表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/64

第44話 スコット国王、スザンヌを見殺しにしたその末路

 ランシーヌが手をかざすと、再びスクリーンが浮かぶ。


「ではスザンヌ、お見せします。あなたが処刑された、その後のスコット国王です」


**************************************

 

 スコット国王は「愚かな王様」と批判を浴びる。

 その原因はもちろんスザンヌだった。

 スザンヌが捕虜にされた時、速やかに彼女を取り戻せなかった。

 その結果、彼女は魔女裁判で火あぶり処刑された。

 国民からは「国の救世主を見殺しにした」と怒りの声が噴出した。


 彼を助けようと助言したのが義母フランシーヌだった。


「アランシモンを呼び戻しなさい」


 国民からの人気が高いアランシモンを味方につけて乗り切ろうというのだ。

 彼は軍の指揮能力、政策運営能力も優れている。

 結果、アランシモンは軍の最高指揮官としてスコット国王を大いに助けた。

 グランド国との戦いも優勢に進んだ。


 しかし一方では、複雑な家庭環境がスコット国王を苦しめ続けた。

 実父である前国王は精神を病んで国王の座から引きずり降ろされている。 

 代わりに政権を握ろうとした実母には「政敵」として虐げられ続けた。

 それだけに彼の家庭も通常の平和を保てなかった。

 息子ロリスは二度に渡って謀反を起こした。

 そして彼の愛人も毒殺と思われる変死を遂げた。

 まったく心が休まることのないスコット王家。

 スコット7世は疑心暗鬼の日々を送った。

 いつ、自分が毒殺されてもおかしくない。

 食事をしない日々が続き、衰弱の末、早死にしてしまう。


**************************************


〈せっかく戴冠式を挙げたのに、かわいそう〉


 また涙をにじませるスザンヌ。


〈せめて普通の暖かい家庭の愛情を味あわせてあげたかった〉


 自分の悲運はそっちのけので、そんなふうに思う。


_____________________________________________________________


「天使様、聖女様、また私のもとを訪れてくれてありがとうございます」


 スザンヌはお礼を言う。

 大天使・ボードルが言う。


「これは、使命を果たしてくれた、あなたへのご褒美(ほうび)です。こちらこそ、ありがとう」


 白い光が、彼らとともに消えていく。

 天からの声、今までありがとう。

 スザンヌは心からの感謝を捧げた。


 さて、これからだ――。

 たくましいアランシモンはさておき、この人たちを放り出していくわけにはいかない。

 スザンヌはセーヌ国軍に残ることを決意した。


 翌朝、スザンヌは自分の決意を事務官に告げた。

 事務官は小躍りしながら、軍の上層部に報告に走った。

 スザンヌは気持ちを切り替えて


〈もう少し、頑張りましょう〉


 と自分に言い聞かせた。

 しかしここからは(いばら)の道が待っている。


〈果たして乗り越えられるのかしら?〉


さっそくやって来たのがバトラーだ。


「スザンヌ、残ってくれるんだって! ありがとう」


 スザンヌは微笑んで言う。


「心配かけてごめんなさい。これからもよろしくね」


「俺、あんな風に泣いてすがったたりして、みっともなかったな」


「そんなことないわ。私もあなたのことが大事だから」


 また少し目をうるませるバトラー。

 しかし、気を取り直して言う。


「さっそくだが、ラシンへ向かう準備を始めよう」


「何か命令があったのですか?」


「いや、まだない」


「では、なぜ?」


「首都ラシンを取り戻すタイミングは今しかない」


「なぜ、今なのですか?」


「スザンヌ……」


 バトラーはスザンヌの顔をまじまじと見た。


「どうしたんだ、今までのスザンヌなら、ふたつ返事でラシン攻撃に乗り出していたぞ」


「……そうかしら?」


 確かに前のスザンヌなら、今ごろはラシン遠征を強硬に主張していただろう。

 それはスコット国王の名誉のためだ。 

 

 前世のスザンヌは、こう強く思っていた。


 確かに王は、クレバで戴冠式を上げた。

 形の上では正式なセーヌ国王だ。

 しかし国はまだ、グランド国占領下の地域が多い。

 特に首都ラシンが奪回できてないのは国にとって屈辱的なことだ。

 ここを復帰させて、スコット7世を全セーヌ国の王にするべきだ。


 しかしそこがボタンの掛け違いだった。


 肝心のスコット国王が、そんなこと全く思っていないのだから。

 今のスザンヌには、それがわかる。

 

 スザンヌは、バトラーに言う。


「ラシン攻撃は正式に命令が出てからにしましょう」


「わかった、おまえがそう言うなら、今は待とう」


 バトラーは渋々ながら納得する。


明日も夜になる前に投稿しますね♡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ