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お帰り

私はスノーランスの追跡を振り切って、やっと隠れ家に戻ってきた。


隠れ家と言っても、実際は路地裏にぎゅうぎゅう詰めになった中古書店で暮らしているだけだ。Qはこの辺りのことを考慮して、住民票までどこからか手配してくれたらしい。魔法少女の活動がないときは、店番もして、ちょっとした収入も得ている。


「ただいま。」


夜の闇に紛れて、家のドアを押し開くと、玄関の姿見が私の変身した姿を薄暗い光で照らし出した。


鏡に映るのは、当然のことながら美少女。


私の魔法少女としての外見は、乱暴に言えば軍服風の童貞を殺す服とでも言うべきか。姫カットで、後ろ髪には小さな光る星が散りばめられてる。


その黒髪には、白いリボンが映えている。


白のワイドスリーブシャツと、濃紺のベルトがついたミニスカートが組み合わさって、ちょうどいい感じで胸元を強調してる。ベルトは飾りボタンがついてて、ミニスカートの下からは、長靴を履いたスラッとした美脚がのぞく。


肩には同じ色のマントが羽みたいにかかっていて、鮮やかな赤い瞳はちょっと鋭くて、白い顔立ちに桜色の唇が映えてる。どこから見ても魅力的で可愛らしい魔法少女、「サヨナキドリ」だ。


「解除。」


コマンド一つで、鏡に映ったおしゃれな少女はすぐに普段着を纏った姿へと戻った。


面白いことに、変身魔法には肌をキレイに見せる効果があるらしい。夜更かしのせいでできたクマは魔法で隠せるけど、魔法が解けた後にはばっちり現れるんだ。


鏡には、寝不足で少し元気のない、内向的な少女が映っていた。身長が低く見えるのは、多分気のせいだろう。


台所に行ったら、Qが頭の上の長い角を揺らしながら、裸エプロンで料理をしていた。


まあ。彼女のその姿にはもう何も言わないことにした。悪魔のやり方を人間の理屈で理解しようとしても、おそらく時間の無駄だから。


私が食卓に着くと、Qは赤い目でこっちを見たんだ。


「お帰り。サヨ。」


「うん。」


「ラーメン。インスタントだけど。」


「うん。いただき。」


盛り付けられたインスタントラーメンにはチャーシューが入っており、少し野菜が添えられ、卵が一つ入っていた。箸とスプーンを取り、数口吹いてからすすると、私はゆっくりと食べ始めた。


お腹が空いていると、基本的に何でも美味しい。


Qは椅子を引いて私の前に座り、片手で頭を支えた。


「仕事はどう?」


「相変わらず。スノーランスが邪魔して、有意義な情報は得られなかった。」


「残念ね。」


「もし君の方でもっと情報を集められたら、私もそんなに手間取らなくてすむのに。他の連中の妨害は置いといて、普通に話ができる個体を見つけるのは容易ではない。上位個体の情報、組織の有無、生態系、集団の拠点など、聞きたいことは多いんだ。」


愚痴りながら、私はスープを数口飲んだ。ああ、このブランドのスープは悪くない。


「でも、私も他の連中から何か情報を聞いたわけじゃないわよ。あなたのお世話係になってから、他の連中はみんなおしゃべりになって、あなたをちゃんと管理しなさいとか言ってくるばかりで、もう聞き飽きたわ。」


Qは肩をすくめて、そう言った。


「ふむ。実際に何か情報が得られるとは思っていなかったんだ。ただ、ちょっと聞いてみたかっただけ。」


「ところで、もし情報が欲しいなら、転校生になってみるのはどうだろう?同年代の人と接することで何か聞き出せるかもしれない。夏休みもそろそろ終わりだし、新しい学期が始まる。何か手段を使って入学させることはできるかも。」


「同年代?私がアラサーだってのを忘れたか?でも、いいじゃないか。将来の選択肢が増えるのは良いことだ。魔法少女がいる学校に入る方法はあるか?情報を掘り出せるかもしれない。」


「それは保証できないな。行動が目立ちすぎると精霊に気づかれたり、魔法省にも注目されるかもしれないから。」


「そうね。とりあえず学校のことは考えてみるよ。ごちそうさま。」


「どういたしまして。」


Qはお椀と箸を片付けて流しに置き、何かを思い出したかのように振り返った。


「あ、そうだ。興味があれば自己検索してみたら?あなたの活動が話題になっているらしい。」


「…前向きに善処します。地下室に行く。」


「了解〜」


客間に出ると、私は手のひらに魔力を注ぎ、壁を押し下げた。光点が数回舞い、壁が消え去ると、目の前には下り階段が現れた。

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