第33話 身内に敵あり! 本当の味方は誰!?
グランド国軍・アマゴット司令官の腹わたは煮えくり返っていた。
セーヌ国軍のスザンヌたちに、してやられたからだ。
待ち構えていたマン=パル=ブランの軍事基地は迂回されてしまった。
そしてバーレル川の橋だけを攻め落とされ、先に進まれたのだ。
やられたら、やり返すしかない。
アマゴットはセーヌ国軍の次の動向を探った。
するとスザンヌたちは、バーレル川のさらに下流の街に向かっていた。
ジャスギャンである。
セーヌ国軍はバーレル川のすべての橋を抑えようとしているのだろう。
次の狙いは川沿いの街・ジャスギャンに違いない。
そこにグランド国の通信使から知らせが入った。
「ストリーニ将校が率いる援軍がそちらに向かっています」
あのカリスマ将校が率いる4千人の軍勢が来る。
これを聞いて、タルボットは思う。
〈これはグランド国とセーヌ国の決戦になる!〉
舞台はおそらくジャスギャン。
〈自分の軍勢2千人を合わせれば、きっとセーヌ国軍を叩ける!〉
タルボットの胸は踊った。
ジャスギャンは小さな街だった。
ここはマン=パル=ブランとは作りが全く違う。
街全体を制圧しないと橋にはたどり着けない。
ジャスギャンの司令官・チャールトンは援軍をひたすら待っていた。
街の外には防衛部隊を待機させ、援軍が来るまでなんとか持ちこたえようとしている。
しかし援軍は、いまだに来ない。
代わりに来たのは、見張りの者からの知らせだった。
「セーヌ国・スザンヌたちの大軍勢が接近しています」
チャールトンは頭を抱えた。
先頭はスザンヌの白い軍旗。
セーヌ国軍がジャスギャンの街に攻め込む。
街の防衛部隊が次々と突破される。
司令官・チャールトンは悟った。
このままではもたない。
そこで覚悟を決めて宣言した。
「街の防衛線をすべて放棄せよ! 総員、ジャスギャン城に結集だ!!」
すべての戦力を城に集中させる。
援軍が来るまで、なんとかしのぎたいという考えだ。
しかしセーヌ軍は攻撃の手をゆるめない。
城を攻め落とすための投石機が守備隊を蹴散らし、大砲が城壁を破壊していく。
グランド国兵は次々に倒れていく。
城の監視塔も砲撃で次々に破壊されていく。
夕方になる頃には、守備兵はかなり手薄になっていた。
監視塔も半数以上は破壊されてしまった。
いつセーヌ国軍に突入されてもおかしくない状態だ。
司令官・チャールトンは絶叫した。
「ストリーニ将校の援軍は、いったいいつ到着するんだ!」
マン=パル=ブランの軍事基地を出発したアマゴット司令官。
ストリーニ総司令官が率いる四千人の援軍と合流することができた。
タルボットは会うなり、ストリーニに訴えた。
「すぐにジャスギャンに向かいましょう!」
だがストリーニの反応は、タルボットの期待を裏切るものだった。
「落ち着け。いまの軍勢では不利だ」
エール国軍の軍勢は6千人。
これに対してグランド国はストリーニ兵4千人に、タルボット兵2千人。
数では互角だ。
しかしストリーニは最新情報をつかんでいた。
セーヌ国には、さらなる援軍が向かっている。
総勢では数的不利になるということを。
タルボットは激高した。
「ではジャスギャンを見殺しにするのですか?」
ストリーニが言う。
「今、グランド国に、さらなる援軍を要請している。それまで待て!」
タルボットは自分の髪をかきむしった。
そしてストリーニに対して怒鳴った。
「あんたの胸にはグランド国軍の誇りはないのか!?」
一方のジャスギャン。
戦いは大きく動いた。
セーヌ国軍の荒くれ者・アランシモンが大軍勢を率いてやってきたのだ。
その数は約2千人。
仲間であるモルドン地方の兵士たちだ。
屈強かつ戦闘力が高いことで知られている。
しかしスザンヌにとって問題はある。
かつてアランシモンが自らスザンヌに語ったように、彼はセーヌ国の宮廷に出入り禁止の身なのだ。
スコット王太子の取り巻きから厳しく敵視されている。
さっそくスザンヌのもとに不穏な手紙が届いた。
スコットの取り巻きの貴族・シャビネスが派遣した軍使からだ。
〈アランシモンからの援軍は王太子の敵だ。ただちに追い返せ!〉
バトラーが言う。
「スザンヌ、さすがに宮廷を敵にまわすのはまずい。アランシモンには帰ったもらった方がいいんじゃないか?」
スザンヌはきっぱりと言う。
「私たちは本当の味方を見誤ってはいけません」
そしてこう続ける。
「宮廷でソファにふんぞり返っている王太子の取り巻きと、汗をかいて戦場に駆け付けるアランシモン。どちらが本当の仲間だと思いますか?」
バトラーが言う。
「わかった。スザンヌ、おまえに任せるよ」
明日も午後早めに投稿しますね❤
お休みの日はいっぱいお会いしましょう❤❤




