第八話
一触即発の雰囲気だ。さすがに教会と魔女が仲良くできるはずもない。対立するのは当たり前でそれは自然の摂理のようなものだろう。しかし、だからといってこのまま争ってもらうのは困る。
「司教様、わたしが話すから喧嘩はやめて」
「はい、かしこまりましたお嬢さん。貴女のために喧嘩などやめましょう。おい魔女、勝手に一人でやってろよ」
ころころと変わる。シェルはサクラの両手を握りながらニコニコとしている。
「おいシェル司教殿、私の大事な仲間の娘に汚い手で触るな」
「はははっ、何を言っている。俺は司教ですべてが清い存在なのだ。穢れているのはお前だ魔女」
「どうやら決着をつけたいようだな」
「縛って焚き火の肥やしにしてやる」
「もう、喧嘩しないでってば!」
なぜこうも仲が悪いのだろう。聞くだけ無駄な気もする。サクラを挟んで唸り声をあげる二人にサクラはため息しかでない。
「司教様も一緒に行きましょう」
そう言われてシェルとロゼはすごく嫌そうな顔をした。
目的は三人とも同じだ。足並みを揃えて行くべきだろう。
二人の答えは別に聞く必要もない。むしろ言わせない方が効率がいい気がするとサクラは思った。
「あのね、あたしが思ったことを話すね」
サクラは先ほどの仮説を二人に話した。もしかして魔女が結界を張って旧アルヴェルトに近づけないようにしているのではないかと。
「一理ありますね。さすがお嬢さんだ。可愛いだけではない」
「その可能性は私も考えたよ。でもそんな噂は魔女の中で聞いたことがないな」
「嘘つけよ。素直に関心しろ」
「君の頭では思いつかないだけだろう。その小さな脳ではな」
ほんと、一言多いなぁと思う。よくもそんな言葉がほいほいと出てくるものだ。二人を無視してサクラは続ける。
「だから魔女を探し出すのが優先されると思うの。お姉さんの知り合いにいない?」
「う~む。そんな話は聞いたことがないな。まぁ魔女は基本、そんな話は他人にはしないだろうが」
「おい魔女、他の魔女の居場所を教えろ。俺が全員始末してやる」
「一人一人に話を聞いていくしかないのかなぁ。わたしだけじゃ探し出せないし話も聞いてもらえないかもしれないから、お姉さんがいてくれると助かるー」
「あぁ、もちろん力になろう。私は君を助け、守る義務があるからな。そうしなければ君の両親に申し訳ない」
「そう言ってくれると助かるー」




