第59話 正義の人・アランシモンの交渉術
スコット国王は早々にアランシモンと会談を持った。
「頼みたいのは他でもないスザンヌの件だ」
とスコットが切り出し、こう続ける。
「グランド国が1万セーグルを提示している。そしてシニョーラ公国のジュネ2世も、グランド国に身柄の引き渡しを検討している」
アランシモンが言う。
「セーヌ国は身代金を用意できないのですか?」
「私が用意できるのは五百セーグルが精一杯だ」
「ではスザンヌを救えないじゃないですか」
「だから知恵を借りたい。助けてもらえないだろうか?」
アランシモンは少し考えて、こう答える。
「承知しました。しかし国王にお願いがあります」
「言ってみてくれ」
「今回スザンヌが捕まったのはなぜだかわかりますか?」
黙ったままのスコット国王。
アランシモンが続ける。
「それは宮廷のシャビネスがグランド国軍と内通して情報を流したからです」
「まさか」
とスコット国王は信じられない表情だ。
「まさか……って、あなたも一枚からんでいたんじゃないですか?」
「そんなわけないだろう」
「しかし、そう思わせるほど、宮廷はスザンヌへの妨害を行っていたんです」
「……」
スコット国王が沈黙する。
アランシモンが言う。
「彼らの妨害工作を止めてください。クレバの戴冠式以来、シャビネスたちはセーヌ国軍の勝利を阻止しようとしています。身内に敵ありです」
スコット国王は腕組みをしつつ、
「そのまま信じていいのかわからないが、付きの者に調べさせてみよう」
「ぜひそうしてください」
アランシモンが言う。
アランシモンはすぐさま、パビリオンにデシャンを訪ねて、こう言った。
「私を巻き込むように国王に依頼したのは、デシャン公、あなたでしょう?」
デシャンは大笑いして、こう答える。
「さすが、よくわかっていらっしゃる」
「私に光を当ててくれることには感謝している」
「こちらこそありがとう。事を動かすには、あなたの力がどうしても必要だった」
アランシモンが、あらたまって、言う。
「わかりました。しかしあなたにもお願いがある」
「何でしょう?」
「捕虜になったスザンヌにグランド国が高額の身代金を提示していることはご存じでしょう」
「ええ」
「あなたに、その半分の身代金を用意してほしい」
「それはまた、とんでもない相談ですね」
「あなたは私たち貧乏騎士とは違い、領土を持っている。資産も豊かだ。少し頑張れば用意できるはずです」
「簡単に言わないでください」
「もし準備いただけるなら、私はその恩を”借り”として、生涯をかけて返し続けることを誓いますよ」
デシャンは少し黙っていたが、
「あなたがそこまで言うのなら、そのチャリティーに乗りましょう」
デシャンが続ける。
「しかし私の用立てだけではグランド国に対抗するのは無理でしょう。足りない分はどうするおつもりですか?」
「他の騎士にも声を掛けます。合わせた額で交渉を行います」
「さすがは”正義の人”。頼りになりますな」
今夜も20時頃に投稿しますね♡




