228 神罰
◆ リュース・ギルドルーム【崩壊したアトリエ】 ◆
御覧ください。この、惨状を……。
『(´;∀;`)』
『自業自得です。あんなものを管理もせず放置していたツケです』
『す、すま――』
『るっせぇ喋んなゴリラァ!!!』
『ごへっ……』
「ボロボロになっちゃった……」
おにーちゃんの集めたおもちゃは全てが無惨にスクラップ化、サリーちゃんの製薬設備が破壊され使用不可、他にも重撃槌と大砲用の爆薬製造設備及び爆薬が誘爆して消滅、鍛冶・鋳造設備が崩壊。そして私はクーガーさんが慌ててぶん投げたカエル爆弾のせいで死亡。更に何をトチ狂ったのか死体安置所に入ってたローレライの地獄結晶を消費して復活しました。許せないねえ……。
『――――サブクエスト【崩壊したアトリエの修理】が発生しました』
「…………はぁ~~~」
極めつけがずーーっと表示されてるこのサブクエスト受注画面。もう最初っからここ吹っ飛ぶ設定がされてたんじゃないかって思えてきたね。一応内容を確認したら、各設備の復旧に必要な素材を持ってきて、ついでに美味しいお菓子を置いて行けば次の日には直して貰えるらしい。誰かに。やっぱり居るじゃん、妖精さん。ちなみに修理進行中は立入禁止になるらしいから、修理タイミングには注意しましょうって書いてある。はぁ……。
「あの……。一応、直せるみたいなんで……」
『へっ!? ほ、本当!? リンネちゃぁ~ん、直したい直したい~!!』
『おおお、直せ――ごへえっっ……!!』
『あ?』
『m(__)m』
『しかし、直せるとは言っても無料でとは行かないでしょう。非常に申し訳ないのですが、我々は今ある程度自由に動けはするのですが、宣戦布告の絡みもあって大きく動くことは出来なくて……』
あ~。そういえば金曜日に攻め込んでくるんでしたっけ。面倒くさい連中だなぁ~……。素材に関しては労力が大変だから、じゃあもう一つの方をお願いしようかな?
「大丈夫です、割りと集められそうな素材みたいなんで。出来れば、素材よりも美味しいお菓子を持ってきて頂けると……」
『お菓子、ですか。なるほど……直せるとは、そういうことですか』
『??? どういうこと~?』
『秘密です』
『あぁ~~出た出た、カヨコの秘密! こうなったら絶対教えてくれないもんねぇ~!! ん、お菓子持ってくれば良いんでしょぉ~? サリーちゃん、プリンとか作るの得意だもんねぇ~!』
『あの、ピンク色のプリン……』
ピンク色のプリンかぁ~。前にもピンク色のシチューとか作るって言ってたよねサリーちゃん……。味は良いらしいんだけど……。ピンク色でもヤバくないお菓子とかお作りになられたほうが宜しいのでは……?
『ピンクのほうが可愛いのっっ!!!』
『食欲が削がれるといいますか、その……もう少し薄いピンクならまだしも、毒々しい……』
ピンクのプリンぐらいならそこまでじゃなくない? って思ったら、毒々しいレベルのピンクなのね……。多分私が想像してる桜色のプリンじゃなくって、ドギツイ色のピンクなんだろうなぁ……。そのレベルのピンクでも食べられるお菓子……あ。
「じゃあ、マカロンとかならいいんじゃないですか?」
『マカロン』
『マカ、ロン……? リンネちゃぁ~ん、なぁにそれ♡』
あ、プリンはあるのにマカロンはないんだ。作り方は簡単だったはずだし、ちょっとネット検索で作り方を引っ張ってきて何かに書いて教えればいいかな? あ、どうせだから作っちゃおうか。妖精さんにも壊してごめんねのお菓子をあげたいし。アトリエは駄目になっちゃったけど、キッチンは別の場所だから残ってるしね。
「実際に作ってみましょうか。簡単に作れるので、多分バビロニクスに材料が全部売ってると思いますし買ってきます」
『に、荷物な――ごおっ……!』
『逃げんなゴリラ。リンネちゃんに近寄んなゴリラ。片付けんだよ、ここを。やれ』
『うぅ……はい……』
「クーガーさん、今度からは爆弾……人の居ない方に投げてくださいね」
『本当に、申し訳ありませんでしたぁ……!!!』
「おにーちゃん、何で買い物についてくる気でいるの? 片付け。元はと言えば出しっぱなしのおにーちゃんが悪いんだよ」
『(´;∀;`)』
『サリーちゃんが荷物持ちがてら護衛についていってあげよっか♡ いこいこっ♡』
『あ、ズルい。私も…………いえ、私はこの二人がちゃんと働くか見張りで残ります。ティア、一緒にお買い物に行ってきたらどうですか?』
「はいっ! 行ってきます! お片付け、頑張ってくださいっ!」
『(*´∀`*)!』
『うぉぉお……! が、頑張るぞ……!』
お、なんだか予想とは逆の組み合わせ……ついてくるのがカヨコさんとティアちゃんと思ったら、サリーちゃんとティアちゃんの組み合わせで来た。それにしてもティアちゃん、こんな大惨事をやらかしてた二人に応援の一声を掛けてあげるのいい子過ぎる、純粋に可愛いなんだ……。いい子だね、本当にね。
「じゃあ、行ってきますね」
『お気をつけて。お買い物はゆっくりと楽しんできてください。ゆっくりと』
『(っ´;∀;`)っ』
『――フリオニール』
『(´;д;`)』
ああ……。何でこの組み合わせで残ったのかなーと思ったら……。カヨコさん静かにガチギレしてるじゃん……。怖っ……ゆっくり買い物してこいってそういうことね。うん、暫く戻らないようにしようか、じゃあギルドポータルを――あ、サリーちゃんが入れないじゃん。どうしよ?
『忘れていました。サリー、転移石です。行きと帰りに使ってください。再使用には最低でも30分かかりますので』
『ありがと~♡』
30分は戻ってくんなって言ってますね。はい、わかりました。最低30分は戻らないようにします……はい、行ってきまぁ~~す……。
「じゃ、そういうことで……」
『【バビロニクス】へのギルドポータルを開きました』
「いってきま~す!」
『はい、気をつけて――――――フリオニール!!! あれほど危険な――――』
ご愁傷さまです…………。
◆ ◆ ◆
『ねえねえ~?? これだけで出来ちゃうのぉ~? 本当に~~??』
「本当ですよ~。アーモンドパウダーに卵、砂糖とバター、基本これだけです」
「これが、おいしいお菓子になるんですか?」
「なるんだよ~」
『へぇ~……♡』
目的のものは簡単に揃っちゃったんだけど、困った事に時間がとんでもなく余ってるんですよね。こうなったらアレかな、こっちでマカロンを作ってからリュースに帰ろうかな? サリーちゃんもティアちゃんも、早くマカロン作ってよ~って感じで待ちきれない様子だし。そわそわそわそわしてるもんね。
『それにしても夜なのにずーーっと商売してんの、逞しいわね~』
「プレイヤー……あ、異界人は代わる代わる24時間活動してますからね。むしろ夜のほうが人が多いでしょうし、昼休んで夜活動してるお店もあるんじゃないですか? 気温も夜のほうが低いですし、生鮮食品とか傷みやすいものを並べるのも夜のほうが都合が良さそうです」
『随分博識ねえ!?』
「あ、いえ。想像ですから。その方が効率いいだろうな~と思って」
『効率、そういえばリンネちゃんって手際が良いわよね~。沼でもそうだったし? 余裕も考えた上での効率を出すのが得意みたいな、凄く良い指揮官みたいなタイプ~』
「そう、ですか? 特にそういうのは意識したことはないですけど……」
効率、効率か~……。無駄なく常に100パーセント動け! みたいなことはやってないから、そこまで効率の鬼みたいな指揮官タイプじゃないと思うけど、サリーちゃん達にはそう見られてるってことなのかな。意識したことはなかったけど……。
『あの手この手で突破口を探るのも得意よね~。ドミーとノンナが帰ってきたら、リンネちゃん困惑しそ~♡』
「え、ドミーさんとノンナさん……山羊のドミエラさんと、水瓶のノンナさんですか?」
『そ♡ アイツラ性格とは真逆の戦法を取るから、面白いわよ~♡ いい刺激になると思う。後はモーリス、盾構えてチクチクチクチク。鬱陶しいなんてもんじゃないわアイツ』
「ほええ……早く会いたいですね、頑張って素材集め協力します」
『あ、そんなつもりで言ったんじゃなかったんだけど。ごめんね、急かしたみたいで♡ ところで、サリーちゃん達をこんな路地裏に連れ込んだりして、どうするつもりなのかなぁ~~……♡』
「えっ、あ!」
うわわ、お話に夢中になって歩いてたら、いつの間にか全然知らないエリアに迷い込んでたわ。いやサリーちゃんったら、体格は私のほうが大きいけど、力はサリーちゃんのほうが何十倍、下手したら何百倍も上でしょうに。ここでサリーちゃんをどうこう出来るような人はいないですよ。
「??? 路地裏は、なにかするところなのですか?」
『ティアちゃぁん、路地裏では女の子――――むぐっ……』
「あ、あのね。路地裏はほら、人が少ないでしょ? 命が惜しけりゃ金置いてけ~みたいな悪い人もいるから、気をつけなきゃいけないんだよ」
「わあ、怖いです! 気をつけます!」
『んっふ……♡』
「だ、駄目ですよ。ティアちゃんにそういうの教えないでください……!」
『はぁ~~い♡』
サリーちゃん、ティアちゃんに変なこと吹き込まないでくださいよ……。それにしてもここどこだろ、マップマップ~…………へっ?
「…………あ、あの、サリーちゃん……? どっちから来たか、覚えてますか?」
『え? あっちから…………あれ? 壁になってんだけど』
「わ! 来た道がなくなってます!」
――――ちょっと待って。マップを開いても【NO DATA】って表示されるだけで、方角すらわからなくなってるんだけど。ログアウトコマンドも一時的にロックされてるって出るし、チャットコマンドも出ない! ギルドポータルとかも出せない!!
「サリーちゃん、転移石って起動できますか!?」
『ん、30分って言ってたけどぉ~……ま、使えるわね。でも今戻ったら怒られちゃうわよ~? あれ、起動しないんだけど。なにこれ壊れた?』
転移石も駄目、念話も――――届いてる感触がない。別の場所に居る皆を死体安置所に強制引き戻しも出来ない、召喚も出来ない…………!!!
「路地裏の建物って、みんな高いですね……」
「!!! こんなに高いわけない、上が見えないなんて……」
『ヤバ。これ、異界よ。全然気が付かなかった、引っ張り込まれたわけじゃない、罠に自ら飛び込んだな……おっらぁああああ!!!!』
『蠍のサリーが【アダマンタイトクラッシュパンチ】を発動、Resist……。対壊属性の建物です』
『うそぉ……! 信じらんない、傷一つつかないんだけどぉ!!!』
――――ここに居るのはマズい気がする、早く脱出手段を見つけないと……!!!
『――――まさか、本命が釣れるとはな。それも、従者は新参の一人だけ。おまけも一緒のようだが、今の威力では……。問題なさそうだな』
『リンネちゃんヤバイ、下がりなっ!!!』
やっぱりこの罠を仕掛けたヤツが居た、これだけの罠を堂々と仕掛けられるような奴……何者…………!?
『初めまして忌々しき死霊術師のリンネ殿。我は真なる女神の直属の神兵。神罰の代行者。ナインズの一柱、ワルヘド。ああ、覚えてもらわなくて結構。ここで貴殿は終わりなのだから』





