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第36話 甘いささやき

 後方に控えていたバトラーとスザンヌの部隊も動いた。

 グランド国軍の騎士たちへ攻撃を開始する。

 白馬に乗って白く輝く軍旗を掲げるスザンヌ。

 セーヌ国の騎馬隊は彼女を守るように敵陣に突っ込んだ。

 まさに見せ場。

 騎士たちの闘志は最高潮に高まっている。

 セーヌ国軍はほぼ無傷のままグランド国軍を押し込んでいく。


 他の部隊はグランド国軍の後方からも回り込み、包囲する。

 

 一方のグランド国はタルボットの軍勢が必死で応戦している。


 グランド国軍の陣形の中央には総司令官・ストリーニが構えている。

 彼は苦悩していた。

 奇襲のシナリオは崩され、軍は取り囲まれている。

 撤退か? 抗戦か?


 そこにタルボットがやってきた。

 顔を真っ赤にして激高している。


「あんたのせいだ。あんたが腰抜けで判断が遅いからこうなった!」


 怒りのままにストリーニに怒鳴り散らす。


「俺の軍はここで何とか持ちこたえる。あんたの軍は今から前線を助けに行け!」


「……わかった」


 ストリーニは軍勢を率いて、前線への援軍に向かった。


 ところがストリーニの動きを見た長弓兵たちは、さらに慌てた。


「ストリー二総司令官が動き出している。撤退するんじゃないか」


「俺たち、このままでは逃げ遅れるぞ」


 長弓兵の動きを見た前線の騎士たちも大混乱に陥った。


「逃げるみたいだぞ!」


「撤退指示が出たのか?」


 グランド国兵士たちに疑心暗鬼が広がっている。

 

 ストリーニ将校が前線に駆け付けたとき、そこにもう前線部隊はいなかった。

 グランド国軍は完全に戦意を失い、我を争って逃げ始めていたのだ。


 スザンヌは軍旗を掲げながら前進していく。

 するとそこには、呆然とした表情で立ち尽くすタルボット司令官がいた。


「タルボットさん」


 スザンヌが声をかけると、タルボットがようやく声を絞り出した。


「オルレアンの乙女、また会ったな」


 タルボットは苦笑いを浮かべながら言う。


「まったくかなわなかった。完敗だ」


 タルボットは駆け付けたセーヌ国の騎士により捕虜として捕らえられた。


 ストリーニ総司令は残ったわずかな部隊とともに敗走した。

 名将の名が地に落ちる、歴史的な惨敗だった。

 なんとか首都ラシンまで戻ったが、その戦いは批判の的となった。

 その後は過去の勲章まで剥奪される始末であった。


 これにて「バーレル作戦」は成功した。

 スコット皇太子は功労者をマルカ城に呼んだ。

 スザンヌ、バトラー、テリー、ルナールだ。

 デシャンはオルレアンを留守に出来ず欠席である。


 マルカ城の大広間。

 スコット皇太子は開口一番、スザンヌに言った。


「呼んだ人数が、ひとり多いのではないかな?」


 そこにはアランシモンの姿があった。

 宮廷を追放され、しかもスコット皇太子の取り巻きの貴族・シャビネスの天敵である。

 シャビネスが声を上げる。


「アランシモンは宮廷の敵だ。今すぐ追い出せ!」


 しかしスコット皇太子は、


「まあ、報告だけならよいではないか」


 とそれを諫める。


 この前日、スザンヌはアランシモンの説得にあたっていた。

 皇太子への謁見にサプライズ登場してほしいというスザンヌの申し出。

 これをアランシモンは強硬に拒否していた。


「今の俺は出入り禁止になっているんだ。おまえの顔にも泥を塗るぞ!」


 スザンヌは心中、こう思っている。


〈確かにあなたにとっては今は表舞台に出たくないでしょう〉


 実は前世、アランシモンとスザンヌのかかわりはここで途絶えてしまった。


〈あなたはきっと私の死後に活躍したのでしょう。でも今の私にとってあなたは必要なの〉


 そう思うスザンヌはアランシモンにこう訴える。


「あなたがいないと私はイヤなの」


 超強気な英雄スザンヌの乙女発言に、一瞬、目が点になるアランシモン。

 スザンヌがささやく。


「本当なの。あなたがいないと生きていけない」


 これを言われて完全に気が変わったアランシモン。

 喜び勇んで皇太子への謁見に参席することになった――。


明日は祝日ですね❤

午後に一度、お会いしたいです❤❤

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