17話 村での日常
「今日はみんなで冒険に行こうぜ!」
ある日、村のガキ大将的なポジションのダブロが村の子供を集めて俺の1つ上だから今年で10歳かな、最近大人の狩りに付いて行ってホーンラビットを狩ったらしい。この頃その話ばかりするからもしかしたらと思っていたが案の定調子に乗ってしまったようだ。
普通に子供だけでモンスターを狩るのは無理だからここは大人として止めないといけないな。
「ダブロにいちゃん、危ないよ。子供だけで森に入っちゃいけないんだよ。」
「大丈夫だって、俺にかかればモンスターなんて楽勝さ!」
ダメだ、完全に勘違いしてる、その上周りの子供達は外に行きたくてダブロに同調してる、絶対に危険だ。
「それに俺この間見たぜ、ジンが一人で森に入るところ。」
げっ、スノーに警戒してもらいながら入ってるのにどこかで見られたのか?この流れはまずい。
「え~ジンが行ってるならおれも行ってみたい。」「わたしも~」
案の定みんなが騒ぎ出した。行ってないって言ったけどこれは止めるのは無理そうだぞ。
「よし、じゃあみんな武器を持て!行くぞ~!」
子供達が練習用の剣や槍、包丁、木の棒を持ってダブロに続く。木の棒じゃ、絶対無理だろ・・・。とりあえずスノーに上空から警戒させて、あとはスライムでも倒させれば大人しく帰ってくれるだろう。
(頼むぞスノー、空からスライムの方へ誘導してくれ、強いモンスターがいる方向は絶対に避けたい。)
(了解ですぅ~。)
「はっ!ほっ!おりゃー!どうだ!」
ダブロは予想に反してスライムを楽勝で倒してしまった。それで更にテンションが上がって森の奥へと進んで行く。まだ大丈夫みたいだが、このまま何事もなく終わってくれないだろう。
「この辺は弱っちいヤツばっかりでつまんねぇな、みんなもっと奥まで行こうぜ!」
「ダブロにいちゃん、そろそろ帰ろうよ。あんまり遠くへ行くと遅くなっちゃうよ。」
森に入って少なくとも2時間は経ってるはずだ、そろそろ戻らないと本当にまずい。ダブロ以外の子供達は段々不安になってきたようで何人かは帰ろうと言っている。
「ん~しょうがねぇな、帰りながらモンスター探すか。」
ダブロも満足したのか何とか帰る事に納得してくれた。
「あっ、見て!あそこにおいしそうな果物が生ってる!」
女の子が果物の木に向かって急に走りだした。その時だった。
(ご主人様、ゴブリンが4匹あの木に向かって来てますぅ!)
くそ、嫌な予感が当たってしまった。どうする、4匹はさすがに不味い、魔法を使えば1人でも倒せるが子供達が見てる前で使う訳にはいかない。で、あればこっそりゴブリンズを召喚して後ろから回りこませるしかないか。考えてる時間がない、それでいこう。
(ゴブリンズ、あの木の向こうにゴブリンが4匹いる。お前たちで抑えてくれ。)
(わかりやした、俺らにお任せくだせぇ。)
よし、とりあえずはこれでいい。あとは俺たちも女の子を追いかけて出来るだけ安全を確保しよう。
くそ、駄目だ。ゴブリンが1匹こっちに走ってくる。
「ゴブリンだ!ダブロにいちゃん、あそこ!」
まずはみんなの意識をゴブリンに向ける、みんなは動けない。俺はスキルを使わずに全力で走り出す、ダブロもかろうじて動けているみたいだ。とにかく子供の力の範囲でやらないといけないっていうのは面倒って事は分かった。俺は不自然な振りでゴブリンの足を切りつける。
「ダブロにいちゃん、今だ!」
ダブロの剣がゴブリンの左肩を切る。だめだ、致命傷になってない。ゴブリンの剣がダブロに振り下ろされる、俺はすこしだけ本気を出してゴブリンの首を刎ねた。
子供の力でゴブリンの首を断ち切るなんて不自然だったが状況が状況だっただけに仕方ない。きっとうまくごまかせるだろう。他の3匹はゴブリンズが上手く倒したようだ。
「みんな無事だったみたいだし、早く村に帰ろう。」
動けない子供達に声を掛けてなんとか歩きだす。あれだけ怖い思いをすればもうモンスターを狩りたいなんて言わないだろう、ちょっと刺激が強かったかもしれないが子供達にはいい経験になったはずだ。
(ゴブリンズありがとう、先に『帰還』してくれ。スノーは村までの誘導頼む、出来るだけ近道で帰ろう。)
村に帰ると大人たちからの説教が待っていたが誰も怪我をしていなかった事もあり二度と子供達だけで森に行かないと約束して許してもらえた。
俺の日常はこんな感じでイベントに満ちている。
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