第四話
「それは大変だね……」
「大変どころの騒ぎじゃないですよお嬢さん。まるで風船が爆発するようにってか」
「そうだ。空気中に黒死は飛び散り爆風で蔓延する。まさに地獄の出来上がりだな」
三人はそれを想像して青ざめた。結界はもはや一つでは維持できないところまで来ている。どれか一つでもなくなればそれは膨大な被害をもたらすのだ。
「解かない方がマシだと思えてくるぜ……」
「結界は永遠はない。いつか必ず綻びが生じる。今が最後のチャンスかもしれない」
ロゼとシェルはその肩に重圧がかかるのを感じた。ただ事ではない。本当に世界が終わるかもしれないのだ。
「わたしも今ふと思ったんだけど……」
今度はサクラがそんな事を言った。
「仮に教会側も結界を解くとして、二つの結界が消えれば結局爆発が起こるんじゃないの?」
「た、たしかに」
「いや、師匠の事だ。さすがにそんな事は承知しているだろう」
「ならどうやって爆発させずに結界を解くっつーんだよ」
ロゼは腕を組み、眼を閉じて考える。
「ゆっくりと結界を解いていけばなんとかならないか?」
一気に解くのではなく、徐々に解いていく。
「仮にそうだとしてもよ、お前のお師匠様ともうちっと打ち合わせした方がいいんじゃねーの?」
「いや、もう会えるとは思えない。今更あとを追って会ったところで気分を害してこの話はなかった事にするとか言われたらたまったもんじゃないし、会わない方が得策だろうよ」
「じゃー、教会側が合わせるしかないってことかよ」
「司教様の腕の見せ所だね!」
そう言われてシェルは「まかせてください」と胸の前で拳を握る。しかしそんな簡単でない事もわかっている。結界を張った人物を見つけ出して解くように交渉して、魔女に合わせなければいけないのだ。
シェルは頭が痛かった。自分にそれだけのことをやってのける事ができるのだろうか。しかし、自分がやらねば先に進まないし先がなくなる。
「大丈夫だよ。きっと司教様ならできるよ」
そんなシェルの不安そうな顔を見てサクラが言った。
「君にすべてかかっているんだぞシェル司教殿」
「……プレッシャーをあたえんなクソ魔女め」
深く息を吸った。そして大きく吐く。そんな事で気持ちは晴れないがやるしかないのだ。後には引けないし進むしかない。
「行きましょうか」
そう言って前を見れば、アドミラル大聖堂の巨大な建物が目に入った。目的地には着いた。あとはここからが本番だ。




