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ヒヨコたち

「くそっ、どうなってるんだ。」


隣に座るリコシェは苛立ちながらコートの中に手を突っ込み、何かを探しているようだった。やがて彼女は不満げな表情を浮かべ、乱暴に足をテーブルに乗せた。彼女の無作法な態度を見ても、今の私には叱る気力もなかった。


本当に、どうしてこうなったのだろう。


ここに来てから何度目か分からないため息をつき、心の中は無力感でいっぱいだった。


私はリコシェと並んで教室に座っていた。空間は広々としているのに、息苦しさを感じた。


「ねえねえ、桜庭先生から聞いたんだけど、お姉さんも魔法少女なんでしょ?」


「知ってる!あなたはサヨナキドリ!隠しキャラだ!」


「怪人と戦ったことあるの?怖かった?」


「すごい!はい、お花あげる!」


「あなた誰?紫の!知らない!」


私を息苦しくさせている元凶たちが、キラキラした目を輝かせながら体をテーブルに押し付けるようにして近づいてきた。


身にまとった色とりどりのかわいらしい装飾の服を着た少女たちは、私とリコシェを囲んでいた。彼女たちは楽しそうに叫び声を上げながら、私たちの周りを走り回り、時々質問を投げかけてきた。子供特有の高い体温と矢継ぎ早な質問攻めに、私の頭はクラクラしてきた。


リコシェは耳を押さえた。


「うるさい!このちびっ子ども!」


リコシェが怒鳴った瞬間、少女たちは歓声を上げて散り散りになった。でも、すぐにまた囲んできた。


私は目を細めた。少女たちの体からは、彼女たちの興奮に呼応するように魔力の輝きが放たれているのを見える。


「はい、はい。授業が始まるよ!魔法少女のヒヨコたち、みんな座って!」


桜庭が講台で手を叩くと、子供たちはすぐに走り回って席に戻った。やっと解放された私とリコシェは、思わず同時に深いため息をついた。


「今日は、新しい友達が授業を一緒に聞いてくれます。現役の魔法少女、リコシェちゃんとサヨナキドリちゃんです。みんな、拍手!」


おおお。少女たちは小さな手を叩いた。その中の一人が突然立ち上がり、手を振り始めた。桜庭は微笑んでその手を挙げた少女を指さした。


「どうぞ。」


「先生!私、もっと二人のことを知りたい!」


「私も!」


「もっと知りたい!」


少女たちは再び騒がしくなった。桜庭は苦笑いしながら少女たちをなだめた。


「では、彼女たちに自己紹介をしてもらいましょう。まずはリコシェちゃんからお願いしますね。」


「ふん。なんであたしがそんなことをしなきゃいけないの。」


「協力してくれたら、タバコの一部を返してあげるよ。」


「…本当?約束を破ったら許さない。」


「ええ、もちろん。」


「ちっ。ああ、もう。どうなっても知らないよ。」


リコシェは乱暴に立ち上がり、親指で自分を指した。


「あたしはリコシェ。野良の魔法少女をやってる。好きなものはタバコ、得意なことはギャンブル。以上。」


おおおお。少女たちは驚きの声を上げ、雷のような拍手が鳴り響いた。


また一人の少女が手を挙げた。


「先生!リコシェお姉さんに質問があります!」


「ふふ。どうぞ。」


「はい!」


少女は澄んだ目でリコシェを見つめた。


「リコシェお姉さんはどうして魔法少女になったの?」


「は?そんなの決まってるだろ?金のためだよ。」


ええええ——。少女たちは不満の声を上げた。


「…子供に夢のないことを言ってどうするんだよ。世界平和のためとか、みんなの幸せのためとか、子供たちが喜ぶようなことを言えないのか?」


どうしてもリコシェの回答に頭痛を覚え、私は思わずツッコミを入れた。


「嫌だね。嘘をつくのは大嫌いなんだ。」


教室が騒がしくなっているとき、もう一人の少女が手を挙げた。長い髪を持ち、腕に小さなクマのぬいぐるみを抱えた、少し内気そうな少女だった。


「私も、聞きたいことがあります。」


内気な少女は私を見つめた。


「サヨナキドリおねえさんが怪人を苦しめるって聞いたことがあります。どうしてそんなことをするんですか?それじゃあ、怪人さんがかわいそうじゃないですか?」


「っ。」


私はため息をついた。


「かわいそうだって?あいつらは市民の安全を脅かす敵なんだよ。」


「で、でも。怪人さんも痛いって思うんじゃないですか。どうして、そんなことをするんですか?」


「私にとって、それは必要なことなんだ。怪人を苦しめることでこの人間の世界の安全が保たれるなら、できるだけ苦しませるよ。他の人がどう思うかは知らないけど、私のアドバイスとしては、たとえ憐れみの心があっても手加減しないことだね。」


「なる、ほど?そうですか?わかりました。」


少女はわかったようなわからないような感じでうなずいた。


「じゃあ、スターリーアイズおねえさんを傷つけたのも、同じ理由ですか?」


「っ!」


教室の雰囲気が一気に重くなった。私は喉が渇くのを感じた。


「それは…」


何か言おうとしたその時、激しい振動が地面から伝わってきた。


「あ?なに?」


リコシェは不思議そうに頭を上げ、私は遠くで魔力の爆発反応を感じた。重々しく、悪意に満ちた気配が伝わってくる。同時に、教室に赤いランプが点灯し、警告音がスピーカーから流れた。


「みんな!避難訓練通りに秩序を保って、すぐに安全な場所に避難して!」


桜庭はスマートフォンを見て、子供たちに避難を促した。不満そうな子供たちは席を離れ、秩序正しく並んで教室を出て行った。


「これは?」


「怪人の襲撃警報だよ。」


桜庭は短く答え、すぐにスマートフォンを操作した。子供たちが通った後の通路に厚い安全扉が降りた。


「こちら桜庭です。Bクラスの子供たちを避難させたところです。ええ、サヨナキドリとリコシェがこちらにいます…ええ、わかりました。」


桜庭先生は私とリコシェを見て、余裕のない表情になった。


「私はこれから防衛任務に参加する。できれば、二人にも一緒に来てほしい。」

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