表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/64

第33話 身内に敵あり! 本当の味方は誰!?

 グランド国軍・アマゴット司令官の腹わたは煮えくり返っていた。

 セーヌ国軍のスザンヌたちに、してやられたからだ。

 待ち構えていたマン=パル=ブランの軍事基地は迂回されてしまった。

 そしてバーレル川の橋だけを攻め落とされ、先に進まれたのだ。


 やられたら、やり返すしかない。

 アマゴットはセーヌ国軍の次の動向を探った。

 するとスザンヌたちは、バーレル川のさらに下流の街に向かっていた。

 ジャスギャンである。

 セーヌ国軍はバーレル川のすべての橋を抑えようとしているのだろう。

 次の狙いは川沿いの街・ジャスギャンに違いない。


 そこにグランド国の通信使から知らせが入った。


「ストリーニ将校が率いる援軍がそちらに向かっています」


 あのカリスマ将校が率いる4千人の軍勢が来る。

 これを聞いて、タルボットは思う。


〈これはグランド国とセーヌ国の決戦になる!〉


 舞台はおそらくジャスギャン。


〈自分の軍勢2千人を合わせれば、きっとセーヌ国軍を叩ける!〉


 タルボットの胸は踊った。


 ジャスギャンは小さな街だった。

 ここはマン=パル=ブランとは作りが全く違う。

 街全体を制圧しないと橋にはたどり着けない。


 ジャスギャンの司令官・チャールトンは援軍をひたすら待っていた。

 街の外には防衛部隊を待機させ、援軍が来るまでなんとか持ちこたえようとしている。

 しかし援軍は、いまだに来ない。


 代わりに来たのは、見張りの者からの知らせだった。


「セーヌ国・スザンヌたちの大軍勢が接近しています」


 チャールトンは頭を抱えた。


 先頭はスザンヌの白い軍旗。

 セーヌ国軍がジャスギャンの街に攻め込む。

 街の防衛部隊が次々と突破される。


 司令官・チャールトンは悟った。

 このままではもたない。

 そこで覚悟を決めて宣言した。


「街の防衛線をすべて放棄せよ! 総員、ジャスギャン城に結集だ!!」


 すべての戦力を城に集中させる。

 援軍が来るまで、なんとかしのぎたいという考えだ。


 しかしセーヌ軍は攻撃の手をゆるめない。

 城を攻め落とすための投石機が守備隊を蹴散らし、大砲が城壁を破壊していく。

 グランド国兵は次々に倒れていく。

 城の監視塔も砲撃で次々に破壊されていく。


 夕方になる頃には、守備兵はかなり手薄になっていた。

 監視塔も半数以上は破壊されてしまった。

 いつセーヌ国軍に突入されてもおかしくない状態だ。

 司令官・チャールトンは絶叫した。


「ストリーニ将校の援軍は、いったいいつ到着するんだ!」


 マン=パル=ブランの軍事基地を出発したアマゴット司令官。

 ストリーニ総司令官が率いる四千人の援軍と合流することができた。

 タルボットは会うなり、ストリーニに訴えた。


「すぐにジャスギャンに向かいましょう!」


 だがストリーニの反応は、タルボットの期待を裏切るものだった。


「落ち着け。いまの軍勢では不利だ」


 エール国軍の軍勢は6千人。

 これに対してグランド国はストリーニ兵4千人に、タルボット兵2千人。

 数では互角だ。

 しかしストリーニは最新情報をつかんでいた。

 セーヌ国には、さらなる援軍が向かっている。

 総勢では数的不利になるということを。


 タルボットは激高した。


「ではジャスギャンを見殺しにするのですか?」


 ストリーニが言う。


「今、グランド国に、さらなる援軍を要請している。それまで待て!」


 タルボットは自分の髪をかきむしった。

 そしてストリーニに対して怒鳴った。


「あんたの胸にはグランド国軍の誇りはないのか!?」

 

 一方のジャスギャン。

 戦いは大きく動いた。

 セーヌ国軍の荒くれ者・アランシモンが大軍勢を率いてやってきたのだ。

 その数は約2千人。 

 仲間であるモルドン地方の兵士たちだ。

 屈強かつ戦闘力が高いことで知られている。


 しかしスザンヌにとって問題はある。

 かつてアランシモンが自らスザンヌに語ったように、彼はセーヌ国の宮廷に出入り禁止の身なのだ。

 スコット王太子の取り巻きから厳しく敵視されている。


 さっそくスザンヌのもとに不穏な手紙が届いた。

 スコットの取り巻きの貴族・シャビネスが派遣した軍使からだ。


〈アランシモンからの援軍は王太子の敵だ。ただちに追い返せ!〉


 バトラーが言う。


「スザンヌ、さすがに宮廷を敵にまわすのはまずい。アランシモンには帰ったもらった方がいいんじゃないか?」


 スザンヌはきっぱりと言う。


「私たちは本当の味方を見誤ってはいけません」


 そしてこう続ける。


「宮廷でソファにふんぞり返っている王太子の取り巻きと、汗をかいて戦場に駆け付けるアランシモン。どちらが本当の仲間だと思いますか?」


 バトラーが言う。


「わかった。スザンヌ、おまえに任せるよ」

明日も午後早めに投稿しますね❤

お休みの日はいっぱいお会いしましょう❤❤

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ