第23話 宮廷から仕向けられたスパイ
スザンヌに率いられた市民兵たちはグランド国の猛反撃にあい敗走する。
スザンヌも護衛の兵士たちに守られながら逃げていた。
しかし追ってきたグランド国兵たちの姿が目に入ると、天から声が聞こえた。
〈恐れず、戦いなさい〉
スザンヌは護衛兵の手を振り払って、再び、白い軍旗を高々と掲げた。
「信じなさい! 私たちは神の名のもとに戦うのです!」
兵士たちが、退却への足を止めた。
「私たちが負けるわけはない! あいつらを叩きのめしなさい!」
市民兵たちはスザンヌの声に、熱い闘志を瞬時に取り戻した。
「よし! やろう!!」
「俺たちには神と聖女がついている!」
続々と決意の声があがる。
スザンヌは先頭に立って進む。
負けじと兵士たちが全力で突撃する。
それを見たグランド国兵士たちの足が止まった。
〈今まで見てきたエール国兵とはまるで違う〉
今度は彼らが怖気づく番だった。
グランド国兵士の頭には、3日前のレーヌ・サム砦での大惨敗の話が渦巻いていた。
人が変わったように凶暴なセーヌ国兵士、それを率いる魔女・スザンヌ。
その恐怖の存在がいま、彼らの目の前にあった。
「いったん引け! 退却だ!」
グランド国兵士がロンダート砦に引き返していく。
それを深追いしようとするスザンヌを、遠くの方から呼ぶ声がした。
「待ちなさい! いったん攻撃を立て直す!!」
総指揮官・デシャンの声だった。
パビリオンから援軍に来たのだ。
そしてスザンヌの前に金髪の美しい長身の騎士が現れた。
その顔にはかすかに見覚えがあった。
スザンヌが言う。
「あなた、私のことをずっと尾行していたでしょう」
騎士は静かな笑みを浮かべながらいう。
「気づかれていましたか……」
「ええ、確信はなかったけれど。でもあなただとは、なんとなく感じていたわ」
「そうですか……」
「なぜ、私をつけていたのかしら?」
「命じられていたからです」
「誰に?」
「セーヌ国の宮廷からですよ。あなたを監視しろと……」
「無理もないわね。危険人物だから……」
2人は顔を見合わせて笑った。
「……でも」
と騎士は、スザンヌの目を見つめて、こう言う。
「もう尾行はしません。あなたの味方になる」
さらに、こう続ける。
「私はレオ・サンタナ。今後はレオとお呼びください」
レオはスザンヌの前にひざまづく。
スザンヌが手のひらを出すと、レオは自分の右手をそれに重ね、忠誠を誓った。
彼は通称「貴公子」と呼ばれる騎士。
強さと気品を持ち合わせた男がスザンヌの味方となった。
スザンヌは再びロンダート砦への攻撃に向かうおうとする。
しかしレオはそれを止めた。
「スザンヌ、目の前の敵だけにとらわれてはいけない」
「どういうことですか?」
とスザンヌ。
「今、いちばんの脅威はスッドオージュ砦の大砲だ」
スザンヌは、はっとした表情になった。そして言う。
「……確かに、そうでした」
「グランド国の一番の強味を潰せば圧倒的に有利になる」
「ええ、わかったわ」
スザンヌはレオの軍事的な才覚に驚く。
そして彼に信頼を寄せた。
明日もお休み❤️
早めの時間にお会いしましょう❤️❤️




