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第53話 孤立無援

 グランド国の総司令官ストリー二がサントレールの包囲指令を下した。

 第一陣の軍勢は阿闍梨(あじゃり)公の命を受けたシニョーラ公国・ジュネ2世の部隊だ。

 領地を出発してサントレール北部に向かう。


 一方のエール国軍。

 デシャン、バトラーをはじめ、出兵すべきだという声が騎士たちから挙がる。

 しかしスコット国王は動かなかった。

 そればかりかスザンヌを指揮官候補から外してしまった。


 シニョーラ公国・ジュネ2世の部隊は早々にサントレールに到着。

 攻撃のための駐屯地を「ルンダの森」近くに設営し始めた。

 さらに、シニョーラ公国の領主・阿闍梨公も動く。

 自らも軍勢千人を率いてサントレールに出発した。

 グランド国総司令官ストリー二に、阿闍梨公自身も汗水垂らしていることを見せるためだった。


 もはやサントレールは完全に包囲されて孤立するのを待つのみだ。

 ここに来てもスコット国王の出撃命令は出ない。


 一方、スザンヌのもとには多数の志願兵が集まっていた。

 総勢を合わせると五百人ほどの軍勢である。

 スザンヌが軍旗を掲げて声を上げる。


「エール国の同士を守るため、出撃しましょう!」


 兵士たちが大歓声でそれに応えた。


 スザンヌの行軍の途中、知らせが入った。

 シニョーラ軍がサントレールへの攻撃を開始した。

 軍勢は七百人ほどだという。

 スザンヌたちの志願兵部隊は行軍を急ぐ。


 敵国の攻撃開始の知らせが入っても、スコット国王は援軍を送ろうとしなかった。

 騎士だけでなく、国民からも批判の声が上がり始めた。


 スザンヌ志願兵部隊はサントレールに接近したところで敵部隊を発見した。

 ルンダの森に駐屯するジュネ2世が率いる軍勢だ。

 

 明日は休日であった。

 慣習上、軍事行動はあまり行われない。

 しかしスザンヌは決断した。


「明日、奇襲を行いましょう!」

 

 翌日の夜明け、白馬に乗ったスザンヌが槍に付けた軍旗を掲げて進む。

 それに続く志願兵部隊。


「私たちは神の名のもとに戦うのです! あいつらを叩きのめしましょう!!」


 スザンヌの号令が響く。

 志願兵たちの第一陣が一斉に突撃する。

 勢いでシニョーラ公国軍を圧倒しようとする作戦だ。

 スザンヌは志願兵たちを3つの隊に分けていた。

 この後、第二陣、第三陣が波状攻撃をすることになっている。

 

 しかし奇襲にもかかわらず、シニョーラ軍の防戦には焦りがなかった。

 なぜか余裕さえ感じられるのだ。

 まるで攻撃を予想していたかのように……。

 かまわずスザンヌは第二次の突撃を開始させる。

 続いて、第三次攻撃。

 戦況は互角、一 進一退の戦いとなった。

 

 膠着状態となった戦い、時間は刻々と経過していく。

 すると見張りの兵が叫びながら駆けてきた。


「敵軍発見!大援軍です!!」


「数は?」


 スザンヌが聞く。


「千、いや、2千いるかもしれません」


 それを聞いたスザンヌは即刻、兵士たちに命じた。


「全員退きなさい! サントレールの城に逃げ込みなさい!!」


 スザンヌに、運は味方していなかった。 

 実は前日、偵察中のジュネ2世がスザンヌの部隊を発見していた。

 ジュネ2世は阿闍梨公のもとに早馬を走らせた。

 そして今日に間に合うよう、援軍到着を急いでもらっていたのだ。

 もちろんスザンヌの奇襲も予測済みであった。 


 志願兵たちはスザンヌの撤退に従う。

 次々とサントレールに走り、城門の中に逃げ込んでいく。

 その撤退を、軍の最後尾で戦いながら助けるスザンヌ。


 ようやくほとんどの志願兵が城門に吸い込まれた。

 スザンヌも、兄のアンリとブランとともに、城門近くに戻る。

 さあ、城に戻って戦いの態勢を立て直そう。

 その時――。

 城門が突然、閉じられた。

 施錠の音がする。

 呆然とそれを見送るスザンヌたち。

 

 その裏で、ほくそ笑む影があった――。



今夜も投稿しますね♡

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