第32話 ヤンチャ騎士たちの暴走が止まらない!
今朝、ブックマーク増えてました♡
昨日は平日だったのにありがとうございます♡♡
うれしくて早めに1エピソード、投稿しちゃいました❤
グランド国軍の投石機がスザンヌの頭部に命中し、梯子から地面へと墜落した。
歓喜に沸くグランド国軍。
一方のセーヌ国軍は衝撃と絶望に包まれた。
スザンヌはうつぶせに倒れている。
「スザンヌ!」
泣きそうな顔でバトラーが駆け寄る。
しかしスザンヌは、すっと立ち上がった。
生きていたのだ。
しかも、床に落ちた折れた軍旗を拾い上げしっかりと握る。
そして力の限り高く掲げたのである。
これを目にしたセーヌ国軍の兵士たちの熱気は最高潮となった。
もはや声というより怒号のような叫びを上げる。
そして槍を手に梯子から城内へと続々と攻め込んでいく。
狭い城内でグランド国兵たちは逃げ場を失う。
次々とセーヌ国兵の槍に貫かれていく。
もはや勝負はついていた。
指揮官のスールシャールも捕虜として捕らえられた。
セーヌ国志願兵たちの興奮は止まらない。
兵士としては素人。
だから手加減も容赦もまったくない。
抵抗する力を失った敵兵さえ、次から次へと突き刺していく。
グランド国の犠牲者は飛躍的に増えていった。
これにつられるようにセーヌの騎士たちも暴走する。
ジョルマーナの街でも彼らは暴れ回った。
グランド国軍だけでなく、市民からも金品を略奪する。
婦女への凌辱も行われた。
スザンヌはそれを見るたび叱責する。
しかし彼女の目が届かないところでは、好き放題に暴れ回る。
みな気持ちが高揚してしまい。行動を抑えられないのだ。
この日のセーヌ国軍の暴力と略奪はひどかった。
そして後々まで、グランド国軍や周辺市民の恐怖の記憶となる。
スザンヌの知らぬ間に許されない行為に及んだ騎士もいた。
「憤怒の男」と呼ばれる粗暴な騎士、ルナール・ド・オーランドである。
あろうことか神に仕える教会から、力ずくでを金品を略奪したというのだ。
ただし彼はスザンヌには、なついていた。
彼女の信奉者の一人だったのだ。
パビリオンでも、事あるごとに、体を張ってスザンヌを護衛してくれていた。
スザンヌはルナールを呼び出した。
「あなたがしたことは罪深いことなのですよ」
ルナールはきょとんとしている。
なぜ責められているのか、わからないのだ。
「あなたは教会を襲撃したでしょう」
「ああ、やったよ」
「あなたは神に仕える善良な人々を傷つけ、財産を奪った。その行いを神様は見ています。死後、あなたは地獄に送られますよ」
「地獄って、あの地獄かい?」
「ええ、あの地獄です」
「針で刺されたり、火で焼かれたりするあの地獄かい?」
「ええ、その地獄です」
「地獄には行きたくないな」
「私もです」
「どうすれば助かるんだ?」
「まずは神に告解をなさい」
「コクカイって何だ?」
「司祭に罪を告白して神に許しを乞うことです。司祭は紹介しますから」
「わかったよ」
こうしてルナールは人生初の告解をすることになった。
〈すこしは神のお導きがあるといいのだけれど〉
とスザンヌは願う。
セーヌ国軍が、次に目指すのがマン=パル=ブランだ。
ここは3つのパートに分かれた街である。
城壁に囲まれた街。
そして街の外に軍事基地が作られている。
その奥にバーレル川にかけられた橋がある。
この橋は軍事要塞の機能も備えている。
この街を仕切るのが指揮官アマゴットだ。
スールシャールと行動を共にしていた〈グランド国のアキレス〉である。
戦略会議を前にバトラーがスザンヌの元に来た。
「アマゴットの軍事基地を叩こう!」
しかしスザンヌは同意しなかった。
バトラーはいきり立つ。
「なんでだよ! スザンヌ」
スザンヌは言う。
「アマゴットさんの部隊は強力です」
「ああ、だからこそ、やっつけるるのではないか!」
「たくさん犠牲が出る戦いは、できるだけしたくないです」
「なんだと!?」
「やらなくて済むのではありませんか?」
「どうやって?」
「だって、私たち、橋を渡って先に進みたいだけでしょう?」
戦いの日がやってきた。
アマゴットは偵察の者からセーヌ国軍出発の知らせを受けた。
エール軍を迎え撃とうと万全の態勢は整っている。
しかしエール国軍は姿を見せない。
待てど暮らせど来ない。
苛立つアマゴット。
すると、橋の防衛兵が息も絶え絶えに駆け込んできた。
「橋がセーヌ国の大軍勢に囲まれています!」
「なんだと!」
スザンヌはセーヌ国軍に回り道を指示していた。
細かい裏道を使い、軍事基地も城塞都市も回避するルートを取ったのだ。
作戦の開始前、バトラーはこの策についてスザンヌを、
「卑怯な手だ」
と批判していた。
しかしスザンヌは言い返す。
「騎士からしたらそうでしょう。気持ちはわかります」
そしてバトラーへの説得を始める。
「しかし多くの命が失われずに済むなら、いいことだと思いません?」
そして微笑む。
「やっぱり、お前にはかなわないな」
とバトラー。
マン=パル=ブランの橋。
グランド国軍の守備兵たちは必死で抵抗した。
しかし攻め込んできたセーヌ国軍との戦力差は圧倒的である。
あっという間に、スザンヌたちは橋を制圧した。
夕刻、投降を勧告すると、橋の守備隊はそれに応じた。
今夜も20時ごろにお会いしましょうね❤




