そして、夜の調べとともに
手袋とマスクを装着し、手術用メスを手に取りながら一心不乱に切開を進めていた。
マスクのせいで呼吸が困難になっているのか、それとも自分の混乱した心情のせいか、自分にもわからない。
エアコンをつけているにも関わらず、絶えず汗が流れ出ている。
「Q、これを広げてくれ。」
「ええ、わかった。」
私は時間と競争している。
手術による切開部から慎重にある物体を取り出す。それは黒い結晶で、血管のようなものが付いており、かつて何か生命体の一部であったことを示している。その物体を保存用の錬金液が入った容器に浸す。
「次。」
「...あのねぇ、少し休むのはどう?あなたはゆうべからずっと眠っていないし、怪人との戦いでの傷もまだ癒えていない。このままだと傷口が再び開くかもしれないよ。」
Qは心配そうに提案したが、私は首を振った。
「怪人の体は時間が経つにつれて劣化する。それはもうわかっている。しかも今回は珍しいA級の怪人だから、この研究のチャンスをしっかりと掴みたいんだ。」
「でも…」
「Qが疲れているなら、先に休んでもいい。私は続けなければならない。」
眼前ほぼ人間と区別がつかないけど、黒い粉末を放つものを切開した。無血色の皮膚からは一滴の血も流れ出なかった。中の構造を細かく調べながら、ノートに目の前の一切を記録した。
「組織の劣化速度は他の低級怪人と同じくらい速いし、一般の怪人と同様にほとんど水分がない。」
小さな組織片を手に取り、軽く摩ると、手の中の黒い物質はすぐに粉末になった。
「構造は人間にとても近い…筋肉、血管、神経、骨がある。異常なのはこの個体の心臟が過去の戦闘で失われているにも関わらず、血管内にだけ黒い液体が存在すること。肌や筋肉では検出されず、まるで飾りのようだ。」
目の前のサンプルの腹部を剖開し、調べ始める。
「…完全な消化器官の構造が確認できない。人間に比べて多くの臓器が欠けている。泌尿器系と生殖器系が欠如している。先ほど神経系が存在するのは確認したが、頭蓋骨の下も水を含まない黒い結晶で奇妙だ。MRIでは役に立たないだろう。その脳組織はスライスして研究するしかないかもしれない。」
一滴の血液のような黒い物質をスライドガラスに塗り、マイクロスコープで見てみた。
「血球について…やはり予測していた通り、存在しない。こんなものがどうやって動くのか本当に疑問だ。生物と呼べないものが、動いたり、あんなことを言ったりするなんて。」
無意識のうちに手に持っていたスライドガラスを強く握りしめた。ガラスが音を立てて砕けた。
「ふざけんな。」
「サヨ…」
「ふざけんな!このような偽りの生命が語る言葉も、間違いなく偽りだろう。ただの敵なのに、聞いたら忘れてしまえばいいのに、どうしてこんなにも記憶に焼き付いて離れない!もし、これが魂を持っていたら、私は一体…」
「サヨ!」
Qが力強く私を抱きしめて、私の独り言を遮った。彼女の体は温かく、淡い花の香りがした。Qの抱擁を感じながら、疲労と痛みで朦朧としていた頭が少し冷静になった。
「…ごめん。取り乱してしまった。」
思わず、私の手から手術用メスが滑り落ち、床に澄んだ音を立てた。
「サヨ、あなたはもう十分頑張った。今はまず休息しよう。あなたの怪我が心配だ。今のあなたには判断力が欠けていて、研究を続けるのは賢明ではない。まずは自分の状態を回復させよう。」
「…ああ。そうしよう。」
緊張感が解けると、体から力が抜けたように感じた。Qに支えられながら、私は地下室のソファによろめきながら横になった。
「Q、私はもう約束したんだ。一片の肉、一片の骨、すべてを私の力に変えると。」
「知ってるわ。あなたならきっとできると信じている。」
「たとえその虚偽の命の中に真実の心が存在していても、私が決して諦めない。」
まるで自分自身を説得するかのように、私はつい繰り返し言葉を口にしてしまう。
「私は、止まるわけにはいかないんだ。もう決めたんだ。たとえ最後に知る真実が何であっても。それが君との契約であり、私自身の意地でもある。前に、前に進むしかないんだ。」
「わかってる。わかってるよ。」
Qは悲しげな表情で手を伸ばし、私の目を閉じさせた。暗闇の中で、Qの手のひらが少し冷たく、とても心地よかった。
「ごめんね、こんなことをお願いして。サヨにとって、これからの道のりが長くて困難だろう。」
母親が子供を撫でるように、Qが私の頭を優しく撫でているのを感じた。
「でも今は、休むのよ。」
Qの囁きに耳を傾けながら、私は夢の中へと沈んでいった。




