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第24話 逃げ場なし! 襲い掛かる石矢の嵐!!

 いま叩くべきは、目の前のロンダード砦ではない。

 遠方のスッドオージュ砦だ。

 ここの大砲隊を抑えないと勝利はない。


 スザンヌはセーヌ軍を率いて船に乗り込みスッドオージュ砦に出発する。

 対岸に着き、砦へ向かう。

 攻撃を開始すると、グランド国兵の長弓隊が激しく石矢を放ってきた。

 これに応戦しながら突撃していくセーヌ軍の兵士たち。

 石矢に苦しむものの、白い軍旗を掲げるスザンヌに率いられたセーヌ軍の勢いは止まらない。

 しかもグランド国は白兵戦の兵士たちをロンダード砦に集中させていた。

 その分、スッドオージュ砦の守りが薄い。

 戦いが進むにつれ、グランド国軍の抵抗に力がなくなっていく。

 スザンヌは先頭に立ち、一気呵成に攻め込んだ。

 グランド国軍の大砲隊を壊滅させる。

 日が沈むころ、砦は完全に陥落した。


 スザンヌをたたえ、歓喜の声を上げるセーヌ国軍の兵士たち。

 しかしそのとき、スザンヌは倒れていた。

 流れてきた石矢を脚に受けてしまったのだ。

 レオが駆け寄る。


「パビリオンに戻ってすぐに治療しよう」


 レオがスザンヌに肩を貸す。

 もたれかかり、脚を引きずりながらもスザンヌは、


「私はここに残って闘う」


 と宣言する。


「駄目だ! 傷が化膿(かのう)したら死ぬ!!」


 レオはそう言うとスザンヌの体を抱きかかえて、強引に船に運び込む。

 最初は抵抗する構えを見せたスザンヌ。

 しかし足の痛みは次第にひどくなってきている。

 スザンヌの苦痛を、レオの腕が優しく癒すように包んでいる。

 その暖かさに包まれて、スザンヌの動きが止まる。


〈この人の腕の中は心地良い〉 


 スザンヌはレオのたくましい腕に、そっと自分の手のひらをのせた。 

 と同時にスザンヌは自分の意識が遠のいていくのを感じていた。


 翌日のエール国軍の野営地には不穏な空気が漂っていた。

 スザンヌの姿がない。

 作戦会議にも参加していなかったようだ。


〈スザンヌは死んだのではないか?〉


 明らかに、兵士たちの間に動揺が広がっていた。


 指揮官のデシャンが消極的な戦法をとったのも、兵士たちの疑念に輪をかけた。


 スッドオージュ砦を失ったグランド国軍。

 逃げた兵士たちははロンドダート砦に駆け込んだ。

 ここを陥落させれば、グランド国が誇る複合施設ブルギールは壊滅する。

 もしスザンヌがいれば一気に攻め込むはずだ。


 しかし行われたのは、川の中州への大砲設置と、砦の付近への機雷設置のみ。


 「本日はこのまま待機せよ」


 デシャンが兵士たちに告げる。


〈スザンヌは本当にもういないのではないか〉


 指揮官のふるまいに不安が広がり、士気は明らかに下がっていく。


 しかし不安に駆られていた兵士たちは見た。

 川のはるか向こうに、白くはためく軍旗を。

 パビリオンから船で戻ってきたスザンヌが、右手で高く掲げている。


「グランド国軍を、叩きのめしましょう!」


 船の上から兵士たちに呼びかけるスザンヌ。

 兵士たちの間から大歓声があがる。


 スザンヌに真っ先に駆け寄ったのが騎士アンソニーだった。


「無事だったか。心配したぞ」


「私はスコット王太子を即位させるまで、倒れることはありません」


「そうだったな。おまえは、神の声に守られているものな」


「アンソニー、さっそくだけど、ブルギールに攻め入るための梯子(はしご)を用意したいの」


「まさかこのまま、難攻不落のロンダート砦に攻め込もうとしているのか」


「もちろんですとも」


「待機命令が出ているぞ」


「私の主は神様です。天の声は『今すぐ砦に向かいなさい』と告げています」


 アンソニーはスザンヌの顔をまじまじと見た。

 そして呆れたように微笑むと、


合点(がってん)だ! やってやろうじゃないか!! 護衛には俺が付く。絶対に守ってやる」


 とスザンヌの両肩に手を置いた。

 そしてアンソニーは自分の部隊に梯子を手配するよう命じた。


 スザンヌはアンソニーの部隊と共に、野営地からブルギールへと出発した。

 その姿を見て、他の兵士たちもざわつく。

 そして我も我もと、待機命令を無視して彼らに続いていく。


 ブルギールの施設に着くや、やはりスザンヌが先陣を切った。

 敵陣に向けて、一番に最初に梯子(はしご)をかける。


「みんな、突撃開始よ!」


 先頭に立ってスザンヌが登る。

 兵士たちも大きな声を上げながら、梯子に密集していく。

 目指すはブルギールの最後の拠点。

 ロンドダート砦だ。


 グランド国兵士もこれを迎え撃つ。

 やってきたのは長弓隊の石矢の嵐。

 次から次へとセーヌ国軍の兵士に振ってくる。

 これを盾で防ぎ、かわしながら兵士たちは斬り込んでいく。

 激戦となった。

 人数と勢いに勝るのはセーヌ国軍。

 押し込み始めている。


 スザンヌは最前線で兵士たちを指揮する。

 激しく危険な白兵戦となった。

 グランド国軍の長弓隊の標的となるスザンヌ。

 次々と石矢が彼女に向かう。

 それを守るのがアンソニーだ。


〈スザンヌには触れさせない!〉


 大きな盾と刀を使って、勇敢に石矢に立ち向かって防ぐアンソニー。

 

 しかし一瞬の隙ができた。

 大きな悲鳴が響き、可憐な体が倒れていく。


「スザンヌ―!」


 アンソニーが叫んで近寄る。

 グランド国軍の石矢が、スザンヌに刺さっていた。


「セーヌ国の魔女を討ち取ったぞ!」


 命中の一撃を放ったグランド国の弓兵が誇らしげに叫ぶ。

 敵の兵士たちから歓声が上がる。


今夜もお会いしましょうね♡

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