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青い鳥

仰ぎ見ると、半空にはブレイズエッジが浮かんでいた。その無情な灼熱が、私の体を無慈悲に焼き尽くしていく。


「くっ。」


燃えるような熱気が肺を焼き、酸素が薄れていく中、思考は朦朧とし始めた。もう悠長に戦略を考える時間はなかった。ブレイズエッジは私と直接交戦することなく、ただ浮かんでいるだけで損傷を与えていた。


射撃アクセント!」


戦闘の再開を告げたのは、私の隣にある二門の滑腔砲から放たれた轟音だった。


ブレイズエッジは軽々と翼をはためかせ、砲撃を避けて俯冲し、猛禽のように直襲してきた。


ゴウッ。


青い炎が閃き、私は慌てて身をかがめた。隣の二門の滑腔砲が地面に倒れ、鉄くずの塊と化した。火の余波が私の体を焦がし、焼け焦げた空気の匂いが鼻腔を刺す。


私は身をひねり、ブレイズエッジの直線的な斬撃をかわした。空気を切り裂く剣先が青い炎の線を残し、その線に沿って瞬く間に火花が散った。


ブレイズエッジは翼を振り、空中で旋回しながら、今度は横に一閃を放った。私は全力で身を伏せ、炎の花が私がいた場所を焼き尽くす。反撃する暇もなく、彼女は再び翼を振り動かし、煌々たる焰光えんこうの中で、地上の私に向かって一突き。


「っ。」


白熱はくねつの剣先を見つめながら、私は急いで横に転がって避けた。炎の剣は地面に突き刺さり、赤く焼いた。剣が地面に刺さったままの姿勢で、ブレイズエッジは翼を振り、剣を私の方へと押し進めてきた。高温に耐えられず砕けるコンクリートの音とともに、炎の剣が滑ってきた。


断頭台だんとうだいの刃が迫ってくるような錯覚に襲われながら、私は後方に転がり、全力で跳び上がった。しかし、ブレイズエッジは私が空中にいる隙を見逃さなかった。剣の柄をひねり、ブレイズエッジは剣先を上に向けて斬り上がり、火で構成された飛翔する斬撃がコンクリートの破片とともに私に襲いかかってきた。


「格納庫!」


私は空中で大盾を投げ出した。破片が金属の盾に当たり、雨のような音を立てた。しかし、その音が止む前に、盾が黒煙を上げ、中央に赤い光が走った。ブレイズエッジが盾を切り裂き、二つの残骸の間から再度突進してきた。


私は距離を取ろうと後退したが、一歩下がるとすぐに背中に硬い感触が伝わった。不知不覚のうちに、私は壁際まで追い詰められていた。


「っ!」


迎え撃つのは、もう一度の突きだった。


時間が粘りつくように感じられ、背筋に電流が走ったような感覚。私は前方に突進した。頭を横にそらして剣先をかわすと、オペラマスクの一部が焼かれ、ディスプレイには蜘蛛の巣のような黒い亀裂が広がった。焦げた髪の匂いを感じながら、私は身を低くし、圧迫される時間の中で前進を続けた。


走馬灯そうまとうのように、閃光が私の頭をよぎった。


目の端に、身を起こしたリコシェと心配そうな表情を浮かべる櫻庭が映った。


ブレイズエッジの体を纏う青い炎は、千度を超えるはずだ。その温度で、私は炎の余波を何度も浴びているのに、皮膚ひふはまだ焼け爛れていない。それだけでなく、炎が翼の振動とともに部屋全体に広がっているのに、櫻庭とリコシェにはまったく影響がない。


一つの仮説が私の心に芽生えた。


直感が私に与えた答えはやはりタックルだった。


壁を蹴り、私は全身の力を込めてブレイズエッジに体当たりした。少女は驚いて一瞬動きを止め、剣を突き出したままの姿勢を保った。その隙を突いて、私は再び彼女の小さな体を抱え、地面に叩きつけた。


指先から全身に広がる灼熱の痛みを感じながら、私は声を張り上げた。


「はああああああ!!!」


叫び声とともに、乾いた喉に血の味が広がった。肺の痛みと朦朧とする意識を無視して、私は全身の力と鎧の性能を駆使し、ブレイズエッジを持ち上げ、再び地面に叩きつけた。


「これでも食らえ!」


ブレイズエッジは抵抗しようとしたが、私はせいいっぱいで、まるで地面を貫くようなパワーボムで彼女を叩きつけた。ブレイズエッジは咳き込み、その強烈な力に胸の宝石が明滅した。


そして、私の体を焼く灼熱の痛みが一瞬で消えた。


やはり。


「君の能力は実際に高温を発するのではなく、炎の形で『認識された概念』を焼き尽くすんだ。いわゆる炎は、現実が魔法によって歪められた結果に過ぎない。」


「っ。」


「妙だと思ったんだ。もし君の能力が本当に高温を発するなら、この部屋にいる櫻庭とリコシェも無事では済まないし、私の肺はとうに焼け焦げているはずだ。最初は、君が燃焼の対象を選んで排除できるのだと思った。前回の襲撃でも、怪人と黒穴だけを焼き尽くしていたから。でも、実際に戦ってみると違和感があった。」


姿勢を変え、ブレイズエッジの腕を押さえつけた。


「君が咳き込むと、炎の熱さも消える。」


「……」


「そしてさっきタックルで確信した。衝撃で君の意識が途切れて、燃焼を維持できなくなったんだ。君は燃焼の対象を意識的に排除しているわけではなく、認識できるものしか燃やせない。炎を剣や翼の形にするのは、自分の想像を助けるためだろう。無敵に見えるが、君の能力は奇襲に対して弱いというわけだ。」


「…あなたは、かなり鋭いんだね。でも、原理がわかったとして、それがどうしたの?」


ブレイズエッジの体が再び炎を上げた。それを見て、私は彼女の関節をひねった。少女の顔には苦痛の表情が浮かび、再び炎は一瞬で消え去った。


「簡単なことだ。」


私は少女の細い手首に圧力をかけ続けた。


「君が炎を意識して発動できないようにすればいい。それには痛みを与えるだけで十分だ。」


「……私を甘く見ているんだね、サヨナキドリ。」


ブレイズエッジの体が再び燃え上がった。


「たかが痛みで私を止められると思っているの?」


「っ!動くな、降参しろ!それ以上動いたら腕を折るぞ!」


「闇と戦う者は、元々傷を背負うもの。ええ、痛みには慣れている。一、二本の腕など、あなたにくれてやるわ。」


少女の緑色の目が私を見つめた。その平静な眼差しに、背筋が冷たくなった。


「意識できなければ燃やせない?意識が途切れれば、火も消える?確かに、この能力は奇襲や意識外の攻撃には弱い。過去の未熟な私は、そのために古傷を負った。でも、それがどうした?」


ブレイズエッジの体から放たれる炎はますます激しくなった。


「痛みごときで私の心の火が消えると思っているなら、それは大きな誤りだ。」


ブレイズエッジは無理やり体をひねり、私の抑えから逃れようとした。カッと、少女の肩の関節から音が聞こえた。


「っ!」


ブレイズエッジは私を蹴り飛ばし、抑えから脱出した。後方に転がり、立ち上がった。左手は力なく垂れ下がっていたが、少女の澄んだ湖のような眼差しは、今や燃え盛る炎のようだった。


「私の内なる炎を見せてあげる。」


「紅、やめて!あなたの体が持たないわ!」


場外の櫻庭が叫んだ。


私は少女の全身から放たれる圧力に押しつぶされそうになっていた。


奥義エアヴァッヘン。」


ブレイズエッジはゆっくりと右手を挙げ、小さな太陽のような光が彼女の指先に現れた。世界が歪み、周囲の空気が再び熱され、揺れ始めた。まるで幻、蜃気楼のように、灼熱の少女は今や地上の神のようだった。


ザ・サン。」


圧倒的な威圧感と熱に対抗するため、私は全力で衝撃に備えた。






熱が突然消えた。






「…?」


私は自分の手のひらを見つめた。


手は無傷で、焼け焦げていなかった。包んでいた鎧は警告音とともに外れ、異空間に溶け込んでいった。私は茫然ぼうぜんと前方を見上げた。


そこには、一人の少女が跪いていた。彼女は激しく咳き込み、まるで肺を吐き出すかのようだった。


彼女を包んでいた炎と衣装は消え失せ、輝いていた金髪も今や色あせていた。


しかし、その瞳の中の光はまだ消えていなかった。


咳で言葉を発することができない少女は胸を押さえていた。胸の赤い宝石はもう光を放っておらず、今や色を失っていた。


緑の瞳が鋭く私を見つめていた。炎はなくとも、その視線に焼かれるような感覚があった。


「紅!」


櫻庭が場外から駆け寄ってきた。咳き込む少女を抱きしめ、櫻庭は体で彼女を守った。


「これで終わり。あなたの勝ちだよ、サヨナキドリ。」


私は答えなかったが、櫻庭は焦った様子を見せた。


「言っただろう、あなたの勝ち!もう十分でしょう!今、魔法省の中であなたを止められる者はいない!」


「…そう。」


私は櫻庭と剣崎を通り過ぎ、息を荒げるリコシェを支え起こした。


「…君は本当に偽善者だな。絶望を積み重ねた結果がこれだけなら、大人になるのはやめるべきだ。」


「っ。」


背を向けて歩きながら、私はそう呟いた。見えなかったが、櫻庭が息を呑むのを感じた。


心の中の言いようのない感情を噛みしめながら、私は異空間を開き、リコシェを背負ってその暗闇に飛び込んだ。






そして、私は久しぶりの地下室に足を踏み入れた。






「サヨ!ついに帰ってきたのね!魔法省の連中にそのまま捕まっちゃうんじゃないかって心配してたんだよ。」


退屈そうに髪を弄っていたQがソファから勢いよく飛び上がった。彼女は喜びに満ちて私に抱きついてきた。その体温を感じると、浮き立っていた心が少しだけ落ち着いた。


「おかえり、サヨ。」


いつも通りの無邪気で少し間抜けな笑顔を見せながら、Qは優しく言った。その笑顔を見て、私も思わず微笑んだ。


「ああ、ただいま。」

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