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第16話 試されたスザンヌ

 翌朝、マルカ城の大広間。

 スザンヌは敷き詰められた赤いじゅうたんに足を踏み入れる。

 待っていたのは、きらびやかな衣装に身を包んだ王族たち。

 そして周りを家来たちが囲む。

 

 入ってすぐ、なにかの違和感を感じた。

 厳粛な王太子の謁見の場にしては、ざわざわしたものを感じる。

 そこにいる者たちが、何かをいまかいまかと待っているようだ。

 おそらくスザンヌが、大失態が起こすことを。

 

 いちばん目立つ席が中央に見える。 

 豪華な椅子に腰かけ、派手な冠を頭に載せている人物。

 これ見よがしに「私が王太子だ」と主張しているようだ。

 体格はいいが、背中を丸めて背もうつむき加減。

 あれは、きっと王太子じゃない。


 なぜこんな悪ふざけをするのか?


〈それは私を疑い、試しているから〉


 とスザンヌは気付く。

 しかしそれだけではないだろう。


 大勢の前でスザンヌに恥をかかせようとする、大掛かりな仕掛け。

 なぜ、ここまで手の込んだことをするのか?


〈それは自分が周りのみんなに「たいしたことない人」と見られて傷付くことがイヤだから。注目されている私に大きな失敗をさせて、それを見下すことで優位に立ちたいのね〉


 とスザンヌはスコット7世の心中を察する。


 スザンヌはまわりを見渡す。

 すると、ニヤニヤ笑っている貴族たちの中に、ひとりだけ鋭い目で様子を観察している男性がいる。


〈その人は誰?〉

 

 間違いない。

 彼だ。


 スザンヌはその細面で端正な顔立ちの男性の前に進み出る。

 周囲の空気が嘲笑から驚きに変わる。

 近寄ると男性からは気品が漂うのがわかる。

 スザンヌは彼の前にひざまづいた。

 そして、その膝に唇を合わせた。


「王太子様、私は天からの声を受けた乙女スザンヌです」


 スザンヌは続ける。


「あなたをクレバにお連れして国王に即位いただくために、私は来ました」


 スコット7世はしばらく沈黙した後、こう言った。


「なぜ、わたしが王太子だと?」


 スザンヌは答える。


「神がそう告げたのです」


 言葉を失うスコット王太子。


 スザンヌは彼に申し出る。


「神から受けたお告げについて、どうか2人だけで、お話しさせていただけませんか?」


「いいだろう」


 スコットは近くの小部屋にスザンヌとともに入った。


 スコット王太子と2人きりになった小部屋。

 スザンヌは語りかけた。


「あなたは自分がスコット家の血統を継いでいないのではないかと不安になっていますね」


 スコット王太子は黙っている。

 図星なのだろう。


「それは、なぜですか?」


 とスザンヌが聞く。


「王妃である母・サファリーヌが、私が王の子ではなく、不義の子だと、あちこちで言いふらしているんだよ」


 王妃サファリーヌは貴族・王族の男たちと奔放に遊び回っていた。

 その影響か、王であり父であるスコット6世は精神を病み、国王としての役割を果たせなくなっていた。


「私には王の血統がない、とみんなに話を広めて、私を追放しようとしているのだろう」


スコット王太子は、力なくうつむいた。

明日も20時過ぎに投稿しますね♡

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