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炎に抗う

私は素早く頭の中で自分の目標を確認した。


作戦は簡単だ。この部屋の封鎖を突破して、リコシェを連れて魔法省から逃げ出すこと。


櫻庭が私に嘘をついたことから、魔法省がQを捕獲できていないことが間接的に証明された。だからこそ、彼らはこんなに乱暴な手段を出たのだろう。


櫻庭がなぜわざわざブレイズエッジがリコシェを屈服させようとしている時に私をここに連れてきたのかはわからないが、リコシェも一緒にいるのはむしろ都合がいい。後で魔法省内で合流する手間が省けるからだ。


鎧をまとっているとはいえ、私の直接戦闘能力ではブレイズエッジに劣るだろう。しかも、今私はブレイズエッジが作り出したこの炎の領域にいる。熱気と乾いた空気が体力を削り続け、長期戦になればリコシェのように行動不能に陥る。


相手の注意を逸らし、速攻で決着をつける必要がある。


「私が、悪夢を見ている?」


ブレイズエッジは驚いたように目を見開き、不思議そうに瞬きをした。


「面白いことを言いますね。」


「どれだけ強がっても、君は檻の中で世間を知らず、周りの大人たちに強制観念を植え付けられた子供だ。立派なことを言うからこそ、むしろ幼稚に見えるんだよ。」


ブレイズエッジとの対話を続けながら、私は手を背後に隠し、指を動かして魔力を操作した。鎧の能力を使って、ブレイズエッジの背後にゆっくりとポータルを開いた。


「…幼稚だと言うんですか?」


「そうさ。君はただの成長しきれていない馬鹿だ。」


「…成長しきれていない馬鹿?」


「目を覚ましたらどうだ?ちっぽけなブレイズエッジ。君だって守られるべき子供だ。」


「…ちっぽけ。」


ブレイズエッジはわずかに眉をひそめた。その表情はほんの少しだけだが、まるで人形のようだった表情がわずかに崩れた。


「私は、子供じゃない。」


「違う。君は子供だ。ろくでなしの大人たちに責任を押し付けて、無駄な悪夢を見ている子供だ。」


ブレイズエッジが一歩前に踏み出し、戦闘態勢に入るのと同時に、私はポータルの設置を完了させた。


「...これが悪夢だなんて言わせません。魔法省の存在は人々を守り、魔法少女を団結させ、平和をもたらしています。それがたとえ夢でも、美しい夢です。この伝承と使命を愚弄することは許しません。」


周囲の火焔が激しく揺れ、ブレイズエッジの体がわずかに前傾した。


「前人が築いた平和は、後継者が支えなければなりません。平和を脅かす不安要素は排除し、純粋に平和を守る祈りだけを残すのです。」


来る!私は素早く手銃を構えた。


「今、あなたの心の不純物を焼き尽くしてやります、サヨナキドリ。」


ブレイズエッジの後に火が爆発する。まるでジェット機のように、金髪の少女が高速で飛んできた。右手を横に振ると、彼女の手には炎を凝縮させた剣が現れた。


私はブレイズエッジに向けて発砲したが、弾丸は少女の進行を止められなかった。彼女は左手を上げて炎の盾を作り、弾丸をすべて空中で溶かしてしまった。


私は素早く後方に下がりながら、鎧の能力を発動し、後にポータルを開いた。天が回り地が転ぶような感覚を経て、私はブレイズエッジの後に開いたポータルから再び現れた。


攻撃が空振りした焰刃を見下ろしながら、私は半空で手を振り下ろした。


演劇えんげき硝煙しょうえんの歌。射撃アクセント。」


二門の滑腔砲がブレイズエッジの無防備な背中に向かって砲撃を放った。しかし、ブレイズエッジは素早く反応し、上に跳び上がって砲撃を避けた。砲弾は地面に大きな穴を二つ開けた。


「面白いね。前は小型の砲塔だったけど、今度は大口径の重砲か。その夜から装備が強化されたようだね。」


ブレイズエッジは火焰を踏みしめながら、舞うように近づいてきた。


「でも、当たらなければ意味がない。」


「っ。」


再び滑腔砲に発砲を命じるが、空中のブレイズエッジは身を翻して第一弾を避け、次に剣で第二弾を優雅に斬り裂いた。二つに分かれた砲弾は焰刃をかすめ、背後の壁に激しく命中した。


「開け!連射グリッサンド!」


地面から機関砲塔が現れ、対空射撃をブレイズエッジに向けて発射した。機関砲の火線に対して、ブレイズエッジは空中から猛然と地面に降り立ち、手に持った剣を地面に突き刺した。瞬間的に、火山の爆発のような激しい炎が広がり、真鍮しんちゅう色の機関砲塔が赤くなり、軟化なんかし、動けない状態に溶解した。


「くっ!」


強烈な風圧により、私は目を閉じそうになった。半空にいる自分をポータルで受け止め、ブレイズエッジから遠く離れた場所に着地した。


「…その扉、面白いですね。資料で見たことがあります。あなたが以前倒した怪人の固有能力でしょう。」


ブレイズエッジは地面にある既に無力化した機関砲を、まるでバターのように軽々と切り裂いた。


「そしてその鎧、感じますよ、怪人の魔力を。なるほど、あなたは倒した怪人を装備に変える固有能力を持っているのですね。つまり、倒す怪人が多く、強ければ強いほど、あなたの能力も強化されるというわけか。非常に成長性のある能力です。」


「……」


私は答えず、ゆっくりと手に持った武器を構えた。


「でも、あなたのこれらの装備は魔力で現実を干渉しているのではなく、実体のある装備のようです。一度消耗すると、戦闘中にはすぐに補充できません。」


ブレイズエッジは微笑んだ。


「つまり、あなたの弾薬や装備が尽きれば私の勝利だということね。」


「…もう勝利を確信しているのか?随分と自信満々だな。」


「まあ、そういうことです。あなたのその鎧、時間が経つにつれて内包された魔力が減少しているのがわかります。恐らく時間制限があるのでしょう。今のあなたはその装備のおかげで私と拮抗していますが、時間が経てば鎧を失ったあなたに勝ち目はありません。」


ブレイズエッジが一歩前に踏み出したが、突然よろめいた。彼女は激しく咳き込み、胸元の明滅する赤い宝石に手を伸ばした。


「…ふん。時間制限があるのは、君も同じじゃないか。」


「あら、まずい。時間の管理を少し誤ったみたいです。今日の出動とリコシェとの戦闘で、時間を消費しすぎたようですね。やはり、あなたたちのような高レベルの魔法少女と戦うには、時間的に余裕がありません。」


ブレイズエッジは平然と微笑みながら姿勢を立て直し、赤い宝石も再び安定した光を放った。


「でも、大丈夫。まだ、戦える。」


「…なぜ?」


「ん?」


「なぜそこまでやるのか。それに、なぜ君が自分をそこまで追い詰めているのに、周りの大人たちは止めないんだ。」


「…?止める必要があるのですか?私はまだ戦えますし、戦う理由もあります。この街にはまだ私が必要なんです。」


「…そういうところが腹立つんだよ。」


深く息を吸い込み、私は自分の精神を落ち着けた。ブレイズエッジが困る表情を浮かべ、意識が一瞬途切れた隙に、私は二つの煙玉を彼女の足元に投げた。


「今さらこんな小細工を…」


ブレイズエッジが剣を振り、煙を切り裂いたその瞬間、私は魔力を操作して大きく踏み出し、ブレイズエッジの足元と頭上にそれぞれポータルを開いた。


「っ。」


「落ちろ。」


ブレイズエッジは反応する間もなく足元のポータルに落ちていった。その瞬間、私はパイルバンカーを取り出して突進した。バランスを失ったブレイズエッジが上空のポータルから落下してきた。


わずかな時間の中で、私はパイルバンカーの先端をレイズエッジの胸の赤い宝石に向けて突き刺した。


「っ!」


ブレイズエッジは空中で剣を振り、パイルバンカーを二つに切り裂いた。しかし、パイルバンカーはただの囮だった。私はそれを放し、体をひねってブレイズエッジの斬撃を避け、その勢いで彼女の側頭部に蹴りを放った。


「くっ。」


灼熱による痛みが足の甲から伝わってきたが、それを無視し、全身の回転力を足先に集中させた。


「はああああ!」


蹴りは正確にブレイズエッジの頭を揺さぶり、彼女は膝をついた。体格差を生かして、私は彼女を地面に押さえつけた。ブレイズエッジの体を包む炎が私を焦がすが、その痛みも無視して、拳を彼女の胸の宝石に叩き込んだ。


ブレイズエッジは防御しようと手を交差させて攻撃を防いだが、その隙に私は全身を使って彼女を押さえつけ、動きを封じた。


片手で彼女の首を押さえつけ、もう一方の手で腹部を猛打した。


少女の美しい顔が苦痛で歪んだ。その隙を突いて、私は再び彼女の胸の宝石に手を伸ばした。私の動きに気づいたブレイズエッジは再び反抗し、細い腕を振って私の手を掴んだ。


「…!やめっ!」


「ここをずっと守っているってことは、その下に古傷があるんだろう!そしてこの赤い宝石も、君にとって重要なんだな!」


私は灼熱の炎に耐えながら、ブレイズエッジと格闘を続けた。彼女の腕を払いのけ、赤い宝石を掴んだ。


「やめろと言っている!」


次の瞬間、ブレイズエッジの体から猛き炎が噴き出した。


「くっ!」


危険な熱さを感じ、ブレイズエッジの炎の剣が自分の腕に向かってくるのを避けて、急いで後方に転がり、彼女と距離を取った。


「はあ、はあ、はあ…」


地面に座り込んだブレイズエッジの顔には、先ほどの余裕や偽りの笑みはなくなっていた。少女の顔は痛みで歪み、汗でびっしょりだった。彼女の表情には初めて怒りの感情が浮かんでいた。


彼女の体を包む赤い炎の熱が徐々に上昇し、青い炎に変わった。


「はは。そうこなくちゃな。さっきの空々しい笑顔よりも、今の静かに怒っている顔の方がずっといい。」


「……」


ブレイズエッジは無言で立ち上がった。彼女は胸の赤い宝石を確認し、慎重にその上の埃を拭い取った。そして私を睨みつけた。周囲を取り囲んでいた炎が突然消え、熱が一瞬でブレイズエッジの体に集中した。


すると、ブレイズエッジの背中に翼が広がった。


世界が燃え上がった。


青い炎で構成された翼をはためかせて、ブレイズエッジは飛び上がった。翼が動くたびに、強烈な熱波が爆発する。鎧の下で冷や汗が流れるのを感じながら、私は苦笑いを漏らし、再び戦闘の構えを取った。


ヘルメットに表示された時間は、残り一分しかなかった。

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