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第56話 ディート城の名物女

 シニョーラ公国軍に捕まったスザンヌ。

 後ろ手に縛られ、並んだ兵士の前に立たされ見せしめにされた。

 兵士たちから上がる勝どきの声。

 悔し涙がにじむスザンヌ。


 その後、逃げようとしたため、足も縛られた。

 そして荷積み用の馬車に乗せられる。

 

 シニョーラ公国の阿闍梨公は、


〈すぐにスザンナを移送せよ〉


 とジュネ2世に指示する。


 スザンヌの身柄の行方は戦局を大きく変える。

 周辺に潜むセーヌ国軍に絶対に奪回されてはならない。 

 確実に自国に運んで幽閉するのだ。


 馬車が向かったのは、ジュネ2世の本拠地であるディート城だった。

 城に設けられた塔の最上階にスザンヌは軟禁された。


 翌日からジュネ2世の身辺は騒がしくなった。

 彼のもとにはスザンヌの身柄を手に入れようと続々と交渉人がやってくる。

 グランド国をはじめ、味方のセーヌ国、さらに中立国からも申し出があった。

 だがスザンヌにとっては不利な展開だった。

 身内から提示された身代金はあまりに低かった。

 スコット国王は国の財政難のため大きな金が動かせない。

 スザンヌを慕う騎士のバトラー、レオ。

 彼らは勇名が高い。

 しかし有力者に頼りながら、なんとか暮らしている身分だ。

 早い話がみな貧乏暮らしである。

 これに対してグランド国は莫大な身代金をジュネ2世に提示していた。

 もちろん裏で糸を引いていた者がいる。

 グランド国の総司令官・ストリー二。

 ラシン大学元学長のグレールだ。


 交渉の窓口はジュネ2世だ。

 しかし決定権は彼にはない。

 実権は上司にあたるシニョーラ公国の領主・阿闍梨(あじゃり)公にある。


 阿闍梨公は生き残りをかけて見極めていた。

 グランド国とセーヌ国、どちらがいつ、勝利するのかを。

 そして今のタイミング。

 どちらの味方をするのがシニョーラ公国にとって最適解なのか。

 ジュネ2世、周囲の識者にも相談しつつ、じっくり考えていた。


 いっぽうで情報戦も仕掛ける。

 グランド国から提示された身代金の額。

 これを交渉をもちかけてきた各国の陣営に流した。

 これで条件は釣り上がる。

 阿闍梨公の立場も上がっていく。

 交渉をより有利に運ぼうという思惑だった。


 さて、超重大なゲストを領地内に迎えてしまったジュネ2世。

 スザンヌの監視を、最も信頼を置く2人に命じた。

 

 一人は叔母のアンジェリーナ。

 もう一人は妻のカトリーヌだ。

 

 特にアンジェリーナはディート城で最も有名な人物だ。

 ひとつは広大な領地を相続していること。

 もうひとつは生涯独身を貫いていること。

 地元では親しみをこめて「アンジェリーナ嬢」と呼ばれている。


 またアンジェリーナにはスコット国王との縁があった。

 若いころはスコットの毒母・サファリーヌの侍女を務めていた。

 スコットの洗礼の代母も務めており、彼の名付け親でもある。

 だからスザンヌのことは他人だとは思えなかった。


 ディート城に設けられた塔の最上階の部屋。

 監視を命じられた2人の女性の前にスザンヌが運ばれてきた。

 手足を縛られ、さるぐるわをされている。


 それを見てアンジェリーナは涙を浮かべた。


「スザンヌちゃん、痛かったでしょう」


 その言葉や口調にスザンヌは思わず、母シャルロットの面影を思い浮かべた。


「すぐに縄を解いてあげるね」


 この人は暖かい人だ。

 裏切ってはいけない。

 アンジェリーナは暖かいお湯を用意して、柔らかい布で体を拭いてくれた。

 スザンヌの目には涙がこぼれていた。


明日もお昼ごろに投稿しますね♡

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