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第31話 スザンヌ墜落! 真っ二つに折れた軍旗

 バーレル奪還作戦。

 それはセーヌ国を横断するように流れるバーレル川をめぐる戦いだ。

 川沿いの都市と橋のほとんどはグランド国に占領されている。

 それをひとつひとつ取り戻す。


 セーヌ国軍はバーレル川沿いの主要都市・パビリオンに集結。

 そこから上流に向かって出発した。


 その動きを、グランド国軍はいちはやく察知した。

 スザンヌのもとに、セーヌ国の宮廷から知らせが入った。


〈グランド国軍の総司令官・ストリー二が本国からの大援軍を準備し始めた〉


 その数は二千人から三千人と見られる。

 もし彼らが早期に戦地に到着したら、確実に数的不利になるだろう。


 これを受けて司令官の一人、アモロが騒ぎ始めた。


「ストリー二が攻めてきたらひとたまりもない。作戦は中止すべきだ」


 これに賛同し始めたのがベテラン軍人たちだ。

 国民人気の高いスザンヌと、捕虜帰りのバトラーがトップに立っているやっかみも少なくないだろう。


 だがバトラーは、


「浮き足立つな。作戦に変更はない」


 と、意に介さずプラン通りに進軍を進める。


 一方スザンヌは作戦に水を差そうとするアモロたちに不満そうな顔だ。

 その表情を見たバトラーはスザンヌをなだめる。


「そうイラつくな、スザンヌ。周りには勝手に言わせておけ」


「でも、士気を下げるような振る舞いは許せない」


 スザンヌの怒りはおさまらない。


「もうアモロ司令官たちには任せていられない。攻撃の先頭には、やる気のある兵士が必要なの。それには市民たちの志願兵を起用するしかないわ!」


 バトラーは、意固地になるスザンヌを、仕方ないな、という顔で見ている。

 

 最初に攻略を目指すのは城塞都市ジョルマーナだ。

 街は高い城壁に囲まれ、見張りの塔も多数。

 さらに門は厳重、まさに鉄壁の守りである。

 城の中にこもり、攻撃をすべて跳ね返そうとするだろう。


 攻撃を前にしてスザンヌは志願兵たちを集めた。

 彼女と共に戦いたいという思いで集まった者たち、熱気があふれている。

 スザンヌは彼らに語りかけた。

「あなたたちには闘志がみなぎっています。セーヌ国軍の先頭に立って軍を導き、堅い守りのジョルマーナの城門を打ち破ってください」

 志願兵たちは大きな歓声で応えた。


 早朝から野営地を出発したセーヌ国軍。

 志願兵たちが先陣を切ってジョルマーナに向かう。

 城門が見えるや、槍を手に、我先に城門に突撃していく。


 しかしスザンヌたちの予想は裏切られた。

 城の中にこもって戦うだろうと思われたグランド国軍が、こちらに向かって来たのだ。

 しかも一部隊や二部隊ではない大軍勢だ。

 数えきれないほどの騎士が続々とへと飛び出してくる。


 これに慌てたセーヌ国志願兵たちの態勢は一気に崩れた。

 完全に圧倒され、次から次へと倒されていく。

「いますぐ退きなさい!」

 スザンヌが叫ぶ。

 志願兵たちは必死の思いでジョルマーナから敗走した。

 

 完全に作戦負けである。

 しかし嘆いている暇はない。

 スザンヌはすぐ切り替えていた。

 戻ってきた志願兵たちに、

「落ち着きなさい」

 と水とパンを与えた。


 志願兵たちは平常心を取り戻した。

 スザンヌは落ち着いた声で彼らに語りかけた。

「あなたたちは選ばれた者たちです。神のお導きでここに集まったのです」

 市民兵たちの目に、失われた輝きが戻り始める。

 スザンヌが続ける。

「私は天からの声を受けています。あなたたち志願兵は、グランド国の兵士を叩きのめし、これから大いなる勝利をつかみます」

 志願兵たちから声があがる。

「そうだ! 俺たちは勝つんだ!!」

「セーヌを救おう!」

 スザンヌが呼びかける。

「私と一緒に戦場に戻りましょう。私とともに、あなたたち一人一人が、セーヌ国軍を救う英雄になるのです」

 スザンヌは白く輝く軍旗を掲げた。

 白馬に乗り、先頭に立って進む。

 それに続く志願兵たち。

 さらにバトラーをはじめとする騎士たちも行軍する。

 

 ジョルマーナの城門から、再びグランド国の大勢の騎士たちが飛び出してきた。

 その中央にいる指揮官を見てスザンヌは目を見開く。

 スールシャールだった。


「あなただったのね! この街の司令官は!!」


 とスザンヌが言えば、


「また会えたな、スザンヌ。今こそ決着を付けよう!」


 とスールシャールも答える。


 激しい白兵戦が始まった。

 セーヌ国軍の志願兵たちがスールシャールを狙う。

 槍を持って次々とスールシャールに突撃する。

 剣でそれを懸命に防ぐスールシャール。

 セーヌ国の志願兵たちは、先ほどとは別人のように鋭い動きで突進していく。。

 じりじりと後退していくスールシャール。


 志願兵たちは、グランド国兵士の守備網を次々と突破する。

 そして街の要所を占拠していった。


 形勢は完全に逆転した。

 グランド国軍は城内へと敗走する。

 日が落ちる頃には、セーヌ国軍がグランド国軍をすべて城内へと押し込んだ。

 その夜、セーヌ軍はジョルマーナを包囲しつつ、野営を行った。


 朝を迎えると、スザンヌは敵の城内へ軍使を送った。

 司令官のスールシャールに降伏を呼びかけたのだ。


〈それはできない、スザンヌ。私は最後まで闘う!〉


 誇り高きスールシャールはそう手紙にしたためた。

 これを受け取ったスザンヌは覚悟を決めた。

 すぐさま城塞攻略用の大砲の発射を指示する。


 一方のジョルマーナ城塞も城の大砲で応戦する。

 しかし軍備ではセーヌ軍が上回っていた。

 激しさを増すセーヌ国の大量砲撃。

 ジョルマーナの見張り塔が崩落していく

 それでもスールシャールは降伏しない。


 ならば、グランド国にとどめをさすしかない。

 スザンヌは白く輝く軍旗を掲げて、志願兵たちに呼びかける。


「勇気のある者は、ついて来なさい!」


 バトラーが城壁に梯子(はしご)を掛ける。

 それを登っていくスザンヌ。

 スザンヌを慕う志願兵たちが次々と続く。


〈我こそスールシャールを討ち取る!〉


 槍を手に、みな野心あふれる表情だ。

 

 一方のグランド国軍も迎撃態勢に入る。

 城の投石機がすべて並べられた。

 スールシャールが号令をかける。


「敵兵をすべて石弾で仕留めろ!」


 城内に突撃するセーヌ国兵士を、石弾の嵐が襲う。

 スザンヌにも大きな石が向かってきた。

 軍旗を掲げた槍で、なんとか弾き返そうとする。

 槍は真っ二つに折れた。

 軍旗がひらひらと落下する。

 石弾はコースを変え、スザンヌの頭の鉄兜に直撃。

 梯子から墜落していくスザンヌ。


「オルレアンの乙女を討ち取ったぞ!」


 石弾を命中させたグランド国の砲兵が叫ぶ。

 グランド国軍から一斉に歓声と拍手が沸き起こった。


明日も20時ごろにお会いしましょう❤️

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