第58話 人を使い捨てる者は、自分も使い捨てされる
グランド国の提示した身代金1万セーグル。
こればセーヌ国民の話題となっていた。
阿闍梨公が流した情報が大きく拡散したのだ。
これに青ざめたのがスコット国王だった。
セーヌ国の騎士たちからはもちろん、国民からも厳しく批判されている。
サントーレが攻撃されても出撃命令を出さない。
志願兵を率いて出撃した英雄スザンヌは見殺し。
結局、スザンヌを捕虜にされてしまった。
〈何もできない無能の国王〉
そんな不満が噴出しているのである。
シャビネスがスコット国王に言う。
「気にしてはいけません。セーヌ国は財政難なんです。身代金など出せません」
シャビネスは天敵スザンヌがいなくなるのは大歓迎なのだ。
追い込まれるスコット国王。
そこに手を差し延べるたのが義母フランシーヌだった。
彼女はスコットに言う。
「あなたはスザンヌのおかげで正当なセーヌ国王に戴冠できました」
フランシーヌが続ける。
「その後、スザンヌと正しく向かい合えましたか?」
スコット7世が言う。
「いえ。もうスザンヌの役目は終わりました。もう勝手なことはされたくないんだ」
フランシーヌが言う。
「あなたはスザンヌを使い捨てようとしたのですね」
彼女が続ける。
「人を使い捨てる者は、自分も使い捨てられます。このままではあなたも不幸な道をたどります」
スコット7世は、はっとした表情になった。
自分が抱えてきた不幸。
それは実母に裏切られたことに起因していた。
誰も信じられなくなっていたのだ。
〈人は利用するだけのもの〉
もはや、そう思うしかなかった。
しかし、その結果。
自分はこれだけの不幸に囲まれてしまった。
誰も信じられなくなってしまった。
「あなたは幸せになっていいんです」
フランシーヌが言う。
さらにこう続ける。
「そのためにスザンヌを救いなさい。そして国民の支持を得て、エール国を再興しなさい」
スコット7世の瞳から熱いものがあふれた。
スコット国王はまず、デシャン司令官に声をかけた。
「捕虜にされたスザンヌを解放できないだろうか」
今のセーヌ軍の中で最も頼りになりそうなのが彼だった。
人望があり、ある程度の財力もある。
しかしデシャンの答えはこうだった。
「私の力では無理です。バトラーもナルマンジー遠征ですし、今回は勝算がありません」
「何とかならないのか?」
「力及ばずで申し訳ありません」
うなだれるスコット国王。
デシャンが言う。
「もし、国王からアランシモンに助力を頼んでいただけるなら、私も動きましょう」
スコット国王はしばらく迷っていた。
デシャンが言う。
「この難局、彼が最も頼りになる男です」
それを聞いて、スコット7世は何かを割り切ったように、こう言った。
「わかった、言われた通りにしよう」
明日もお昼くらいに投稿しますね♡




