第46話 秘密兵器
前世でスザンヌを地獄に落とした首都ラシン奪回作戦。
今回もこのまま戦えば負けてしまうだろう。
エゾンの戦いでは奇襲攻撃で勝利した。
だが一歩間違えば大敗を喫する可能性もあった。
いまだに野戦でのセーヌ国軍の弱さは解決していない。
セーヌ軍の最強の武器である騎士。
それはグランド国の誇る長弓隊に対して相性が悪いのだ。
ロングボウは射程距離が長い。
騎士が突撃しても、相手にたどり着く前に射貫かれてしまう。
スザンヌはエール国軍が開発した新兵器に目をつけた。
城攻めの専用兵器として開発されたカルバリン砲だ。
威力抜群で、城自体を破壊するとともに、守りを固める相手もこれで蹴散らせる。
スザンヌはバトラーに提案した。
「これからの野戦、まずはカルバリン砲で先制攻撃しましょう」
バトラーは明らかに驚いた表情だ。
そして即座に言う。
「絶対ダメだ! それは騎士道に反するだろう」
バトラーが言うのも無理はない。
カルバリン砲は城攻めの専用兵器だ。
しかし野戦で使おうという考えは誰も持っていなかった。
セーヌ国の騎士が考える野戦。
それは騎士による1対1。
これが頭にこびりついている。
しかしエゾンの戦いではそれを変えさせて勝利した。
スザンヌはカルバリン砲の使用に反対するバトラーを説得する。
「騎士道というなら、グランド国の長弓隊も騎士道に反しています」
バトラーが言葉を失う。
「その長弓隊にセーヌ国軍は負けてきたのです」
というスザンヌ、こう続ける。
「長弓隊に対抗できるのはカルバリン砲だけですよ。射程距離も長いし、威力も大きいのです」
バトラーが落ち着きを取り戻し、こう言う。
「おまえの言う通りだ。大砲隊を組織しよう」
こうしてセーヌ国軍はカルバリン砲隊を結成した。
いっぽうでラシン進撃を指示したスコット7世が、
「遠征には私も同行する」
と言い出した。
シャビネスら宮廷貴族も同行するという。
バトラーが眉をひそめてスザンヌに耳打ちする。
「余計な口出しをしてこなければいいが……」
ラシン遠征の軍勢は結局、千人を超えた。
〈今回の陣容は小回りがきかない……〉
不安を抱えつつスザンヌは出発した。
最初にセーヌ国軍が拠点としたのはキルト城だ。
そこに敵軍接近との情報が入る。
相手の陣容はグランド国とシニョーラ公国の連合軍だ。
その司令官はラッシュコード。
スザンヌとバトラーは馬を走らせて敵軍の偵察に向かった。
軍勢は約千人。
人数はほぼ互角だ。
バトラーが言う。
「相手の数も多いが、対抗できそうだな」
スザンヌが答える。
「ええ、カルバリン砲で先制攻撃しましょう!」
ほどなく両軍は激突した。
セーヌ国軍のカルバリン砲がグランド国軍兵士を吹き飛ばす。
敵軍に明らかに驚きの色を見せている。
しかしグランド国も自慢のロングボウで対抗。
戦いは白兵戦ではなく、距離をとっての撃ち合いとなった。
「狙いはグランド国軍の長弓隊だ」
バトラーが叫ぶ。
カルバリン砲が轟音をとどろかせ次々と炸裂する。
グランド国軍が誇る長弓兵たちが吹っ飛んでいく。
長弓隊は必死でロングボウを発射して対抗する。
セーヌ国軍も少なからぬ打撃を受ける。
しかしバトラーはカルバリン砲隊を鼓舞する。
「優勢なのは俺たちだ。撃ち負けるな!」
その言葉通り、カリバリン砲は威力と射程距離で勝っていた。
時間が経過するにつれ、グランド国の長弓隊は崩れていく。
敵司令官のラッシュコードが兵士たちに叫ぶ。
「このままでは全滅する! 全員、退却だ!!」
グランド国軍が敗走していく。
この勝利は大きかった。
セーヌ国軍は勢いのまま次の目的地に向かう。
首都ラシンの近隣にある都市・ケルシュノーだ。
するとケルシュノーは抵抗することなく、即座に降伏した。
新兵器・カルバリン砲の威力を聞きつけていたのだ。
これで首都ラシン奪回戦への道は開けた。
明日はきっと早めにいちど投稿しますね♡




