第43話 優美な貴公子 衝撃の変貌
ランシーヌは少し沈黙した後、告げた。
「では、今度はレオ・サンタナのその後です」」
貴公子と呼ばれて、とても優しくて優雅で、紳士的だったレオ。
〈彼こそ、幸せになっていてほしい〉
スザンヌは切に願う。
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スザンヌが捕まった後のレオは、目に見えて様子がおかしくなっていた。
腹黒い宮廷貴族・シャビネスにいいように操られてしまう。
彼にそそのかされ、弱い貴族の領地を暴力で略奪していく。
正義の心を失ったように、シャビネスの私腹を肥やす手先に成り下がってしまったのである。
しかしスザンヌへの思いは消えていなかった。
首都・ラシン奪還戦でスザンヌが捕らえられたと聞くと、彼は動いた。
自分の部隊を率いて、グランド国軍へ攻撃を始めたのだ。
心酔する女神を何としても取り戻したいという思いだった。
しかしあえなく惨敗。
命からがら敗走する結果となった。
レオの心はどんどん荒れていった。
彼が生まれたサンタナ家は裕福な家柄である。
領地も資産も十分だったはずだ。
しかし湯水のように財産を浪費し、怪しい錬金術に溺れ始める。
財産目当ての詐欺師もどんどんすり寄ってくるようになった。
そして彼はさらに得体の知れない黒魔術・白魔術にハマり始める。
結果、彼は悪魔に憑かれてしまったのだろうか。
それとも、彼の中に眠っていたどす黒いものが表に出たのであろうか。
恐ろしい行動を取り始めた。
部下の兵を使って、数えきれないほどの幼い男の子たちを捕えさせた。
そして彼の巨大な屋敷で、凌辱して、虐殺した。
どのような嗜好が彼を信じられない行動に走られたのだろうか。
スザンヌにはわからない。
犠牲になった数は少なくとも数百人。
あるいは2千人近くいたのではないか、とも言われている。
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スザンヌは悲しみの嗚咽を漏らしている。
もう涙は枯れ果てたほどなのに、まだ涙があふれる。
もうこれ以上知ったら、精神が崩壊するかもしれない。
しかしスザンヌは涙でしゃがれた声で懇願する。
「他の騎士も見せてください」
聖女ランシーヌは、
「では、アランシモンを見ていただきましょう」
とスクリーンを映し出す。
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前世でのアランシモンはセーヌ軍の苦境を救った。
しかし問題は宮廷にやっかいな敵がいたことだった。
スコット国王の取り巻きの貴族・シャビネスである。
連日、国王にアランシモンの悪口を吹き込んでいた。
〈癇癪持ち、頑固で危険な男〉だと。
その結果、アランシモンはエール国軍からは追放されてしまう。
前世ではクレバの戴冠式にも参加していない。
しかしアランシモンは「打倒グランド国」の信念を曲げなかった。
グランド国軍からの誘いもあるが、きっぱりと断る。
その後、スザンヌが魔女裁判で処刑される。
すると、それを止められなかったスコット国王と宮廷に国民の批判が集中した。
これにより国民の間にアランシモンの復帰を待望する声が高まる。
宮廷に復帰した彼はセーヌ国の総司令官となった。
アランシモンはスザンヌの遺志を継ぐようにグランド国と戦った。
そして勝ち続けた。
さらにかつての盟友に接近した。
シニョーラ公国の領主・阿闍梨公である。
アランシモンはセーヌ国とシニョーラ公国の講和を目指していた。
セーヌ国の総司令官となったことで彼はこれを一気に推し進めた。
これが実を結び「ラマスの和約」が結ばれる。
これで勢いに乗ったアランシモン。
その後もグランド国軍を順調に撃破していった――。
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〈アランシモンは心配なかったのね。よかった〉
スザンヌはようやく泣き止んだ。
そして聖女ランシーヌにお願いする。
「よかったらスコット国王のその後も見せてもらえませんか?」
「いいでしょう」
ランシーヌが了承する。
今夜も投稿しますね♡




