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24話 ゼニスとの出会い

 山賊との一件以来、旅は順調そのものであった。何事もなく王都へ到着した俺は入学式まで宿屋をとり、街を散策することにした。


「とりあえず入学式までの1週間はおいしいものでも食べてゆっくりしよう。」


(おいしいものいっぱい食べたいですぅ~。)


 スノーは食いしん坊なので今から楽しみでしょうがないらしい。スノーは見た目は小鳥なので肩に乗せて歩けばそこまで違和感はない。何があるか分からないので念の為に召喚してある。一応、今後もペットという形で召喚したままにする予定だ。他の子達は今のところお留守番になりそうなので、学校が休みの日は転移でドラゴンと出会ったダンジョンへ行きストレスを発散させる予定だ。


「あ、そういえば学園で使う道具を用意しないといけなかったんだ。」


 街を散策しながら道具屋でペンやノート、部屋で使うランプ等を購入していく。魔法で代用出来るものが多いのだが、やはり周りの目があるので最低限の格好だけは用意するつもりだ。


「君も今年入学かい?」


 どうやら新入生のようだ。同じように道具を手に持っている。


「あぁ、そうだよ。ボクはジン。ドゥッカ村出身、よろしくね。」


「僕はゼニス、ここはお父さんのお店なんだ。これも何かの縁だしオマケするように言っておくよ。」


「ありがとう。助かるよ、よかったら王都を案内してくれないかい?着いたばかりでおいしいご飯屋さんを探してたんだよ。」


 ゼニスは人が良さそうな少年だ。あまり強そうではないけど賢そうな印象を受ける。お父さんはすこしお腹が出てるけど優しそうなおじさんだった。


「ここがオススメだよ。すっごく美味しいんだよ。」


 ゼニスに案内されたのはなんと泊まっている宿屋の隣だった。宿屋の親父さんが経営してるお店で王都の庶民には一番人気のお店なんだとか。確か宿屋の食事はここで摂れるらしいので凄く楽しみである。


「ところでその鳥は?凄く懐いてるようだけど。」


「この子はスノー、小さい頃に怪我している所を拾ってそれからずっと一緒に居るんだ。食いしん坊で元気なかわいいヤツさ。」


「そうなんだ、『従獣の印』がないから気になったんだ。王都の中でペットを連れて歩く時は従獣の印を付けていないと罰せられる可能性があるから持ってないなら家で買っておいた方がいいよ。」


 む、そんなのが必要だったのか。確かに街中に狼が現れたらパニックになるし、ちゃんと付けておいた方が良さそうだな。


「知らなかったよ、教えてくれてありがとう。あとでお願いするよ。」


 ご飯は凄く美味しかった。米がないのが残念だけどスープも肉も味がしっかり付いていた、村とは違って調味料が豊富なのかもしれない。後で買って置かないといけないな、豊かな生活は豊かな食生活からだからな。


 その後一通り街を案内してもらってゼニスのお父さんの道具屋まで戻ってきた。


「従獣の印ってこのタグみたいなやつか。使い方はどうやるの?」


「まず、ペットの血を垂らして、そこにジンの魔力を流し込むんだ。それで登録は終わりだよ。」


 なるほど、結構簡単なんだな。後は調理道具も買って行こう、王都には調味料や食材が沢山あったから美味しい物がいっぱい食べれそうだ。実は最初の人生のおかげで自炊はある程度出来る、いざとなればシルクもいるし『無限収納』に作り置きしておけばいつでもどこでも温かいのが食べれるからね。


「あとは調理道具と、何か遊び道具があれば欲しいんだけど。部屋の中でみんなで遊べるようなやつが」


「調理道具は一通りあるけど、遊び道具ってチュロスならあるけど、ちょっと高いし、子供が遊ぶのにはちょっと難しいよ?」


 そうだった、この世界では娯楽があまり進歩してないんだった。チュロスは現代でいうチェスと将棋が混ざったようなやつで主に貴族の遊びとして広がっている。と、いう事は俺のあの計画を発動する時かもしれない。


「そうだよね、実はボクが考えた遊びがあるんだけど、よかったらやってみない?まだ時間あるし、宿に置いてるから取ってくるね。」


 そう、計画とは現代玩具や現代調味料の販売だ!前世と地球で色々調べて来てるから絶対上手くいくと思う。やっぱり安定した収入は必要だもんね。


「おまたせ、これねリバーシっていうんだけど。簡単だから説明しながらやってみようよ。」



「すごいよジン!簡単だし面白いし!こんなの初めてだよ!ちょっと父さん呼んでくるから待ってて!」


 やはりリバーシは安定だな。これをここで売ってもらって売り上げの一割を貰う契約を結べば安泰だな。


「ジン君といったか、これは素晴らしいよ、絶対に売れる!うちで売ってもいいだろうか?そうだな・・・一割、いや売り上げの二割を払うよ。頼むうちで売らせてくれ!」


 ゼニスの親父さんが凄い勢いで頭を下げてきた。個人的には一割でよかったんだが、この反応を見るとかなりの利益が見込めるのだろう、それならお言葉に甘えて二割貰ってしまおう。早速契約と商談の開始だ。


「お願いします。ボクはこれのアイデアと引き換えに売り上げの二割で大丈夫です。よろしくお願いします。」


「ありがとう、ありがとう!そうだな価格は10,000ギルでどうだろうか?少々高いかもしれんが確実に売れると思うんだ。」


 10,000ギルか、宿屋が一泊二食で5,000ギルだし妥当な値段だろうな。ちなみに『アースライト』の世界でのお金の単位はギルで

1ギル=鉄貨1枚

10ギル=銅貨1枚

100ギル=大銅貨1枚

1000ギル=銀貨1枚

10,000ギル=金貨1枚

100,000ギル=白金貨1枚

1,000,000ギル=黒金貨1枚

と、なっていて世界共通貨幣だ。ちなみに家の月の収入は200,000ギルくらいだった。平均よりすこし上くらいだと思う。


「では、それでお願いします。代金は毎月ここに取りに来ますね。」


「いやぁ、ありがとう。これからもゼニスと仲良くしてやってくれ。」


 これで収入を得る事が出来る。三年生になってダンジョンに入る前にもっといい剣と盾が買えるな。


「じゃあゼニス、また学園で会おう。」


 こうして俺の王都での生活がスタートした。

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