を信じて強くなったんです。だからわたしを、わたし達を信じてください!」


「マリア、私は騎士だ。騎士として君を守る、一緒に行こう。」


 マリアは泣きながらローズに抱きついている。彼女の心の中までは視る事が出来ない、彼女は今なにを思うのだろうか。ひとしきり泣いて数十分そのまま待った。


「・・・私、みんなを信じてみる。私を奴隷から解放して下さい。」


「分かった、じゃあ行くよ。不思議な感覚かもしれないけど大丈夫だからね。『契約』!」


 ポワッとマリアの身体が光り、そして俺と感覚が繋がった。


「ジンおにいちゃんを感じる・・・。不思議・・・。」


「これで君は奴隷じゃない。俺達の仲間だ。これから宜しくね、マリア。」


「はいっ!ジンおにいちゃん、ローズおねぇちゃん、クロ、宜しくお願いします!」


 満開の笑顔で微笑むマリアの顔は年相応に見えてとてもかわいかった。


「ところでジン、君にはマリアの何が見えたのだ?」


「あぁ、実はマリアにはもの凄い称号があったんだ。『逆境の騎士』っていって、効果は逆境から解放された者は通常の10倍の速度で成長する。っていうとんでもないものだよ。」


「つまり、マリアちゃんはわたし達の10倍経験値が貰えるっていう事?」


「あぁ、そうなるね。これはかなり凄いと思う。俺達がしっかり成長するまで守れば大賢者の塔を攻略する大きな助けになるよ。」


「私にそんな力があったんだ、全然知らなかった。知ってれば、こんな事に・・・ううん、今はおにいちゃん達と出会えたんだもん。幸せだもん。私がんばる!」


 俺はこのマリアの笑顔を守る為に頑張ると誓う。そしてその想いは彼女達も持っているだろう。


「じゃあ、明日はマリアも一緒に賢者の森に行ってLv上げだな!」


「がんばろー!」

お読み頂きありがとうございます。

次話では現在のステータス一覧を投稿する予定です。

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