第13話 身に降りかかる魔女疑惑
舞台は再びエルドラ町。
時間はもう夕刻になっていた。
カミーユは町はずれに建てられた大きな家にスザンヌを連れて行った。
ドアをノックすると、ふくよかで母性を感じさせる女性が現れた。
「彼女はソーニャさん。私と同じ愛国者だよ」
とカミーユが紹介してくれる。
「あなたがスザンヌさんね。会えてうれしいわ」
ソーニャは人懐っこい笑顔で握手を求めてくる。
「お腹すいたでしょ。ボルシチを作ってあるから食べて」
実際、スザンヌはもうお腹がペコペコだった。
野菜とお肉のうま味たっぷりのスープ、ソーニャの料理は絶品だった。
軽く焼いたバケットも、お腹いっぱい食べさせてもらった。
「こんなに食べられて幸せです、ソーニャさん」
「救国の乙女にそう言ってもらえてうれしいわ」
それを受けてカミーユが言う。
「ソーニャさんのまわりにはいつも人が集まるんだ。ソーニャさんにはスザンヌの天からの声の話も伝えたから、今じゃエルドラ町じゅうの住民がスザンヌの話を知っているはずだよ」
「すごいですね。ソーニャさん」
とスザンヌ。
「そんなことないわよ」
と笑顔のソーニャさん、こう続ける。
「スザンヌちゃん、あたなのことはカミーユさんから頼まれているから、しばらくここに泊まっていってね。ず~っといてもいいからね」
「ありがとうございます」
ソーニャさんこそ聖女か神様みたい、スザンヌはそう思った。
何晩かソーニャさんの家に泊めてもらい、エルドラの町で過ごした。
すると朝早く、ノックの音が聞こえた。
ソーニャさんがドアを開けると、そこにはラファエル司令官とワルツ神父がいた。
「スザンヌに用があって来た」
とラファエル司令官。
「まずはライチ神父と2人きりで話してもらいたい」
スザンヌはうなずき、神父とともに個室に入った。
ずいぶんな時間が経過した。
部屋から出てきた神父とスザンヌ。
カミーユさんがスザンヌに心配そうに近寄り、こう聞く。
「大丈夫? イヤなことを言われなかった?」
「心配しないで、叔父さま。告解(神の許しを受けるため、権限を授けられた神父などに対して自分の罪を打ち明ける行為)させていただいた後、神様についてお話をしていただけだから」
「そうか、よかった」
とカミーユ。
一方、ラファエル司令官は黙ったまま、ライチ神父と目を合わせている。
ライチ神父はしっかりとうなずく。
それを見てラファエルもうなずいた。
その様子をスザンヌはしっかりと観察していた。
〈私が「魔女」でないかどうか、「身体検査」をしていたのね〉
身体検査といっても体を調べるわけではない。
神への信心のありかた、ものごとの考え方。
それが「異端」にあたる「悪魔」ではないかどうか。
その心の中、頭の中をじっくりと調べ上げるのが「身体検査」だ。
神父を呼んだのはそのためだ。
前世では、さんざん「異端」の疑いをかけられ、魔女裁判を受けたスザンヌ。
要人が重要な判断をする際、必ず「身体検査」をすることはわかっていた。
そして今回は「問題なし」の判断だったらしい。
スザンヌは、ラファエル司令官の方を向いて、こう言う。
「さっきも神父様にお話させていただきましたけど、私はどうしても王太子のいるところへ行かなければならないのです」
スザンヌが続ける。
「それが神の、天からの意思だからなのです」
それを聞いたラファエル司令官は、こう言った。
「パビリオン郊外での決戦でエール国軍が敗れた」
ラファエル司令官がスザンヌの目を見て言う。
「スザンヌ、お前が予言したとおりになった」
エール国軍はこの戦い、グランド国軍を兵力で大きく上回っていた。
しかしエール国軍が、同盟国・セントランドと共闘したことが裏目に出る。
連携の悪さをグランド国軍に突かれて形勢は逆転した。
今朝、ラファエル司令官のもとに戦地から速報が入った。
エール国軍は600人もの戦死者を出して敗走したという。
「スザンヌ、おまえを聖女であると認めよう」
と言うラファエル。こう続ける。
「スコット王太子に謁見するため仮王宮マルカに向かうことを許可する」
スザンヌは表情を輝かせて言う。
「ありがとうございます」
ラファエル司令官が言う。
「マルカへの道のりへ、馬と武具、6名の家来を護衛としてつけさせよう」
明日も20時過ぎに投稿しますね♡
でも、もしかしたらもう1話、昼間にアップできるかも♡♡
よろしくお願いします♡♡♡




