第二十話 合意と拒絶
ゾフィーは、難民の女の子を犯しているクレメンスを見て驚愕する。
「ク、クレメンス!? なにを!?」
ゾフィーが怯んだ瞬間、クレメンスの手下の男たちが後ろから三人掛かりで両腕と首に腕を回してゾフィーを羽交い絞めにする。
「ぐうっ!」
クレメンスは、難民の女の子を犯しながらゾフィーに告げる。
「ゾフィー。デリカシーが無いな。取り込み中だ」
ゾフィーは、羽交い絞めにされていて身動きが取れないものの、剥き出しの憎悪と嫌悪感をあらわにクレメンスを罵倒する。
「難民の子を集団で強姦するなんて! 恥ずかしくないのですか!」
クレメンスは、歪んだ笑みを浮かべながら答える。
「『強姦』? 人聞きが悪い。見て判らないのか? 私らは身分を越えて愛しあっているのだよ」
クレメンスの言葉を聞いた手下の男たちは、下卑た笑みを浮かべる。
ゾフィーには、クレメンスの言葉が嘘だと瞬時に判った。
クレメンスが本当に難民の彼女を愛しているのならば、手下たちの目の前で見世物のように性交したりしないだろう。
ゾフィーは再びクレメンスを罵倒する。
「よくも、そのような嘘を! 貴方には、帝国貴族としての誇りは無いのですか!?」
クレメンスは、ゾフィーから難民の女の子の方へ目線を移して答える。
「『帝国貴族としての誇り』? 私は慈悲深いのだよ。……ふふふ。すぐに済ませてやる」
ほどなくクレメンスは彼女の中に射精する。
クレメンスが難民の女の子から離れると、難民の女の子は木箱の上から起き上がり、脱がされた下着と衣服を直し始める。
手下の男たちは、羽交い絞めにしているゾフィーをクレメンスの元へ引きずっていく。
クレメンスは、下半身をあらわにしたまま、ゾフィーと対峙する。
ゾフィーは、目の前で繰り広げられた醜悪な性交と、自分に下半身を見せつけるクレメンスに、クレメンスの人間としての堕落、品性の欠落、狂気を垣間見て、激しい嫌悪感をあらわに美しい顔を歪めて罵る。
「ケダモノ!」
クレメンスはゾフィーの顔を平手打ちする。
乾いた音が倉庫内に響く。
クレメンスは、ゾフィーの顎を掴むと顔を近づけて告げる。
「家柄と容姿、才能を鼻に掛け、姉が皇太子殿下の正妃になったことを笠に着て、お高くとまりやがって。私は、お前のような男を見下した高慢な女が大嫌いでね。……大人しく男に抱かれる、そこの卑賎の難民の女のほうが可愛げがあるというものだ」
クレメンスはゾフィーの顎から手を離すと、上着のポケットから小銭を取り出して床の上にばら撒き、難民の女の子に告げる。
「なかなか良い具合だったぞ」
難民の女の子は、クレメンスが床の上にばら撒いた小銭を拾い集めていた。
ゾフィーはクレメンスに尋ねる。
「その子を、お金で買ったのですか!?」
バレンシュテット帝国は、暴力革命と革命政府時代の風俗の乱れを鑑みて『管理売春制』を敷いて売春行為を規制しており、帝国政府から許可を受けた娼館に限られていた。
クレメンスは、薄ら笑みを浮かべたまま答える。
「フン。『女を買った』とは、人聞きの悪い。身分を越えた愛妾への『お手当』だ」
ゾフィーは、クレメンスと難民の女の子の性交が『双方合意の上での性行為』だと理解する。
仮にゾフィーがクレメンスを強姦や売春で告発しても、難民の女の子が性的被害を否定して、クレメンスが『性交した娘は愛妾だ』と答えてしまえば無罪であった。
帝国の法では、二人の『双方合意の上での性行為』を罪に問うことはできなかった。
クレメンスは、ゾフィーを羽交い絞めにしている手下たちに鼻先で木箱を指し示すと、手下の男たちは難民の女の子が突っ伏していた木箱の上に、同じようにゾフィー押し倒して押さえつける。
ゾフィーは口を開く。
「な、なにを!?」
クレメンスは、木箱の上に押さえつけられたゾフィーを見下しながら告げる。
「ゾフィー・ゲキックス。私の女になるか、この場にいる男たちに玩具にされるか、好きな方を選べ」
ゾフィーは、キッパリと答える。
「どちらも、お断りです!」
「だったら、玩具にしてやる!」
クレメンスは、身動きできないゾフィーの服を脱がせていき、下卑た笑みを浮かべる。
「クックックッ。ゾフィー、喜べ。第三席侯爵家の御曹司たる、このクレメンス・フォン・メルヒヴァイラーが最初の男だ。光栄に思うんだな」
ゾフィーは、泣き叫びながらクレメンスを拒絶する。
「嫌です! いや! いやぁあああ! ゲオルグさまぁああ!」




