第47話 最強の難敵
首都ラシンを目前にして、セーヌ国軍は二手に分かれた。
本隊と偵察隊だ。
本隊はカルバリン砲隊、スコット国王、その他の兵士たち。
彼らはレイニー・ストーンの丘に野営地を設営した。
首都ラシンがよく見渡せる高台だ。
一方の偵察隊はスザンヌ、バトラー、アランシモンの部隊。
彼らはラシンのすぐそば、バスケス村の村人に頼み宿を手配してもらった。
そこを拠点にして城門の偵察に向かう。
するとスザンヌは、あらためて思い知った。
ラシンの守備は想像以上に堅い
セーヌ国を嫌う市民の反発もどんどん高まっているようだ。
スザンヌは城門に接近しようとする。
するとのその動きは、すぐに気づかれた。
戦闘態勢をとる守備兵たち。
門の内外も、すぐに部隊が一斉に隊列を整える。
そして長弓隊も発射準備を完了している。
村に戻ると、住人たちが説明してくれた。
「防衛隊の中心になっているのはラシンの市民兵たちです」
もちろんグランド国の兵士たちもラシンに駐留している。
しかし本気で街を守ろうとしているのはラシンの市民たちだ。
彼らは志願して市民兵となっている。
ラシン警察も全面協力して守備隊に加わっている。
バトラーとレオが偵察に向かったときは戦闘となった。
長弓隊がロングボウを放ち、守備兵が斬りかかってきた。
2人はとっさにロングボウを跳ね返し、馬に乗り込む。
そして守備兵が追いつく前に走り去った。
屈強な2人でなければ、おそらく犠牲になっていただろう。
攻撃開始の前日。
スザンヌとバトラーはレイニー・ストーンに野営する本隊を訪れた。
ラシン攻撃の打ち合わせをする。
最初にカルバリン砲隊がラシンの各城門を砲撃。
城門を破壊し守備兵を蹴散らして、侵入の足がかりを作る。
砲撃終了とともに、スザンヌたちが市内に突撃する。
攻撃の手はずを決めてバスケス村にもどるスザンヌ。
前世での戦いを思い出していた。
〈私はここで負傷した。それが悲劇の始まりだった〉
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前世、スザンヌはアルドル門から突撃した。
しかし城門の前の水堀を超えるときに事件は起きた。
堀は大きく足元も悪い。
動きが鈍る。
そのとき長弓隊が発射したクロスボウが太ももに突き刺さった。
スザンヌはバスケス村に連れ帰られた。
そしてセーヌ国軍の撤退が決まった。
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ここから魔女裁判への転落が始まっていく。
〈この運命を変えなきゃ!〉
スザンヌはもっとも水堀が越えやすそうな門を探る。
偵察で知る限り「ノルドサ門」がそこにあたる。
〈今度はそこから突撃しよう! ロングボウを受けてはいけない!!〉
覚悟のスザンヌ。
決戦を前に村の教会を訪れて告解を行なった。
そして今度こそ、うまくいくように祈る。
〈もし何かあったときは、神様のもとに行けますように〉
スザンヌの戦いの準備は、すべて完了した。




