26話 学園生活スタートです
「アリスティル様お久しぶりです。お聞きしたい事があるのですが、よろしいですか?」
俺は今この世界の女神であるアリスティルと『交信』している、学園長について聞いておきたかったのだ。
「オルガモ学園長の事ですね。彼は清い心を持っています、長い時間を掛けて賢者へと到ったこの世界での超越者です。信用に値する人間だと思いますよ。」
「ありがとうございます、聞くべきか迷ったのですが私はまだ未熟、冷静な判断が出来ませんでした。申し訳ありません。」
「良いのです。人は誰しも迷うもの、それを導くのも我ら神の務めですもの。」
「近いうちに運命の出会いがあるでしょう、あるいはすでに・・・。」
交信が終わり目が覚めると朝だった。今日は授業の初日なので遅刻する訳にはいかない、只でさえ目立ってしまっているのだ、これ以上なにかやらかすわけにはいかない。
「あれ、ジン君じゃないか!まさか隣の部屋だったなんてね、これから三年間よろしくね。僕は商人クラスだよ。」
部屋を出ると偶然ゼニスと再会した、どうやら隣の部屋だったようだ。この広い学園でどうやって探そうかと悩んでいたが運が良かったようだ。と、いうか『無限の運』がある限り、こういった面では幸運に巡り会うんだろう。
「ボクは冒険者クラスだよ。将来は冒険者になりたいんだ。」
「そうだったんだ、あんな凄い道具を思いつくくらいだから商人とか職人を目指してるのかと思ったよ。リバーシ凄い売れ行きだって父さん言ってたよ。」
予想通り順調に売れているようだ、一ヵ月後に代金を受け取るのが楽しみだな。ゼニスと軽く会話を交わして一緒に食堂で朝ご飯を食べる。その後は建物が違う為、ゼニスと別れて教室へと向かった。
「ジン君、同じクラスだね、これから三年間一緒に頑張ろうね。」
クロと同じクラスだった、もう間違いない。クロは運命の相手だ。だが、どことなく元気がないように感じる。昨日はもう少し明るかったと思う。
「クロ、何か元気ないみたいだけど、何かあったの?」
「実はわたし適正が戦士見習いだったんだ。戦いなんてやったことないし、魔術師になりたかったけど適性も火属性だけで・・・それでちょっと不安になっちゃってたのかも知れないニャ。」
「ニャ?」
「なんでもない、なんでもないよ!」
クロが慌ててる、今絶対語尾に「ニャ」って付いたよね、絶対言った。やっぱり猫獣人って語尾にニャが付くんだ、めちゃくちゃかわいい。本人は恥ずかしかったのかな。
「なんかちょっとだけ元気出たかも。話したらすっきりしたよ。ありがとね、ジン君。」
そう言って微笑んだ彼女の笑顔は前世で初めて会った時の笑顔と同じように輝いていた。
「それと、ジン君って凄かったんだね。召喚士なんて初めて聞いたよ。スノーちゃんってもしかして召喚獣なの?」
「あぁ、実はそうなんだ。元々は普通の小鳥だったんだけど、名前を付けてあげたらいきなりスノーの声が聞こえて、それでいつのまにか召喚士になってたんだ。」
「え~スノーちゃんとお話出来るんだ!いいなぁ!」
女の子らしくかわいいモノは好きみたいだ、完全に元気になった。
このクラスは50人程の人がいる。冒険者クラスが一番人数が多いので必然的に1クラスの人数も多くなってしまう。大体10クラス500人程いるみたいだ。それに対して教師は元冒険者が殆どだ、それぞれの授業を数人で担当するらしい。担任は1人、人族のイカつい戦士風のおっさんだ。念の為に全員『真理眼』で確認したが怪しい人物はいなかった。
ただ、注目したいのはクロの称号だ、なんと『戦神の注目』を持っていた。どうやらこの称号は普通の鑑定では見えないようだ、効果は「戦闘において秘められた才能を持つ。開花する事でステータスと攻撃力に大きな補正を得る。」となっている。
「将来が楽しみだな。」
「何か言った?」
「いや、何でもないよ。学園生活が楽しみだなって思ってさ。」
さて、いよいよ初めての授業だ。何するんだろうな。




