29話 秘密の共有
それから俺たちは一緒に授業を受けたり食事をしたり、鍛錬をしたりと日々を過ごしている。そこで気が付いたのだが俺の修行はこの世界では非常識らしい、まずはクロとローズの普段の鍛錬方法を見せて貰ったのだが俺から言わせて貰えば普通すぎるのだ。分かりやすく言うと筋力トレーニングを大雑把にやって剣を振るという感じで効率的ではない。
(俺には限られた時間しかない、彼女たちにも強くなって欲しいし、きちんと俺の事を話しておくべきかもしれない。)
そう考えた俺は二週間程様子を見てから彼女達を呼び出した。
「今日は君達に大事な話があるんだ、これから話すことは誰にも言わないで欲しい、そして全て真実だよ。神に誓う。」
「えっと、どうしたのジン君?」
俺のいつもとは違う真剣な雰囲気にクロが不安そうな顔で俺を見る。ローズは黙って真剣な表情を作っている。
「ボクは、いや俺は普通の人間ではない。ある目的と使命を持っている。」
「目的と使命?それってわたし達が聞いてもいいものなの?」
「目的は今は言えないけど、使命は誰かの助けが必要で、俺は君達に助けて欲しいと思ってる。勿論聞いたからって絶対に手伝えとか強制する気はないよ。」
ゴクリ、クロとローズの喉が鳴った。そしてローズが重い口を開く。
「聞かせて欲しい。」
「俺の使命は神様から直接受けた依頼で、『大賢者』として『大賢者の塔』を攻略し、『魔神』を封印する事だ。」
「そして魔神の復活まで残りは約8年。学園の卒業と同時に大賢者の塔の攻略へ旅立つ事になる。学園へは仲間を探しに来たんだ。そして願わくばそれが君達であって欲しいと願ってる。」
「そんな・・・、魔神って神話の伝説じゃニャい、そんなのわたし達には無理だよ・・・。」
「ジンが嘘を言っているとは思わないが、それでもやはり・・・。」
2人の反応は予想通りだった、誰だって神話になるような魔神と戦えって言われればこうなると思う。だけどやらなきゃいけないし、俺には彼女達の支えが必要なんだ。
「2人の反応は当然だと思う、でも俺はやれると思うんだ。その為の力があるし、君達だってもっともっと強くなれる。俺が君達を守るし、俺が負けそうな時は助けて欲しいと思ってる。変な話だけど俺を信じて着いて来て欲しい。」
「ジン君・・・。」
「ジン・・・。私はもっと強くなりたい、大切なものを守れるように強くなりたい。君を信じれば私はもっと強くなれるんだな?」
「なれる。俺が君達を強くする。約束するよ。」
「わかった、私はジンを信じて着いて行く。よろしく頼む。」
ローズは真剣な眼差しで俺を見据え、はっきりと宣言した。
「わたしも、ジン君を信じる。よろしくお願いします。」
クロはまだちょっとだけ不安なのかもしれない、だけどその眼にはしっかりとした意志が見えた。俺は2人を信じて更に詳しい話をしていく。
「まず俺の事を全部話すよ。俺は前世の記憶を持っている、そしてこの世界も2回目なんだ。だから色々な知識やスキルを持ってる、そしてその中に『真理眼』っていうのがあって他人のステータスやスキルを見る事が出来る。」
「その力で君達の力も知ってる、そしてその力をどうやって伸ばしていけばいいかも分かる。今からそれを君達に見せるよ。」
「えっと、その前に1ついい?この世界が2回目ってどういう事?」
あ、そうかその辺りもちゃんと言っておいた方がいいのか。ちゃんと説明しておかないと彼女達も分からないよな。
「そうだな、俺はこことは違う世界で生きていたんだ。そしてその世界で資格を得て、神様から転生する権利を貰った。そしてこの世界にやって来たんだ。ここまではいい?」
クロとローズは頷く。
「つまり、ジンは厳しい修行の果てに神に会う資格を得たという事だな。」
まぁ、ちょっと違うが俺の名誉の為にあえて黙っておこう。
「その時はこの学園を卒業してから王立図書館の司書になってひたすら勉強して知識を得た。そして再び神様から転生する権利を貰って最初に生きていた世界へ戻った。そこでは武術とかの修行をしてこの世界にはない知識を得て、再び転生してこの世界に戻って来たんだ。」
「そこから数年が経って神様に認められて魔神を封印する使命を受けて、力を授かったという訳だね。」
「ちょっとわたしの頭じゃ複雑すぎて分からニャいよ・・・、とんでもない事だっていう事くらいしか理解出来ないニャ・・・。」
「まぁ、そんなに深く考える事じゃないと俺だって普通の人間なんだから。」
2人はなんとなく理解出来たのかな?それはこれからも話して行くしかないだろう。そして次は力について説明する事にした。




